黄輪雑貨本店 新館


    「琥珀暁」
    琥珀暁 第1部

    琥珀暁・遭魔伝 1

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    神様たちの話、第5話。
    原初の情報処理。

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    1.
    「えーと」
     ゼロが悩み悩みと言った様子で、粗く削った木屑と草の束、そして灰を、湯がたぎった鍋の中に入れている。
    「お?」
     と、その様子を見ていたゲートが、くんくんと鼻をひくつかせたが――。
    「……うぇ」
     途端に、ゲートは顔をしかめた。
    「すげー青臭え。お前、それ何作ってんだ? なんかの薬か?」
    「ううん。いや、僕もできるかどうか半信半疑なんだけどね」
    「は?」
    「大昔に聞きかじっただけだし、本当にできるのかなーって」
    「ってことはお前、何か分からんものを作ってるってことか?」
    「そうなる」
     ゼロの返答に、ゲートは呆れた声を漏らした。
    「お前って、本当に変なヤツだよな」
    「うん、良く言われる。……これくらい茹でればいいかなぁ」
     ゼロは鍋をかまどから上げ、中身をざるに開ける。
     すっかりどろどろになった内容物をすくい取り、今度は網を張った木枠の中に詰めていく。
    「……これがどうなるんだ?」
    「んー」
     ゼロは木枠を見つめながら、ぽつりぽつりと説明する。
    「繊維ってあるよね、木とか草とかの、ほら、糸みたいになったところ」
    「ああ」
    「それを****性の、……あー、まあ、灰だね。それと一緒にお湯に入れてしばらく煮込んで、こうやって水を切るとね、**ができるらしいんだ」
    「**?」
     聞き返したゲートに、ゼロはもう一度、ゆっくりと説明した。
    「紙だよ、か・み」
    「かみ、……って何だ?」
    「後で分かるよ。じゃ、今度は**を作ろうかな」
    「なんだって?」
     ゲートは何度も聞き返すが、その度にゼロは、うっとうしがるようなことをせず、丁寧に答えてくれる。
    「筆だよ、ふ・で。
     人にモノを教えるには、その教えたことを覚えさせなきゃ意味が無いだろ?」
    「そりゃそうだ」
    「だから覚えやすくさせるために、筆と紙を作ってるんだ」
    「はあ……」
     ゼロは前掛けを脱ぎながら、ゲートにこう尋ねた。
    「この辺で毛の長い動物っている?」
    「ああ」
    「どんなの?」
    「羊とか山羊だな」
    「その毛ってすぐ手に入るかな」
    「俺の友達にフレンって羊飼いがいる。気前いいヤツだから、聞けばくれると思うぜ」
    「案内してもらっていいかな?」
    「ああ」

     ゲートはゼロを伴い、友人の羊飼いの元を訪ねた。
    「おーい、フレン、いるかー」
     が、羊が放牧されている野原を見渡しても、友人の姿が見当たらない。
    「変だなぁ。いつもこの辺りにいるのに」
    「そうなの?」
    「ああ。もう市場も閉まってる頃だし、そっちに行ってるってことも考え辛いんだが……?」
    「他にこの辺りで仕事してる人はいる?」
    「おう、大抵知り合いだ。そっちに聞いてみるか」
     二人は放牧地を回り、他の羊飼いに話を聞いてみた。
    「フレン? あー、なんか慌ててたな」
    「どうも、羊が逃げたっぽいぜ」
    「どこ行ったか分かるか?」
    「朝はここから西の方を探してたし、昼くらいにはぐったりして株に座ってたのを見た」
    「じゃあ多分、今は東を探してるんじゃないか?」
    「そっか、ありがとな」
     そこでゲートとゼロは、顔を見合わせる。
    「どうする?」
    「僕らも探してみようか」
    「だな」
     と、まだ近くにいた他の羊飼いが、さっと顔を青ざめさせた。
    「おいおい、ゲートよぉ? 知ってるだろ」
    「何を?」
    「最近、変なのがこの辺りに出るってうわさをだよ」
    「変なのって?」
    「見た目は一見、でけー狼だって話だ。だが『変なの』ってのがな……」
     そこで羊飼いたちは言葉を切り、異口同音にこう続けた。
    「8本脚で、頭は2つ。しかも人を喰うって話なんだ」
    「ま、マジかよ」
     これを聞いて、ゲートも不安を覚える。
    「最近じゃ、東に出るってうわさだ。だからフレンのヤツ、『俺の羊が食われるかも』つって探し回ってたんだ」
    「でも西を探しても見つからないから、仕方無しに東へ、……ってことだろうな」
    「下手すると、あいつも……」
    「やべーな。……な、なあ、ゼロ?」
    「うん?」
     ゲートは後ろめたい気持ちで、ゼロにこう提案した。
    「このまま、待つって言うのは、まずいか? 他のヤツに言えば、毛は手に入るし」
    「ええっ!?」
     対するゼロは、目を丸くする。
    「危ないって話なのに、放っておくの?」
    「仕方ねーだろーが。俺もお前も、そんなバケモノに対抗できるような腕っ節は無いし、武器も無いだろ?」
    「でも魔術はあるよ」
    「……い、行く気なのか、ゼロ?」
     一転、今度はゲートが驚かされた。
    「行くよ。危ないって言うなら、なおさらだ」
     ゼロはいつも通りののほほんとした笑顔を浮かべて、そう断言した。
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