「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 第1部
琥珀暁・遭魔伝 3
神様たちの話、第7話。
魔物騒動、一段落。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
3.
「……はっ」
気が付くと、ゲートは木の根本に寝かされていた。
「ごめん、思ってたより爆風の範囲が大きかった。でも怪我は治したから」
傍らでそう説明するゼロに、ゲートはまだ呆然としたまま、ぽつぽつと尋ねる。
「さっきのは?」
「やっつけた」
「生きてるのか?」
「死んでる」
「俺、死んだのか?」
「君は生きてる。僕も生きてるし、フレンもさっき見つけたけど、無事だった。木の上でやり過ごそうとしてたらしい。あと、羊はあっちにいた」
「……あ、見つけたのか?」
「うん」
ようやく意識がはっきりし、ゲートは上半身を起こした。
「よお、ゲート。助けに来てくれたんだって?」
と、友人の羊飼い、猫獣人のフレンと目が合う。
「あ、……ああ」
「俺はこの通り無事だよ。このゼロって人があの化物を倒してくれた、……って、今説明されたばかりだったっけ。すまんすまん」
「……ゼロ。マジでお前、何者だよ」
ふたたび仰向けになったゲートに対し、ゼロは無言で首を傾げる。
「だから、何者なんだって」
「何者って言われてもなぁ」
ゼロは肩をすくめ、一言だけ返した。
「この世界じゃ、ただの居候だよ」
既に夕暮れが迫っていたが、ゼロの光球を放つ魔術のおかげで、三人とフレンの羊は無事に帰路に着くことができた。
「うわさにゃ聞いてたけど……、アンタがゼロなんだって?」
「うん」
「不思議なことができるって聞いてたけど、本当なんだな」
「僕には不思議じゃないけどね」
「是非教えてもらいたいね。この光を出すのだって、俺が使えるようになりゃ、夜通し歩くことだってできるしさ」
「でも一人起きてたって、みんな寝てるしつまんないよ? 羊だって寝てるだろうし」
「そりゃそうだ、ははは……」
すぐに打ち解けたフレンに対し、ゲートはまだ、いぶかしんでいる。
(こいつ……、このまま放っておいていいのか?
ワケ分からん術を使うってのが、俺にとっちゃ最大の恐怖だ。その気になりゃ、クロスセントラルのど真ん中でさっきの爆発を起こすことだってできるだろうし。
周りと相談して、こいつをこっそり縛るなり何なりした方がいいんじゃ……)
と、そこまで考えたところで、フレンと楽しそうに話すゼロの横顔が視界に入る。
その途端、ゲートの中の猜疑心は、呆気無く溶けてしまった。
(……あほらしい。こいつがそんなに、危険なヤツかよ? こんな無邪気に笑ってるようなヤツが)
一方、ゼロはフレンから根掘り葉掘り、怪物のことを聞いていた。
「じゃ、あの化物って、ここ最近この辺に現れたって感じなのかな」
「らしいな。俺もうわさを聞いたのは、5日前か6日前か、それくらいだった」
話の輪に、ゲートも入る。
「バケモノが出たって話が?」
「ああ」
「確かイーストフィールドとかにも羊を飼ってる人たちがいるって聞いたけど、市場とかでは聞かなかった?」
そう問われ、フレンは尻尾を撫でながら、おぼろげに答える。
「あー……、いや、大分前に聞いたかも」
「それって、いつくらい?」
「うーん……、はっきりとは覚えて無いが、20日前だったか、30日前だったか」
「半月以上前?」
「はんつきって?」
「あ、いや、まあいいや。じゃあもしかしたらイーストフィールドにいたのが、こっちに来たのかもね」
「かもな。……なあ、ゼロ? それが一体、何だって言うんだ?」
尋ねられたゼロは、珍しく真面目な顔をする。
「さっきの化物とイーストフィールドのが同じ個体だったなら、やっつけたんだし、話はこれで終わりだけどさ、もし別の個体だったなら、被害はもっと増えるかも知れない。
2体以上いるってことは、殖える可能性があるってことになるもの」
「あ……!」
ゼロの説明を受け、フレンも、そして傍で聞いていたゲートも顔を強張らせた。
「もうちょっと詳しく調べた方がいいみたいだね。下手すると、クロスセントラルの中にまで入られるかも知れないし。
そしたらもっと、被害が出る。人を食べるってうわさもどうやら、本当らしいしね」
「そうだな」
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魔物騒動、一段落。
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3.
