「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 第1部
琥珀暁・遭魔伝 2
神様たちの話、第6話。
遭遇。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
2.
一応、護身用にひのきの棒を持ち、二人は放牧地の東にある草原へと向かっていた。
「見渡す限りの大草原、ってこう言うところのことだねぇ」
呑気そうに歩を進めるゼロに対し、ゲートは恐る恐る、警戒しつつ歩いていた。
「おい、ゼロ。いつ襲ってくるか分からんぜ?」
「さっきみんなが言ってた、狼みたいな化物のこと?」
「そうだよ。お前、本当にどうにかできるのかよ?」
「できると思うよ」
あっけらかんとそう返され、ゲートは返事に詰まる。
「できる、って、なんで、……うーん」
あまりにも気負い無く答えられてしまい、強く反対できなくなる。
「魔術ってのは、そんなこともできるのかよ?」
どうにかそう尋ねてみたが、これに対しても、ゼロはしれっと返す。
「色々できるよ。人の怪我や病気を治すことも、地面の奥深くから水を掘り出すことも、****より高い火力で森を焼き払うこともできる。
本当に長けた人が魔術を使えば、不可能なことなんかこの世には無いさ」
「……お前の言うことだから信じるけどさー」
口ではそう言いつつも、ゲートはまだ、心の中では半信半疑の状態だった。
やがて二人は草原を抜け、森へと入っていた。
「おい、おい、ゼロって!」
「どうしたの?」
きょとんとした顔で振り返ったゼロに、ゲートは冷や汗を額に浮かべながら、引き返すことを提案した。
「これ以上はまずいって、マジで。もう日も暮れかけてるし、森の奥に入っちまったら、真っ暗だぜ?」
「あ、そっか。そうだね」
そう返し、ゼロはぶつぶつと何かを唱えた。
「『******』」
途端に、二人の間にぽん、と光球が生じる。
「これで明るくなったろ?」
「……お、おう」
十数歩程度歩いたところで、またゲートが声をかける。
「な、なあ、ゼロ」
「どうしたの?」
「は、腹減らないか?」
「ちょっとは。でもフレンが危ないかも知れないし、帰ってご飯を食べるような暇は無いんじゃないかな」
「……だよな」
また十数歩ほど歩き――。
「な、なあ」
「今度は何?」
「しょ、正直に言う。怖い」
「大丈夫だよ。僕がいる」
「……勘弁してくれよぉ」
しおれた声でそう返したが、ゼロはこう返す。
「きっとフレンだって、同じ気持ちだよ? しかも一人だ。
算術的に、フレンの方が2倍は怖い思いをしてるはずだよ。それを放っておくの?」
「……そ、そう言われりゃ、……我慢するしかねーじゃねーか」
「うん、よろしく」
ゲートはゼロを説得するのを諦め、渋々付いて行った。
と――。
「あれ?」
突然、ゼロが立ち止まる。
「ど、どうした?」
「何か聞こえなかった?」
「な、何って?」
「犬っぽいうなり声。今にも襲いかかってやるぞって言いたげな感じの」
「よ、よせよ。こんな時に、悪い冗談だぜ」
「いや、本気。……あ、やっぱり聞こえる。後ろ斜め右くらい」
「え」
言われて、ゲートがそっちを振り向くと――。
「グルルルルル……」
確かに、犬のような何かが、そこにいた。
ような、と言うのは、「それ」はゲートの知る形をした犬では無かったからだ。
「あ、頭が2つ、……脚が、8本、……しかも尻尾が2本ある!
で、で、ででで、……出たあああぁぁ!」
その異形の怪物を目にするなり、ゲートはその場にへたり込んでしまった。
「あ、ちょっと、ゲート! ゲートってば!」
これには、流石のゼロも慌てたらしい。彼は両手をゲートの腋に回し、勢い良く引っ張る。
「立って! 重くて上がらないって!」
「あ、あわ、あわわわ……」
一方、ゲートは目を白黒させ、泡を吹いている。
「……もう。見た目に似合わずって感じだなぁ、ゲートは」
ゼロは短くぶつぶつと唱え、魔術を使う。
「『********』! そこらで休んでて!」
途端にゲートの体が宙を舞い、近くの木の枝に引っ掛けられた。
「おわっ!? ちょ、や、うわっ、近いって!」
引っ掛けられた場所は、ちょうど怪物の前だった。
「あ、……ごめん、方向間違えた。まあ、でも、すぐ終わるから」
ゼロはそう弁解し、またぶつぶつと唱えだした。
「……吹っ飛んで! 『*******』!」
次の瞬間、ゲートの目の前が真っ赤に染まり――そのまま、彼は弾き飛ばされた。
@au_ringさんをフォロー
遭遇。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
2.
一応、護身用にひのきの棒を持ち、二人は放牧地の東にある草原へと向かっていた。
「見渡す限りの大草原、ってこう言うところのことだねぇ」
呑気そうに歩を進めるゼロに対し、ゲートは恐る恐る、警戒しつつ歩いていた。
