「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 第1部
琥珀暁・彼訪伝 1
新連載。
"He" has come to "our world"。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
1.
「はじめに、大地有りき。
その方は、大地を訪れた。
次に、人有りき。
その方は、人のうちの一つを訪ねた。
三に、言葉有りき。
その方は神の言葉で、人の一つに尋ねられた。
その方の名は、あらゆるものの始まりである。
その方の名は、あらゆるものの原点である。
その方の名は、無から有を生じさせるものである。
その方の名は、ゼロである。
ゼロは初めて出会ったその人の手を握り、祝福した。
(『降臨記』 第1章 第1節 第1項から第6項まで抜粋)」
その土地は、古来より交易の要所であったと伝えられている。
北と西に港があり、一方で東と南には牧草が生い茂っている。自然、農産物と海産物の輸送はそこで交わることとなり、自然に物々交換、即ち商売の元となる活動が生まれた。
いつしか人は、その土地を交点の中心、「クロスセントラル」と呼ぶようになった。
その日もいつもと変わらない、活気に満ちた一日であった。
遠くから産品を持ってきた男たちが、それを掲げて大声を出し合っている。
「いい鮭を持ってきてるぞー! 誰かいらんかー!」
「羊肉と交換でどうだ!?」
「羊はいらん!」
「山羊ならあるが……」
「野牛だ! 野牛の肉を寄越せ! じゃなきゃ交換しない!」
「野牛なんてそんな……」
しかし取引の大半が、上滑りしている。鮭を持ってきた男の要求に適うものを、誰も持ってきていないからだ。
結局鮭を持ってきた狼獣人の男が折れ、要求を下げていく。
「分かった! じゃあ水牛でもいい!」
「ねーよ」
「……豚」
「ねーっつの」
「チッ、仕方無えな。じゃあさっきの羊で……」「悪い、もう交換した」「何ぃ?」
散々自分の要求を通そうとしていた狼獣人が憤り、羊を持ってきていた猫獣人の男に絡み出す。
「なんで手放してんだよ、おい」
「だって交換してくれないし」
「今なら交換するつってんじゃねーか」
「もう無いって」
「ふざけんな! もうちょっとくらい待つって考えがねーのか?」
「あ? 何でお前の都合で待ってなきゃいけないんだよ」
狼獣人も猫獣人も互いに憤り、場は一触即発の様相を呈し始める。
その隙に、何も持ってきていない男たちがそろそろと、鮭の詰まった樽に群がり始める。狼獣人の気が相手に向いているうちに、盗もうとしているのだ。
その雑然とした状況を眺めながら、一人の短耳がぼそ、とつぶやいた。
「……なんでこう、うまく行かないんだろうなぁ」
と、その男の肩を、とんとんと叩く者が現れた。
「ん?」
振り向くと、そこには白髪の、しかしまだ顔立ちが若く、優しい目をした、ひげだらけの短耳の男の姿があった。
「なんだ?」
男が尋ねたが、白髪男はきょとんとする。
「**?」
白髪は何か言ったようだが、それは男が聞いたことも無い言葉だった。
「なんだって?」
「**? ……**、……***」
白髪は困ったようにポリポリと頭をかいていたが、やがて何かを思い出したように、ポンと手を打ち、何かをつぶやきつつ、手を忙しなく組み合わせる。
「『*********』、……通じる?」
「ん? ああ、通じるが、今あんた、何て?」
「あ、ちょっと魔術を使ったんだ。やっぱあいつの術は使い勝手いいねぇ。応用性と即効性が段違いだ。
えーと、それでちょっと教えてほしいんだけど、……ここはどこ?」
「クロスセントラルだ。あんた、どこから来たんだ?」
男に尋ねられ、白髪は困った顔をした。
「えーと、どう言ったらいいかな。********なんて言っても分かんないよね。まあいいや、遠くからってことにしといて」
「ああ、うん……?」
戸惑う男に構わず、白髪はこう続けた。
「僕の名前はゼロって言うんだ。君は?」
「え、ああ……、ゲートだ」
「そっか。よろしく、ゲート」
白髪――ゼロは嬉しそうに笑って、ゲートの手を握った。
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1.
「はじめに、大地有りき。
その方は、大地を訪れた。
次に、人有りき。
その方は、人のうちの一つを訪ねた。
三に、言葉有りき。
その方は神の言葉で、人の一つに尋ねられた。
その方の名は、あらゆるものの始まりである。
その方の名は、あらゆるものの原点である。
その方の名は、無から有を生じさせるものである。
その方の名は、ゼロである。
ゼロは初めて出会ったその人の手を握り、祝福した。
(『降臨記』 第1章 第1節 第1項から第6項まで抜粋)」
