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    DETECTIVE WESTERN

    DETECTIVE WESTERN 5 ~銃声は7回~ 9

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    ウエスタン小説、第9話。
    因縁の相手。

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    9.
    「お前も俺たちも、見付けようとしても見付からなかった、……か」
     明らかにイクトミを避ける様子を見せるエミルに対し、アデルはイクトミの話に耳を傾ける。
    「確かに妙な一致だな」
    「そうでしょう、そうでしょう。そこで名探偵のお二人にお知恵を拝借できないか、と。そう思いまして今回、お声をかけさせていただいた次第です」
    「けっ、お前なんぞに頼られても嬉しかないな」
     アデルは立ち上がり、上着を脱いで汚れをはたき落としつつ、話を続ける。
    「だけどまあ、耳寄りな情報であることは確かだな。
     イクトミ、お前が狙ってるモノってのは――無論、俺たちは泥棒に手を貸すつもりは微塵も無いが――一体何なんだ? またフランス絡みか?」
    「ええ。イタリアの大英雄、ガリバルディがローマ共和国時代に使っていたとされる剣を秘蔵している、とか。
     ご存じですか、今でこそ彼の故郷はフランス共和国領となっていますが、一度だけ現在におけるイタリア王国領内となったことが……」「いらん、そんな情報はいらん」
     アデルはイクトミのうんちくを遮り、話を戻す。
    「しかし剣ってなると、割とかさばるブツだよな。流石にうわさ話よろしく、トウモロコシの中に詰め込むなんてこともできないだろうし。
     お前の腕とあの化物じみた身体能力があって、それでも見付からないってのも変な話だ」
    「お褒めに預かり光栄です。
     しかしムッシュ・ネイサンの言うこともごもっとも。わたくしはこれまで3度、あの屋敷へ密かに押し入っているのですが、その3度のいずれも、目的の物はおろか、あなた方が探しているような銃火器と言った品も、一切見たことがございません。
     となれば結論は一つ。あそこは偽の本拠であり、本当に重要な場所は別にある。そこにこそ、我々の目的の品があるのではないか、と」
    「ごっちゃにするな。俺たちは剣なんかほしくない。
     だが確かに、その線は濃厚だな」
    「そこでわたくしからご依頼申し上げたいのは、彼らの真の本拠地、これが果たしてどこにあるものなのか調べて欲しい、と言うわけです」
    「ふむ……」
     アデルは腕を組んで考え込み――かけ、慌てて声を上げた。
    「ちょっと待て、何で俺たちがお前なんかの依頼を受けなきゃならねーんだよ? さっきも言ったが、俺たちは泥棒の片棒を担ぐ気なんかまったく無いんだぞ」
    「ま、ま、そう仰らずに。
     マドモアゼル・ミヌー、これからわたくしが言うことをお聞きになれば、是非引き受けて下さると思います」
    「何よ?」
     邪険な態度を執るエミルに構わず、イクトミはこう続ける。
    「トリスタン・アルジャンを存じていますね?」
     その名前を聞いた途端、エミルの顔に険が差した。
    「ええ。覚えがあるわね」
    「彼は今回、彼奴らの用心棒を名乗って行動しているようですよ」
    「……何ですって?」
     ここまでイクトミの顔を見ようともしなかったエミルが、顔を強張らせて振り向く。
    「死んだはずでしょ?」
    「わたくしもそう思っておりました。
     しかし実際に生きておりますし、何を隠そう、あなた方の先輩が殺害されたのも、彼の仕業です」
    「マジでか?」
     アデルの顔にも、緊張が走る。
    「さらに申し上げれば、先程そちらのムッシュ・ビアンキのご友人方を殺害したのも、恐らく彼でしょう」
    「ほ、本当かよ……!」
     呆然としていたロバートも、おたおたとした様子ながらも立ち上がる。
    「正直に申し上げれば、彼の腕とわたくしの腕では、彼に若干の分があります。このまま4度目の劫(おしこみ)を謀れば、今度こそ射殺されかねません。
     ですがマドモアゼル。あなたのお力添えがあれば……」「知らないわよッ!」
     辺りに響き渡るほどの声で、エミルが怒鳴り返した。
    「あたしには何もできないわ! そんな力なんて無い!」
    「エミル……?」
     突然の怒声にたじろぐアデルを尻目に、イクトミがこう返した。
    「失礼ながら、マドモアゼル。嘘はいけませんな。
     本性は隠しても自ずと明らかになるものです。ニシン樽からはいつまでもニシンの臭いが漂うが如く、隠せないものはどうやっても隠せないのです。
     そんな益体も無いことを続けていては、あなたの心は永遠に安らげない。それどころか、その行為はあなたの心を必要以上に縛り付け、ついには壊してしまうことでしょう。
     それに――こんなことをわたくしが言う義理は無いのでしょうが――あなたが開けた扉は、いつかは、あなたご自身が閉じなければならないのでは?」
    「……」
     エミルはふたたびイクトミに背を向け、しばらく黙り込んでいたが、やがてぼそぼそとした口ぶりながらも、こう返した。
    「癪だけど、あんたの言う通りかも知れないわ。
     そうね、あいつが生きてるって言うなら、今度こそとどめを刺さなきゃね」
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    NoTitle 

    了解です。「DW」が終わったら記事を掲載します。
    自分の作品を元に制作していただき、誠にありがたい限りです。
    事後についてはおきになさらずw

    NoTitle 

    ごめんなさい。地図を使う許可をもらっていなかったことに今ようやく気づいた……事後承諾を求める形になってすみません。

    申し訳ないです……。

    NoTitle 

    ちわーす。

    前にお話しした件について、こんな記事を書きました。

    http://crfragment.blog81.fc2.com/blog-entry-2836.html

    現段階では仮想戦どころではない仮想戦ですので、お暇があればわかりやすい央北全土の行政区地図と、「白猫夢」での史実における戦役の展開をお教えいただければ幸いです。再読したけれど物語が長すぎて混乱してしまったので(汗)

    それでは~。
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