「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 第1部
琥珀暁・魔授伝 5
神様たちの話、第13話。
時間の制定者。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
5.
「別にいいぜ。俺は全然構わない」
ゲートの家に戻り、ゼロがシノンの家に移ることを相談したところ、ゲートは快諾した。
「いいの?」
「正直、騒がしいのは勘弁だったんだ。
あ、いや、お前が騒々しいって言うわけじゃない。だけど俺の家でワイワイやられるのは、ちょっとな」
「それは本当、ごめん」
ゼロがぺこっと頭を下げたところで、ゲートは苦笑しながらこう続けた。
「ま、これからも俺ん家に来てくれよ。流石に授業やられるのはきついけど」
「ありがとう、ゲート」
「にしても急だな? なんかあったのか、あいつと」
「……色々ね」
そう答えたゼロに、ゲートはニヤニヤした笑みを浮かべた。
「ほーほー、そーか。ま、俺から見てもあの子は可愛いし、いい子だ。大事にしてやれよ」
「うっ、うん」
ゼロの住まいがシノンの家に移されて以降、彼の授業もそこで行われることになった。
それと並行し、魔術の素質があると見た者には、シノンにやったように「集中講義」を行い、魔術の基礎を身に付けさせた。
さらに丘の上に建てた石柱から伸びる影と、月の動きを基本として、彼は時間と日付を定め、皆にその「ルール」と見方を広めた。
「で、あの影の先が丁度、広場の真ん中に差すくらいを『正午』と呼ぶことにする」
「分かった、『タイムズ』」
「たい、……え? なに、タイムズって?」
きょとんとした顔でそう尋ねたゼロに、時間の説明を受けていた村人の一人が答える。
「あんたは『神様』だって、あんたの奥さんが言ってた。『人よりすごい人』だって。俺たちはみんな、そう思ってる」
「お、奥さんって、まだシノンは、そんなんじゃ」
顔を赤くし、しどろもどろになるゼロに構わず、村人はこう続ける。
「だけど一方で、『神様』とは呼ばれたくないとも聞いてる。
でも俺たちはあんたに色々教えてもらったし、いっぱい助けてくれてる。『神様』は間違い無く、あんたなんだ。俺たちは是非ともあんたに、敬意を表したいんだ。
だからせめて、その『時間』って言う決まりを定めるあんたを、『時間(タイムズ)』って呼びたいんだ。駄目か?」
この願いに、ゼロは依然として顔を赤くしながら、かくかくとうなずいた。
「ああ、うん、まあ、その、……呼びたいなら、……いいよ、……どうぞ」
「ありがとう、ゼロ・タイムズ」
こうしてゼロは「時間の制定者=『タイムズ』」とも呼ばれるようになり、より一層の支持を集めるようになった。
そんな生活が、一月、二月と続き――やがてゼロの元に、2つの情報が飛び込むようになった。
「おい、タイムズ。もう魔術を覚えた奴は20人を超えてる。『もっと強い術を知りたい』って奴も出てきてるんだが、どうする?」
「ねえゼロ、またバケモノのうわさを聞いたの。南の村から逃げてきた人が教えてくれた」
一つは、彼の魔術指導が着実に実を結び、より高次の指導を求める声が上がっている話。そしてもう一つは、怪物を目撃した、あるいは襲撃された話である。
そしてその両方に対応するため、ゼロはある決断を下した。
「分かった。何とかする。
でも、どっちも準備する内容は一緒だけど、時間と手間がかかる。だから、人を一杯集めておいてほしいんだ。できるかな?」
「ああ、請け負うぜ」
「分かった。何すればいいの?」
尋ねる村人たちに、ゼロはこう命じた。
「まず第一に、強い魔術を使えるようにするために、道具を作らなきゃならない。二つ目は、その原料集め。
この近くに水晶とか、金属が掘れるところはある?」
「それは……」
と、南の村の件を報告した村人が苦い顔をする。それを見て、ゼロは察したらしい。
「南、か。丁度、バケモノが出たって言う」
「う、うん。そこが鉱床に一番近い」
「そうか……」
ゼロは一瞬表情を曇らせ、そしてすぐ、こう返事した。
「分かった。僕が採りに行こう」
琥珀暁・魔授伝 終
@au_ringさんをフォロー
時間の制定者。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
5.
「別にいいぜ。俺は全然構わない」
ゲートの家に戻り、ゼロがシノンの家に移ることを相談したところ、ゲートは快諾した。
「いいの?」
「正直、騒がしいのは勘弁だったんだ。
