「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 第1部
琥珀暁・彼訪伝 4
神様たちの話、第4話。
神の御業。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
4.
元の井戸から100歩以上は歩いたところで、ゼロが立ち止まる。
「ここならさっきの井戸から十分離れてるし、汚染されてる心配は無い。ここでいいかな?」
誰へともなく尋ねたゼロに、周囲からチラホラと返事が返って来る。
「ん、まあ、別にいいんじゃない?」
「大して違わないし、さっきのとこと」
「俺、むしろこっちの方がいい。家と近いし」
「あ、それは思った。あっちの方、市場に近くて埃っぽい気がしてたし」
そして続いて、当然の質問も投げかけられる。
「でもどうやって掘るの?」
「道具も何にも無いぞ」
これに対し、ゼロはあっけらかんと答えた。
「あ、大丈夫、大丈夫」
そう返すなり、ゼロは地面に視線を落とす。
「この辺りかなー。あ、みんな離れてて。土とか石とか飛ぶから」
「お、おう」
周囲が10歩ほど離れたところで、ゼロがまた、ぶつぶつと唱えた。
「『********』!」
次の瞬間、地面が勢い良く盛り上がり、大量の土が噴き出す。
「うわあっ!?」
「ちょ、え、なにあれ!?」
あっと言う間に地面には大穴が空き、底の方には既にじわじわと、水が溜まり始めている。
「よし、これでいいかな。後は周りを固めれば……」「ゼロ」
と、周囲の人々と同様に、遠巻きに成り行きを見ていたゲートが、明らかに警戒した様子で尋ねる。
「お前、何者だ?」
「僕?」
しかし依然として、ゼロは平然とした様子のままである。
「なんだろね?」
「ふざけんな。今の今までずっと気にしちゃいなかったが、お前、おかし過ぎるだろ」
「そうかなぁ」
「そうだよ。なあ、みんな?」
ゲートの問いに、周りもぎこちなく応じる。
「う、うん」
「変だよね……」
「さっき人を投げ飛ばしたのも、今、地面を掘ったのも」
「一体何をどうしたんだ……?」
周囲からいぶかしげな視線をぶつけられても、ゼロはまだ、けろっとした顔をしていた。
「何って、魔術を使ったんだってば。
あ、そっか。魔術って言うのはね、人ができる以上のことをできるようになる技術なんだけどね。皆も知りたかったら教えるよ。どうする?」
「どう、って……」
あまりにも険や邪気、その他どんな悪感情を微塵も感じさせない、飄々とした態度のゼロに、次第に人々の警戒が薄れていく。
「うーん、どうって言われても」
「怪しいけど、なんかなー」
「便利そう」
「それってすぐ使える?」
問われたゼロは、これもあっけらかんと答えた。
「才能次第かなー。使える人と使えない人はいるし。でもまあ、教えるだけならいくらでも教えるよ。
あ、でも……」
「でも?」
「お腹空いたから、誰かご飯食べさせてほしいな、……って。ダメかな?」
「……」
全員が唖然とし、沈黙が流れる。
「……ぷっ」
その沈黙を、ゲートが破った。
「変な奴だな、お前。まあいい、俺が恵んでやるよ」
「ありがとう、ゲート」
「その代わり、俺にも教えろよ。まあ、俺には使えんかも知れんが」
「うん、教える、教える」
結局この間、ゼロは最後まで笑顔を崩すことは無かった。
「ゼロの前に、病に倒れた人と、毒に侵された井戸があった。
ゼロは病に倒れた人を助け、新たな水をもたらし、村を救った。
ゼロは村人たちに、『わたしの知識を授けよう』と言った。
村人たちは皆、教えを乞うた。
ゼロは人々に知恵と知識を授けた。
これが我々の、礎である。
ゼロは無と闇の中にあった我々に、標と光をもたらした。
ゼロこそが我々の、神である。
(『降臨記』 第1章 第2節 第1項から第4項まで抜粋)」
琥珀暁・彼訪伝 終
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神の御業。
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4.
