DETECTIVE WESTERN
DETECTIVE WESTERN 5 ~銃声は7回~ 7
ウエスタン小説、第7話。
デジャヴ。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
7.
ロバートと彼の友人2人を寝返らせてすぐ、アデルはサルーンに戻って電話をかけた。
「……ってわけで今、ビアンキらに調べさせてます」
《ふむ、そうか。しかし信用できるのかね?》
「大丈夫です。奴ら、すっかりのぼせちまってますからね。
ただ、その……、やはり相応の報酬は用意してやらなきゃと、俺はそう思うんですが」
《ははは……》
局長の呆れたような笑いが、受話器の向こうから返って来る。
《君は本当にお人好しだな》
「悪い癖だと、自分でも理解してるつもりなんですがね」
《いや、いや。言うほど悪いものでもないさ。
もし世界が君みたいな人間ばかりだったならば、犯罪などこれっぽっちも起こらんだろうからな。それは良識ある者すべての願いだよ。
ただ、探偵としては若干危ういところではあるがね》
「気を付けます」
《そうだな、イタリアからの感謝状は難しいかも知れんが、報酬は何とかこちらで用意しておこう。使えそうな連中なら、君の言う通り雇ってもいいしな。
だが念のため、予備の策も練っておいた方がいいだろう。誘惑に弱い人間が、君から受けた以上の強い誘惑を持ちかけられ、またも裏切ってしまうなんて事態も、考えられん話では無い》
「ええ、承知しています。……では」
電話を終え、アデルが食事の席に着こうとしたところで、エミルが神妙な顔で声をかけた。
「アデル。あたし、デジャヴを感じてるんだけど」
「で、じゃ、……何だって?」
「デジャヴ(Déjà-Vu)、つまり『前にも同じことが起こった気がする』ってヤツよ」
「ん……?」
そう言われて、アデルも胸騒ぎを感じる。
「そう、か。確かに以前にも同じことがあったな」
「でしょ? あいつらがあたしたちを裏切る、裏切らない以前に、あいつらが組織から裏切られる危険は、ゼロじゃないはずよ」
「……そうだな」
ロバートたち3人はイタリア人街の奥、彼らの組織の本拠となっている屋敷に潜り込んでいた。
「どうだ、見つかったか?」
「いや……」「それっぽいのは、どこにも」
暗い部屋の中を、燭台を片手にうろつき回りながら、3人は武器の製造場所やリゴーニの居場所を突き止めようと探っている。
しかし10分、20分と時間が経てども、一向にそれらを示す書類も、メモ書きも見当たらない。
「くっそー……、見つからねえ」
「どうすんだよ、ロベルト? このままじゃアデルさんに怒られるぜ」
「分かってるよ!」
怒鳴り返し、ロバートは慌てて口を抑える。
「っと、いけね」
「バレたらどうすんだよ、まったく」
「悪かった、……しかしこれ以上はもう時間が無いぜ。ろうそくも無くなりそうだし」
「そうだな。まあ、今日見付からなくってもさ、また明日探せばいいだろうし、この辺で切り上げてもいいんじゃないか?」
「……そうするか」
あきらめ顔でロバートがうなずき、へたり込んだその時だった。
ロバートの正面にいた友人が、「がっ」とうめき声を上げた。
「ドメニコ?」
顔を挙げたロバートの額やほおに、びちゃびちゃと温かい液体がかかる。
「えっ、……え、……え、あ、ど、ドメニコ?」
だが、友人は答えず、口から噴水のように血を噴き出しながら、仰向けに倒れる。
「お、おい!? どうしたん、……げぼっ!?」
続いてもう一人の友人が、胸を抑えてうつ伏せに倒れる。
「ジョバンニ!? おい、しっかりしろ! ……ああ、そんな、マジかよっ……!」
一瞬のうちに友人二人を撃たれ、ロバートはガタガタと震えだした。
「ひっ……お……俺も……うっ……撃つのか……!?」
その問いに答える代わりに、かちり、と撃鉄を起こす音が返って来た。
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デジャヴ。
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7.
