黄輪雑貨本店 新館


    「琥珀暁」
    琥珀暁 第1部

    琥珀暁・遭魔伝 2

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    神様たちの話、第6話。
    遭遇。

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    2.
     一応、護身用にひのきの棒を持ち、二人は放牧地の東にある草原へと向かっていた。
    「見渡す限りの大草原、ってこう言うところのことだねぇ」
     呑気そうに歩を進めるゼロに対し、ゲートは恐る恐る、警戒しつつ歩いていた。
    「おい、ゼロ。いつ襲ってくるか分からんぜ?」
    「さっきみんなが言ってた、狼みたいな化物のこと?」
    「そうだよ。お前、本当にどうにかできるのかよ?」
    「できると思うよ」
     あっけらかんとそう返され、ゲートは返事に詰まる。
    「できる、って、なんで、……うーん」
     あまりにも気負い無く答えられてしまい、強く反対できなくなる。
    「魔術ってのは、そんなこともできるのかよ?」
     どうにかそう尋ねてみたが、これに対しても、ゼロはしれっと返す。
    「色々できるよ。人の怪我や病気を治すことも、地面の奥深くから水を掘り出すことも、****より高い火力で森を焼き払うこともできる。
     本当に長けた人が魔術を使えば、不可能なことなんかこの世には無いさ」
    「……お前の言うことだから信じるけどさー」
     口ではそう言いつつも、ゲートはまだ、心の中では半信半疑の状態だった。

     やがて二人は草原を抜け、森へと入っていた。
    「おい、おい、ゼロって!」
    「どうしたの?」
     きょとんとした顔で振り返ったゼロに、ゲートは冷や汗を額に浮かべながら、引き返すことを提案した。
    「これ以上はまずいって、マジで。もう日も暮れかけてるし、森の奥に入っちまったら、真っ暗だぜ?」
    「あ、そっか。そうだね」
     そう返し、ゼロはぶつぶつと何かを唱えた。
    「『******』」
     途端に、二人の間にぽん、と光球が生じる。
    「これで明るくなったろ?」
    「……お、おう」
     十数歩程度歩いたところで、またゲートが声をかける。
    「な、なあ、ゼロ」
    「どうしたの?」
    「は、腹減らないか?」
    「ちょっとは。でもフレンが危ないかも知れないし、帰ってご飯を食べるような暇は無いんじゃないかな」
    「……だよな」
     また十数歩ほど歩き――。
    「な、なあ」
    「今度は何?」
    「しょ、正直に言う。怖い」
    「大丈夫だよ。僕がいる」
    「……勘弁してくれよぉ」
     しおれた声でそう返したが、ゼロはこう返す。
    「きっとフレンだって、同じ気持ちだよ? しかも一人だ。
     算術的に、フレンの方が2倍は怖い思いをしてるはずだよ。それを放っておくの?」
    「……そ、そう言われりゃ、……我慢するしかねーじゃねーか」
    「うん、よろしく」
     ゲートはゼロを説得するのを諦め、渋々付いて行った。

     と――。
    「あれ?」
     突然、ゼロが立ち止まる。
    「ど、どうした?」
    「何か聞こえなかった?」
    「な、何って?」
    「犬っぽいうなり声。今にも襲いかかってやるぞって言いたげな感じの」
    「よ、よせよ。こんな時に、悪い冗談だぜ」
    「いや、本気。……あ、やっぱり聞こえる。後ろ斜め右くらい」
    「え」
     言われて、ゲートがそっちを振り向くと――。
    「グルルルルル……」
     確かに、犬のような何かが、そこにいた。
     ような、と言うのは、「それ」はゲートの知る形をした犬では無かったからだ。
    「あ、頭が2つ、……脚が、8本、……しかも尻尾が2本ある!
     で、で、ででで、……出たあああぁぁ!」
     その異形の怪物を目にするなり、ゲートはその場にへたり込んでしまった。
    「あ、ちょっと、ゲート! ゲートってば!」
     これには、流石のゼロも慌てたらしい。彼は両手をゲートの腋に回し、勢い良く引っ張る。
    「立って! 重くて上がらないって!」
    「あ、あわ、あわわわ……」
     一方、ゲートは目を白黒させ、泡を吹いている。
    「……もう。見た目に似合わずって感じだなぁ、ゲートは」
     ゼロは短くぶつぶつと唱え、魔術を使う。
    「『********』! そこらで休んでて!」
     途端にゲートの体が宙を舞い、近くの木の枝に引っ掛けられた。
    「おわっ!? ちょ、や、うわっ、近いって!」
     引っ掛けられた場所は、ちょうど怪物の前だった。
    「あ、……ごめん、方向間違えた。まあ、でも、すぐ終わるから」
     ゼロはそう弁解し、またぶつぶつと唱えだした。
    「……吹っ飛んで! 『*******』!」
     次の瞬間、ゲートの目の前が真っ赤に染まり――そのまま、彼は弾き飛ばされた。
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