あ、いや、お前が騒々しいって言うわけじゃない。だけど俺の家でワイワイやられるのは、ちょっとな」
「それは本当、ごめん」
ゼロがぺこっと頭を下げたところで、ゲートは苦笑しながらこう続けた。
「ま、これからも俺ん家に来てくれよ。流石に授業やられるのはきついけど」
「ありがとう、ゲート」
「にしても急だな? なんかあったのか、あいつと」
「……色々ね」
そう答えたゼロに、ゲートはニヤニヤした笑みを浮かべた。
「ほーほー、そーか。ま、俺から見てもあの子は可愛いし、いい子だ。大事にしてやれよ」
「うっ、うん」
ゼロの住まいがシノンの家に移されて以降、彼の授業もそこで行われることになった。
それと並行し、魔術の素質があると見た者には、シノンにやったように「集中講義」を行い、魔術の基礎を身に付けさせた。
さらに丘の上に建てた石柱から伸びる影と、月の動きを基本として、彼は時間と日付を定め、皆にその「ルール」と見方を広めた。
「で、あの影の先が丁度、広場の真ん中に差すくらいを『正午』と呼ぶことにする」
「分かった、『タイムズ』」
「たい、……え? なに、タイムズって?」
きょとんとした顔でそう尋ねたゼロに、時間の説明を受けていた村人の一人が答える。
「あんたは『神様』だって、あんたの奥さんが言ってた。『人よりすごい人』だって。俺たちはみんな、そう思ってる」
「お、奥さんって、まだシノンは、そんなんじゃ」
顔を赤くし、しどろもどろになるゼロに構わず、村人はこう続ける。
「だけど一方で、『神様』とは呼ばれたくないとも聞いてる。
でも俺たちはあんたに色々教えてもらったし、いっぱい助けてくれてる。『神様』は間違い無く、あんたなんだ。俺たちは是非ともあんたに、敬意を表したいんだ。
だからせめて、その『時間』って言う決まりを定めるあんたを、『時間(タイムズ)』って呼びたいんだ。駄目か?」
この願いに、ゼロは依然として顔を赤くしながら、かくかくとうなずいた。
「ああ、うん、まあ、その、……呼びたいなら、……いいよ、……どうぞ」
「ありがとう、ゼロ・タイムズ」
こうしてゼロは「時間の制定者=『タイムズ』」とも呼ばれるようになり、より一層の支持を集めるようになった。
そんな生活が、一月、二月と続き――やがてゼロの元に、2つの情報が飛び込むようになった。
「おい、タイムズ。もう魔術を覚えた奴は20人を超えてる。『もっと強い術を知りたい』って奴も出てきてるんだが、どうする?」
「ねえゼロ、またバケモノのうわさを聞いたの。南の村から逃げてきた人が教えてくれた」
一つは、彼の魔術指導が着実に実を結び、より高次の指導を求める声が上がっている話。そしてもう一つは、怪物を目撃した、あるいは襲撃された話である。
そしてその両方に対応するため、ゼロはある決断を下した。
「分かった。何とかする。
でも、どっちも準備する内容は一緒だけど、時間と手間がかかる。だから、人を一杯集めておいてほしいんだ。できるかな?」
「ああ、請け負うぜ」
「分かった。何すればいいの?」
尋ねる村人たちに、ゼロはこう命じた。
「まず第一に、強い魔術を使えるようにするために、道具を作らなきゃならない。二つ目は、その原料集め。
この近くに水晶とか、金属が掘れるところはある?」
「それは……」
と、南の村の件を報告した村人が苦い顔をする。それを見て、ゼロは察したらしい。
「南、か。丁度、バケモノが出たって言う」
「う、うん。そこが鉱床に一番近い」
「そうか……」
ゼロは一瞬表情を曇らせ、そしてすぐ、こう返事した。
「分かった。僕が採りに行こう」
琥珀暁・魔授伝 終
- 関連記事



@au_ringさんをフォロー
総もくじ
双月千年世界 3;白猫夢

総もくじ
双月千年世界 2;火紅狐

総もくじ
双月千年世界 1;蒼天剣

総もくじ
双月千年世界 3;白猫夢

総もくじ
双月千年世界 2;火紅狐

総もくじ
双月千年世界 1;蒼天剣

もくじ
双月千年世界 目次 / あらすじ

もくじ
他サイトさんとの交流

もくじ
短編・掌編

もくじ
未分類

もくじ
雑記

もくじ
クルマのドット絵

もくじ
携帯待受

もくじ
カウンタ、ウェブ素材

もくじ
今日の旅岡さん

- ジャンル:[小説・文学]
- テーマ:[自作小説(ファンタジー)]
~ Trackback ~
トラックバックURL
⇒
⇒この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
~ Comment ~