「……はっ」
気が付くと、ゲートは木の根本に寝かされていた。
「ごめん、思ってたより爆風の範囲が大きかった。でも怪我は治したから」
傍らでそう説明するゼロに、ゲートはまだ呆然としたまま、ぽつぽつと尋ねる。
「さっきのは?」
「やっつけた」
「生きてるのか?」
「死んでる」
「俺、死んだのか?」
「君は生きてる。僕も生きてるし、フレンもさっき見つけたけど、無事だった。木の上でやり過ごそうとしてたらしい。あと、羊はあっちにいた」
「……あ、見つけたのか?」
「うん」
ようやく意識がはっきりし、ゲートは上半身を起こした。
「よお、ゲート。助けに来てくれたんだって?」
と、友人の羊飼い、猫獣人のフレンと目が合う。
「あ、……ああ」
「俺はこの通り無事だよ。このゼロって人があの化物を倒してくれた、……って、今説明されたばかりだったっけ。すまんすまん」
「……ゼロ。マジでお前、何者だよ」
ふたたび仰向けになったゲートに対し、ゼロは無言で首を傾げる。
「だから、何者なんだって」
「何者って言われてもなぁ」
ゼロは肩をすくめ、一言だけ返した。
「この世界じゃ、ただの居候だよ」
既に夕暮れが迫っていたが、ゼロの光球を放つ魔術のおかげで、三人とフレンの羊は無事に帰路に着くことができた。
「うわさにゃ聞いてたけど……、アンタがゼロなんだって?」
「うん」
「不思議なことができるって聞いてたけど、本当なんだな」
「僕には不思議じゃないけどね」
「是非教えてもらいたいね。この光を出すのだって、俺が使えるようになりゃ、夜通し歩くことだってできるしさ」
「でも一人起きてたって、みんな寝てるしつまんないよ? 羊だって寝てるだろうし」
「そりゃそうだ、ははは……」
すぐに打ち解けたフレンに対し、ゲートはまだ、いぶかしんでいる。
(こいつ……、このまま放っておいていいのか?
ワケ分からん術を使うってのが、俺にとっちゃ最大の恐怖だ。その気になりゃ、クロスセントラルのど真ん中でさっきの爆発を起こすことだってできるだろうし。
周りと相談して、こいつをこっそり縛るなり何なりした方がいいんじゃ……)
と、そこまで考えたところで、フレンと楽しそうに話すゼロの横顔が視界に入る。
その途端、ゲートの中の猜疑心は、呆気無く溶けてしまった。
(……あほらしい。こいつがそんなに、危険なヤツかよ? こんな無邪気に笑ってるようなヤツが)
一方、ゼロはフレンから根掘り葉掘り、怪物のことを聞いていた。
「じゃ、あの化物って、ここ最近この辺に現れたって感じなのかな」
「らしいな。俺もうわさを聞いたのは、5日前か6日前か、それくらいだった」
話の輪に、ゲートも入る。
「バケモノが出たって話が?」
「ああ」
「確かイーストフィールドとかにも羊を飼ってる人たちがいるって聞いたけど、市場とかでは聞かなかった?」
そう問われ、フレンは尻尾を撫でながら、おぼろげに答える。
「あー……、いや、大分前に聞いたかも」
「それって、いつくらい?」
「うーん……、はっきりとは覚えて無いが、20日前だったか、30日前だったか」
「半月以上前?」
「はんつきって?」
「あ、いや、まあいいや。じゃあもしかしたらイーストフィールドにいたのが、こっちに来たのかもね」
「かもな。……なあ、ゼロ? それが一体、何だって言うんだ?」
尋ねられたゼロは、珍しく真面目な顔をする。
「さっきの化物とイーストフィールドのが同じ個体だったなら、やっつけたんだし、話はこれで終わりだけどさ、もし別の個体だったなら、被害はもっと増えるかも知れない。
2体以上いるってことは、殖える可能性があるってことになるもの」
「あ……!」
ゼロの説明を受け、フレンも、そして傍で聞いていたゲートも顔を強張らせた。
「もうちょっと詳しく調べた方がいいみたいだね。下手すると、クロスセントラルの中にまで入られるかも知れないし。
そしたらもっと、被害が出る。人を食べるってうわさもどうやら、本当らしいしね」
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