ロバートと彼の友人2人を寝返らせてすぐ、アデルはサルーンに戻って電話をかけた。
「……ってわけで今、ビアンキらに調べさせてます」
《ふむ、そうか。しかし信用できるのかね?》
「大丈夫です。奴ら、すっかりのぼせちまってますからね。
ただ、その……、やはり相応の報酬は用意してやらなきゃと、俺はそう思うんですが」
《ははは……》
局長の呆れたような笑いが、受話器の向こうから返って来る。
《君は本当にお人好しだな》
「悪い癖だと、自分でも理解してるつもりなんですがね」
《いや、いや。言うほど悪いものでもないさ。
もし世界が君みたいな人間ばかりだったならば、犯罪などこれっぽっちも起こらんだろうからな。それは良識ある者すべての願いだよ。
ただ、探偵としては若干危ういところではあるがね》
「気を付けます」
《そうだな、イタリアからの感謝状は難しいかも知れんが、報酬は何とかこちらで用意しておこう。使えそうな連中なら、君の言う通り雇ってもいいしな。
だが念のため、予備の策も練っておいた方がいいだろう。誘惑に弱い人間が、君から受けた以上の強い誘惑を持ちかけられ、またも裏切ってしまうなんて事態も、考えられん話では無い》
「ええ、承知しています。……では」
電話を終え、アデルが食事の席に着こうとしたところで、エミルが神妙な顔で声をかけた。
「アデル。あたし、デジャヴを感じてるんだけど」
「で、じゃ、……何だって?」
「デジャヴ(Déjà-Vu)、つまり『前にも同じことが起こった気がする』ってヤツよ」
「ん……?」
そう言われて、アデルも胸騒ぎを感じる。
「そう、か。確かに以前にも同じことがあったな」
「でしょ? あいつらがあたしたちを裏切る、裏切らない以前に、あいつらが組織から裏切られる危険は、ゼロじゃないはずよ」
「……そうだな」
ロバートたち3人はイタリア人街の奥、彼らの組織の本拠となっている屋敷に潜り込んでいた。
「どうだ、見つかったか?」
「いや……」「それっぽいのは、どこにも」
暗い部屋の中を、燭台を片手にうろつき回りながら、3人は武器の製造場所やリゴーニの居場所を突き止めようと探っている。
しかし10分、20分と時間が経てども、一向にそれらを示す書類も、メモ書きも見当たらない。
「くっそー……、見つからねえ」
「どうすんだよ、ロベルト? このままじゃアデルさんに怒られるぜ」
「分かってるよ!」
怒鳴り返し、ロバートは慌てて口を抑える。
「っと、いけね」
「バレたらどうすんだよ、まったく」
「悪かった、……しかしこれ以上はもう時間が無いぜ。ろうそくも無くなりそうだし」
「そうだな。まあ、今日見付からなくってもさ、また明日探せばいいだろうし、この辺で切り上げてもいいんじゃないか?」
「……そうするか」
あきらめ顔でロバートがうなずき、へたり込んだその時だった。
ロバートの正面にいた友人が、「がっ」とうめき声を上げた。
「ドメニコ?」
顔を挙げたロバートの額やほおに、びちゃびちゃと温かい液体がかかる。
「えっ、……え、……え、あ、ど、ドメニコ?」
だが、友人は答えず、口から噴水のように血を噴き出しながら、仰向けに倒れる。
「お、おい!? どうしたん、……げぼっ!?」
続いてもう一人の友人が、胸を抑えてうつ伏せに倒れる。
「ジョバンニ!? おい、しっかりしろ! ……ああ、そんな、マジかよっ……!」
一瞬のうちに友人二人を撃たれ、ロバートはガタガタと震えだした。
「ひっ……お……俺も……うっ……撃つのか……!?」
その問いに答える代わりに、かちり、と撃鉄を起こす音が返って来た。
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