「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 第1部
琥珀暁・魔授伝 1
神様たちの話、第9話。
授業は順調。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
1.
意外にも、ゼロの「授業」は好評だった。
元々、ゼロはうわさの渦中となっていたし、その彼と話ができると言うのならと、興味津々の者たちが集まったからだ。
「今日も集まってきてくれてありがとう、みんな。じゃあ今日は、何の話をしようか?」
「じゃーさ、ゼロの好きなものって何?」
なので「授業」と言っても、ゼロは受けに来た者にいきなり書き取りをやらせるようなことはせず、世間話から入っていく。
「こないだフレンって人から羊肉をご馳走になったんだけどね、実は僕、それまで羊肉ってあんまり好きじゃなかったんだ。独特の臭いがあるなーって思ってて。
でも全然、臭みが無かったんだよね、フレンが持ってきたお肉。もう一発で好物になっちゃったよ。また食べたいなぁ、あれ」
「あはは……」
「じゃ、今日は動物の名前を書いて行こうかな。まず僕が挙げたこれ、『ひつじ』。書いてみて書いてみて」
「こう……、かな?」
「そうそう、大体そんな感じ。じゃ、僕からも質問。シノンは何が好きなの? 食べ物に限らなくてもいいんだけど」
ゼロに尋ねられ、長い耳に銀髪の女の子、シノンが答える。
「あたしはー……、猫かなぁ。あ、ヒトの方じゃなくて、ケモノの方の猫ね」
「ああ、可愛いよね、猫ちゃん。僕が前に住んでたところでも一杯いたんだけど、こっちでも会えて嬉しかったなぁ。……で、『ねこ』は、こう。あ、書いてくれてるね」
「合ってる?」
「ばっちり。みんなも書けた? ……うん、書けてる書けてる。
でもキュー、君の字はなんか独創的過ぎるね。ちょっと判り辛い」
「そっか?」
「君らしい、ご機嫌な字なんだけど、もうちょっと丁寧に書いた方がいいかな」
「んー、……こうか?」
「あ、いいね、いい感じ。さっきより読める。じゃあキュー、今度は君の好きな動物を書こうかな。何が好き?」
ゼロからの講義を聞くと言うより、彼と世間話をしているような感覚で、授業はのんびり進んでいく。
「ふー……、話し疲れちゃった。今日はこのくらいにしよっか。明日もよろしくね、みんな」
「はーい」
基本的に、ゼロが休みたくなったところで授業は終わりとなる。
「……時計作んないとなぁ。疲れるまでやったらそりゃ、疲れちゃうし」
「とけい?」
ゼロの独り言を聞きつけ、まだ教室に残っていたシノンが尋ねる。
「時間を計る道具だよ。ま、近いうちに用意しとくから」
「うんっ。楽しみにしてるね」
「……あ、そうだ」
と、ゼロはポン、と手を打つ。
「良かったら作るところ、見に来る?
ゲートは仕事あるって言ってたし、一人で行こうと思ってたんだけど、一人じゃ寂しいし。君、明日ヒマかな?」
「うんうん、ヒマヒマ。全然ヒマだよっ」
「なら良かった。じゃ、明日の朝にね」
「はーい」
そして、翌日。
「ゼロ、ゼロっ! もう起きてるーっ?」
早朝、まだ太陽が地平線から姿を表すか表さないかと言う頃に、シノンがゲートの家の戸を叩いてきた。
「ふああ……、なんだよ、こんな朝っぱらから」
眠たそうに目をこすりながら玄関に立ったゲートに、シノンは顔をふくらませる。
「違うっ。ゲートじゃなくてさ、ゼロ。ね、もう起きてる、ゼロ?」
「まだ寝てるっつーの。ふあっ……、お前そんなに、ゼロと出かけんのが楽しみだったのか?」
「うんっ!」
「……まあ、起こすわ。ちょっと待ってろ」
「はーい」
数分後、やはりゼロも眠たそうに顔をこすりつつ、玄関に現れた。
「おひゃよぉ……、ふあ~あ」
「おはよっ、ゼロ!」
満面の笑顔で挨拶するシノンに対し、ゼロとゲートは揃って欠伸する。
「……本当に、早めに時計作んないとダメだなぁ。
僕、どっちかって言うと遅く起きるタイプだし。9時まで寝かして、とか分かってもらえるようにしないとなぁ、……ふあ~」
「遅起きしたいってのは、俺も同感。……くあ~、眠みいなぁ」