「おい、ゼロ。いつ襲ってくるか分からんぜ?」
「さっきみんなが言ってた、狼みたいな化物のこと?」
「そうだよ。お前、本当にどうにかできるのかよ?」
「できると思うよ」
あっけらかんとそう返され、ゲートは返事に詰まる。
「できる、って、なんで、……うーん」
あまりにも気負い無く答えられてしまい、強く反対できなくなる。
「魔術ってのは、そんなこともできるのかよ?」
どうにかそう尋ねてみたが、これに対しても、ゼロはしれっと返す。
「色々できるよ。人の怪我や病気を治すことも、地面の奥深くから水を掘り出すことも、****より高い火力で森を焼き払うこともできる。
本当に長けた人が魔術を使えば、不可能なことなんかこの世には無いさ」
「……お前の言うことだから信じるけどさー」
口ではそう言いつつも、ゲートはまだ、心の中では半信半疑の状態だった。
やがて二人は草原を抜け、森へと入っていた。
「おい、おい、ゼロって!」
「どうしたの?」
きょとんとした顔で振り返ったゼロに、ゲートは冷や汗を額に浮かべながら、引き返すことを提案した。
「これ以上はまずいって、マジで。もう日も暮れかけてるし、森の奥に入っちまったら、真っ暗だぜ?」
「あ、そっか。そうだね」
そう返し、ゼロはぶつぶつと何かを唱えた。
「『******』」
途端に、二人の間にぽん、と光球が生じる。
「これで明るくなったろ?」
「……お、おう」
十数歩程度歩いたところで、またゲートが声をかける。
「な、なあ、ゼロ」
「どうしたの?」
「は、腹減らないか?」
「ちょっとは。でもフレンが危ないかも知れないし、帰ってご飯を食べるような暇は無いんじゃないかな」
「……だよな」
また十数歩ほど歩き――。
「な、なあ」
「今度は何?」
「しょ、正直に言う。怖い」
「大丈夫だよ。僕がいる」
「……勘弁してくれよぉ」
しおれた声でそう返したが、ゼロはこう返す。
「きっとフレンだって、同じ気持ちだよ? しかも一人だ。
算術的に、フレンの方が2倍は怖い思いをしてるはずだよ。それを放っておくの?」
「……そ、そう言われりゃ、……我慢するしかねーじゃねーか」
「うん、よろしく」
ゲートはゼロを説得するのを諦め、渋々付いて行った。
と――。
「あれ?」
突然、ゼロが立ち止まる。
「ど、どうした?」
「何か聞こえなかった?」
「な、何って?」
「犬っぽいうなり声。今にも襲いかかってやるぞって言いたげな感じの」
「よ、よせよ。こんな時に、悪い冗談だぜ」
「いや、本気。……あ、やっぱり聞こえる。後ろ斜め右くらい」
「え」
言われて、ゲートがそっちを振り向くと――。
「グルルルルル……」
確かに、犬のような何かが、そこにいた。
ような、と言うのは、「それ」はゲートの知る形をした犬では無かったからだ。
「あ、頭が2つ、……脚が、8本、……しかも尻尾が2本ある!
で、で、ででで、……出たあああぁぁ!」
その異形の怪物を目にするなり、ゲートはその場にへたり込んでしまった。
「あ、ちょっと、ゲート! ゲートってば!」
これには、流石のゼロも慌てたらしい。彼は両手をゲートの腋に回し、勢い良く引っ張る。
「立って! 重くて上がらないって!」
「あ、あわ、あわわわ……」
一方、ゲートは目を白黒させ、泡を吹いている。
「……もう。見た目に似合わずって感じだなぁ、ゲートは」
ゼロは短くぶつぶつと唱え、魔術を使う。
「『********』! そこらで休んでて!」
途端にゲートの体が宙を舞い、近くの木の枝に引っ掛けられた。
「おわっ!? ちょ、や、うわっ、近いって!」
引っ掛けられた場所は、ちょうど怪物の前だった。
「あ、……ごめん、方向間違えた。まあ、でも、すぐ終わるから」
ゼロはそう弁解し、またぶつぶつと唱えだした。
「……吹っ飛んで! 『*******』!」
次の瞬間、ゲートの目の前が真っ赤に染まり――そのまま、彼は弾き飛ばされた。
- 関連記事



@au_ringさんをフォロー
総もくじ
双月千年世界 3;白猫夢

総もくじ
双月千年世界 2;火紅狐

総もくじ
双月千年世界 1;蒼天剣

総もくじ
双月千年世界 3;白猫夢

総もくじ
双月千年世界 2;火紅狐

総もくじ
双月千年世界 1;蒼天剣

もくじ
双月千年世界 目次 / あらすじ

もくじ
他サイトさんとの交流

もくじ
短編・掌編

もくじ
未分類

もくじ
雑記

もくじ
クルマのドット絵

もくじ
携帯待受

もくじ
カウンタ、ウェブ素材

もくじ
今日の旅岡さん

- ジャンル:[小説・文学]
- テーマ:[自作小説(ファンタジー)]
~ Trackback ~
トラックバックURL
⇒
⇒この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
~ Comment ~