元の井戸から100歩以上は歩いたところで、ゼロが立ち止まる。
「ここならさっきの井戸から十分離れてるし、汚染されてる心配は無い。ここでいいかな?」
誰へともなく尋ねたゼロに、周囲からチラホラと返事が返って来る。
「ん、まあ、別にいいんじゃない?」
「大して違わないし、さっきのとこと」
「俺、むしろこっちの方がいい。家と近いし」
「あ、それは思った。あっちの方、市場に近くて埃っぽい気がしてたし」
そして続いて、当然の質問も投げかけられる。
「でもどうやって掘るの?」
「道具も何にも無いぞ」
これに対し、ゼロはあっけらかんと答えた。
「あ、大丈夫、大丈夫」
そう返すなり、ゼロは地面に視線を落とす。
「この辺りかなー。あ、みんな離れてて。土とか石とか飛ぶから」
「お、おう」
周囲が10歩ほど離れたところで、ゼロがまた、ぶつぶつと唱えた。
「『********』!」
次の瞬間、地面が勢い良く盛り上がり、大量の土が噴き出す。
「うわあっ!?」
「ちょ、え、なにあれ!?」
あっと言う間に地面には大穴が空き、底の方には既にじわじわと、水が溜まり始めている。
「よし、これでいいかな。後は周りを固めれば……」「ゼロ」
と、周囲の人々と同様に、遠巻きに成り行きを見ていたゲートが、明らかに警戒した様子で尋ねる。
「お前、何者だ?」
「僕?」
しかし依然として、ゼロは平然とした様子のままである。
「なんだろね?」
「ふざけんな。今の今までずっと気にしちゃいなかったが、お前、おかし過ぎるだろ」
「そうかなぁ」
「そうだよ。なあ、みんな?」
ゲートの問いに、周りもぎこちなく応じる。
「う、うん」
「変だよね……」
「さっき人を投げ飛ばしたのも、今、地面を掘ったのも」
「一体何をどうしたんだ……?」
周囲からいぶかしげな視線をぶつけられても、ゼロはまだ、けろっとした顔をしていた。
「何って、魔術を使ったんだってば。
あ、そっか。魔術って言うのはね、人ができる以上のことをできるようになる技術なんだけどね。皆も知りたかったら教えるよ。どうする?」
「どう、って……」
あまりにも険や邪気、その他どんな悪感情を微塵も感じさせない、飄々とした態度のゼロに、次第に人々の警戒が薄れていく。
「うーん、どうって言われても」
「怪しいけど、なんかなー」
「便利そう」
「それってすぐ使える?」
問われたゼロは、これもあっけらかんと答えた。
「才能次第かなー。使える人と使えない人はいるし。でもまあ、教えるだけならいくらでも教えるよ。
あ、でも……」
「でも?」
「お腹空いたから、誰かご飯食べさせてほしいな、……って。ダメかな?」
「……」
全員が唖然とし、沈黙が流れる。
「……ぷっ」
その沈黙を、ゲートが破った。
「変な奴だな、お前。まあいい、俺が恵んでやるよ」
「ありがとう、ゲート」
「その代わり、俺にも教えろよ。まあ、俺には使えんかも知れんが」
「うん、教える、教える」
結局この間、ゼロは最後まで笑顔を崩すことは無かった。
「ゼロの前に、病に倒れた人と、毒に侵された井戸があった。
ゼロは病に倒れた人を助け、新たな水をもたらし、村を救った。
ゼロは村人たちに、『わたしの知識を授けよう』と言った。
村人たちは皆、教えを乞うた。
ゼロは人々に知恵と知識を授けた。
これが我々の、礎である。
ゼロは無と闇の中にあった我々に、標と光をもたらした。
ゼロこそが我々の、神である。
(『降臨記』 第1章 第2節 第1項から第4項まで抜粋)」
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