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授業は順調。
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意外にも、ゼロの「授業」は好評だった。
元々、ゼロはうわさの渦中となっていたし、その彼と話ができると言うのならと、興味津々の者たちが集まったからだ。
「今日も集まってきてくれてありがとう、みんな。じゃあ今日は、何の話をしようか?」
「じゃーさ、ゼロの好きなものって何?」
なので「授業」と言っても、ゼロは受けに来た者にいきなり書き取りをやらせるようなことはせず、世間話から入っていく。
「こないだフレンって人から羊肉をご馳走になったんだけどね、実は僕、それまで羊肉ってあんまり好きじゃなかったんだ。独特の臭いがあるなーって思ってて。
でも全然、臭みが無かったんだよね、フレンが持ってきたお肉。もう一発で好物になっちゃったよ。また食べたいなぁ、あれ」
「あはは……」
「じゃ、今日は動物の名前を書いて行こうかな。まず僕が挙げたこれ、『ひつじ』。書いてみて書いてみて」
「こう……、かな?」
「そうそう、大体そんな感じ。じゃ、僕からも質問。シノンは何が好きなの? 食べ物に限らなくてもいいんだけど」
ゼロに尋ねられ、長い耳に銀髪の女の子、シノンが答える。
「あたしはー……、猫かなぁ。あ、ヒトの方じゃなくて、ケモノの方の猫ね」
「ああ、可愛いよね、猫ちゃん。僕が前に住んでたところでも一杯いたんだけど、こっちでも会えて嬉しかったなぁ。……で、『ねこ』は、こう。あ、書いてくれてるね」
「合ってる?」
「ばっちり。みんなも書けた? ……うん、書けてる書けてる。
でもキュー、君の字はなんか独創的過ぎるね。ちょっと判り辛い」
「そっか?」
「君らしい、ご機嫌な字なんだけど、もうちょっと丁寧に書いた方がいいかな」
「んー、……こうか?」
「あ、いいね、いい感じ。さっきより読める。じゃあキュー、今度は君の好きな動物を書こうかな。何が好き?」
ゼロからの講義を聞くと言うより、彼と世間話をしているような感覚で、授業はのんびり進んでいく。
「ふー……、話し疲れちゃった。今日はこのくらいにしよっか。明日もよろしくね、みんな」
「はーい」
基本的に、ゼロが休みたくなったところで授業は終わりとなる。
「……時計作んないとなぁ。疲れるまでやったらそりゃ、疲れちゃうし」
「とけい?」
ゼロの独り言を聞きつけ、まだ教室に残っていたシノンが尋ねる。
「時間を計る道具だよ。ま、近いうちに用意しとくから」
「うんっ。楽しみにしてるね」
「……あ、そうだ」
と、ゼロはポン、と手を打つ。
「良かったら作るところ、見に来る?
ゲートは仕事あるって言ってたし、一人で行こうと思ってたんだけど、一人じゃ寂しいし。君、明日ヒマかな?」
「うんうん、ヒマヒマ。全然ヒマだよっ」
「なら良かった。じゃ、明日の朝にね」
「はーい」
そして、翌日。
「ゼロ、ゼロっ! もう起きてるーっ?」
早朝、まだ太陽が地平線から姿を表すか表さないかと言う頃に、シノンがゲートの家の戸を叩いてきた。
「ふああ……、なんだよ、こんな朝っぱらから」
眠たそうに目をこすりながら玄関に立ったゲートに、シノンは顔をふくらませる。
「違うっ。ゲートじゃなくてさ、ゼロ。ね、もう起きてる、ゼロ?」
「まだ寝てるっつーの。ふあっ……、お前そんなに、ゼロと出かけんのが楽しみだったのか?」
「うんっ!」
「……まあ、起こすわ。ちょっと待ってろ」
「はーい」
数分後、やはりゼロも眠たそうに顔をこすりつつ、玄関に現れた。
「おひゃよぉ……、ふあ~あ」
「おはよっ、ゼロ!」
満面の笑顔で挨拶するシノンに対し、ゼロとゲートは揃って欠伸する。
「……本当に、早めに時計作んないとダメだなぁ。
僕、どっちかって言うと遅く起きるタイプだし。9時まで寝かして、とか分かってもらえるようにしないとなぁ、……ふあ~」
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