その土地は、古来より交易の要所であったと伝えられている。
北と西に港があり、一方で東と南には牧草が生い茂っている。自然、農産物と海産物の輸送はそこで交わることとなり、自然に物々交換、即ち商売の元となる活動が生まれた。
いつしか人は、その土地を交点の中心、「クロスセントラル」と呼ぶようになった。
その日もいつもと変わらない、活気に満ちた一日であった。
遠くから産品を持ってきた男たちが、それを掲げて大声を出し合っている。
「いい鮭を持ってきてるぞー! 誰かいらんかー!」
「羊肉と交換でどうだ!?」
「羊はいらん!」
「山羊ならあるが……」
「野牛だ! 野牛の肉を寄越せ! じゃなきゃ交換しない!」
「野牛なんてそんな……」
しかし取引の大半が、上滑りしている。鮭を持ってきた男の要求に適うものを、誰も持ってきていないからだ。
結局鮭を持ってきた狼獣人の男が折れ、要求を下げていく。
「分かった! じゃあ水牛でもいい!」
「ねーよ」
「……豚」
「ねーっつの」
「チッ、仕方無えな。じゃあさっきの羊で……」「悪い、もう交換した」「何ぃ?」
散々自分の要求を通そうとしていた狼獣人が憤り、羊を持ってきていた猫獣人の男に絡み出す。
「なんで手放してんだよ、おい」
「だって交換してくれないし」
「今なら交換するつってんじゃねーか」
「もう無いって」
「ふざけんな! もうちょっとくらい待つって考えがねーのか?」
「あ? 何でお前の都合で待ってなきゃいけないんだよ」
狼獣人も猫獣人も互いに憤り、場は一触即発の様相を呈し始める。
その隙に、何も持ってきていない男たちがそろそろと、鮭の詰まった樽に群がり始める。狼獣人の気が相手に向いているうちに、盗もうとしているのだ。
その雑然とした状況を眺めながら、一人の短耳がぼそ、とつぶやいた。
「……なんでこう、うまく行かないんだろうなぁ」
と、その男の肩を、とんとんと叩く者が現れた。
「ん?」
振り向くと、そこには白髪の、しかしまだ顔立ちが若く、優しい目をした、ひげだらけの短耳の男の姿があった。
「なんだ?」
男が尋ねたが、白髪男はきょとんとする。
「**?」
白髪は何か言ったようだが、それは男が聞いたことも無い言葉だった。
「なんだって?」
「**? ……**、……***」
白髪は困ったようにポリポリと頭をかいていたが、やがて何かを思い出したように、ポンと手を打ち、何かをつぶやきつつ、手を忙しなく組み合わせる。
「『*********』、……通じる?」
「ん? ああ、通じるが、今あんた、何て?」
「あ、ちょっと魔術を使ったんだ。やっぱあいつの術は使い勝手いいねぇ。応用性と即効性が段違いだ。
えーと、それでちょっと教えてほしいんだけど、……ここはどこ?」
「クロスセントラルだ。あんた、どこから来たんだ?」
男に尋ねられ、白髪は困った顔をした。
「えーと、どう言ったらいいかな。********なんて言っても分かんないよね。まあいいや、遠くからってことにしといて」
「ああ、うん……?」
戸惑う男に構わず、白髪はこう続けた。
「僕の名前はゼロって言うんだ。君は?」
「え、ああ……、ゲートだ」
「そっか。よろしく、ゲート」
白髪――ゼロは嬉しそうに笑って、ゲートの手を握った。
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「双月千年世界」第4作、いよいよ連載開始です。
ちなみに諸事情により、第1部では文字表示に何らかの不具合が生じる場合があります。
なんだろうなー、プロトコルが一致してないのかなー(棒
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
色々ありましたが、僕はまだ元気です。
これからも頑張ります。
「双月千年世界」第4作、いよいよ連載開始です。
ちなみに諸事情により、第1部では文字表示に何らかの不具合が生じる場合があります。
なんだろうなー、プロトコルが一致してないのかなー(棒
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色々ありましたが、僕はまだ元気です。
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双月千年世界 3;白猫夢

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双月千年世界 2;火紅狐

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双月千年世界 1;蒼天剣

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