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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 1;蒼天剣」
    蒼天剣 第4部

    蒼天剣・奸虎録 2

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    晴奈の話、第201話。
    悪魔殺しの剣。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    2.
    《いいものを見せてあげよう》
    「え?」
     問い返したが、声は応えない。次の瞬間、目の前にある光景が広がる。

    ――1、2の3で、飛ぶからねっ!――
    ――マテ、ナニヲスルツモリダ!――
    ――1、2のさ――
    ――ニガサンゾ!――

    「い、今のは!?」
    《キミが眠ってから、10時間後に起こるコトさ。目の前にいる敵を倒したからって油断しちゃダメだよ、セイナ》
     声の主はあの白猫だった。
    「何がなんだか分からない。私は一体誰と戦い、何が起きたのだ?」
     目にしたのは、フードの男と倒れたフー、頭から血を流す自分、胸を赤く染めた小鈴、呆然と座り込むフォルナ、そして鈴を付けたエルフの姿だった。
    「日上は、倒れていた。私がやったのか?」
    《勿論さ。ハッキリ言おう、ヒノカミなんて敵じゃない。超人だの御子だの言っても、所詮この時点でのヒノカミは経験浅い、ただの小僧さ。キミの腕があればあっさり倒せる。
     本当に手強いのはあのフード男、アランだ。アイツは普段、ヒノカミの影のような位置にいるけれど、実際はヒノカミ以上の実力を持ってる。
     アイツの狙いはヒノカミを世界の王様に仕立て上げ、傀儡、操り人形にして世界を支配することにある。そのために色々、汚いコトをしてる――ネール家に伝わる武具を奪うためにランニャと引き合わせたり、剣をエルスたちから盗むよう指示したり――色々画策し、指示していたんだ。
     気を付けて、セイナ。アイツの姿がヒノカミの側に無かったら、十分に注意するんだ》
     それだけ言って、白猫は姿を消した。



    「あ、おい!」
     椅子で眠っていた晴奈は飛び起きた。
    「むにゃー」
     晴奈の声に、小鈴が寝言で応える。晴奈は頭を振り、小さくつぶやいた。
    「……白猫。あなたは一体、私に何をさせたいのだ?」

     日も傾き、ようやく町の喧騒は落ち着きを見せる。
     煮えたぎるようだった空気もやっと冷え始め、騒ぎの中心は鍛冶場から酒場へと移り始めた。
    「さてと。それじゃまずは、ご飯食べよっか」
    「そうですわね。ずっと眠っておりましたし、流石にお腹が鳴ってしまいますわ」
     酒場に来た晴奈たちは席に座り、品書きを眺めながら雑談する。
    「ここにもパスタがあるのですね」
    「そりゃ、央中じゃ米みたいなもんだし。今度は、すすっちゃダメよ」
     イタズラっぽく笑う小鈴に、晴奈も笑い返す。
    「はは、承知しております。……では、私はこの『塩漬けイワシのパスタ』に」
    「では、わたくしは『ジャガイモ入りのオムレツ』とパンを」
    「んじゃ、あたしは『ジャガイモとレンズ豆の塩煮込み』、それからパン、と」
     小鈴は店の者を呼び、三人の注文を伝える。料理が運ばれてくるまでの間、晴奈はフーの居場所について小鈴に尋ねてみる。
    「いるとすれば、どこにいるのでしょうね?」
    「うーん。朱海からもらった情報によれば、日上はこの国の大公様とデキてるのよね。単純に考えれば、ネール公族が住んでる宮殿にいるんじゃないか、って思うんだけど」
    「ふむ。では、そこを調べるのが最も手っ取り早いと言うわけですね。しかし……」
     やってきた料理を受け取りながら、小鈴は首を振る。
    「ま、それは難しいわ。一般開放されてないもん。厳重に管理、警備されているから、入るのは難しいわね。
     さて、と。ひとまず議論は置いといて、ご飯食べましょ」



     宮殿のテラスで白い半月を眺めながら、フーとランニャ卿は歓談していた。
    「やっぱり、タイカって恐ろしいのね」
    「ああ、マジで悪魔って感じの奴だった。アイツの姿は一度見たら、目に焼きついて離れないよ。……ま、その目も半分、無いけどな」
     フーは笑いながら、大火に潰された左目の傷をコリコリとかいた。
    「でも、お前にもらった『ガーディアン』と、この『バニッシャー』があればきっと、奴を倒せる。期待しててくれよ、ランニャ」
     フーは腰に差した剣を抜き、その刀身を月の光に当てる。
    「キレイね……。本当に英雄の剣、って感じ」
    「だろ? 俺も一目見た時、一発で魅入られちまった。思い出すぜ……、その時のことを」
    「コウカイで手に入れた、って言うお話?」
     ランニャ卿の問いに、フーは肩をすくめ、小さく首を振る。
    「いや。……俺の元上官と一緒に、黒炎教団の総本山に潜入したことがあったんだけど、その時に初めて、こいつを見つけたんだ。
     その昔、黒白戦争でタイカを突き刺し、燃え盛る炎の中に叩き落したと言う、この剣。結局奴はそこから這い上がり、復活したと言うけれど、それでも致命傷を与えたのは確かなんだそうだ。
     悪魔を貫き、地獄の炎の中に堕としたと言うこの剣――俺はその伝説を、この世に再現させて見せる」
     熱く語るフーを見て、ランニャはほほを染めた。
    「ねえ、フー」
    「ん?」
    「もしタイカを討ち取って、あなたが世界の覇者、王になったら……」
     ランニャはフーの袖をぎゅっとつかみ、その手を握りしめた。
    「私を、妃にしてくださいませね」
    「……へへ、まあ、うん。考えとくわ」
     フーも顔を、虎耳の先まで真っ赤にしてうなずき、立ち上がった。
    「フー?」
    「……ちょっとそこら辺、ブラブラしてくる。あんまりお前の顔見つめてっと何か、心臓が爆発しちまいそうだ」
    「あら、……もう」

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    2009.05.07 修正
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    ~ Comment ~

    NoTitle 

    人間、見えるものには注意・関心を払いますが、見えないものにはどうしても鈍感になってしまいますからね。
    フーを目立たせて、陰で己の計画を推し進めるアラン。
    理に適った戦略ですね。

    連載お疲れ様でした!

    NoTitle 

    見立て…というのは何事も必要ですよね。
    CIAのスパイで尾行は当然ありますけど、囮として二人回すらしいですね。まったく関係ない一般人に金を握らせて、尾行させるらしいです。
    尾行されている側は当然素人が尾行しているのでそれに気づく。それを撒くことを考える、あるいは尾行は二人かと安心する。

    本職のCIAの人がその後ろで気づかれないように尾行しているらしいですね。CIAは基本的に見立てを立ててから尾行するのが鉄則らしいですね。
    ・・・ということを見てて思いましたね。
    どうも、LandMです。ようやく連載終了いたしました。これまでのご愛読ありがとうございました!!
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