「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 第1部
琥珀暁・南旅伝 1
神様たちの話、第14話。
南へ。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
1.
「僕が南の鉱床に行って、原料を採ってくる。
でも一人じゃそんなに多くは運べない。となると作れる武器の数も減ることになる。と言ってむやみに人員を増やしても、バケモノたちに気付かれる危険性が増すだけだ。
だから希望する人だけ、一緒に来てほしい」
ゼロは滅多に見せない真剣な顔で、集まる村人たちに頼み込んだ。
しかし、誰もが目をそらし、応じようとしない。
「……分かった」
ゼロは表情を堅くし、そう答えた。
と――。
「ま、……待てよ」
ゲートの手が挙がる。
「ゲート。もしかして、来てくれるの?」
「お、おう。人手がいるんだろ? じゃあ行くさ。お前の役に立てるって言うなら、なおさらだ」
「俺も行くよ」
続いて、羊飼いのフレンも挙手する。
「もし羊が食われたら敵わんし。ただ、羊毛刈るハサミより重いの持ったこと無いから、役に立てるか分からんが」
「すっごく助かる。他にはいない?」
「あ、あたしも!」
シノンも手を挙げる。
「ゼロに教えてもらった人たちの中だったら、あたしが一番、魔術をうまく使えるもん!」
「うん、君にはお願いしようと思ってた。嬉しいよ、シノン」
3人集まったところで、他の村人たちも続き始めた。
「俺も行っていいか?」
「わ、わたしも!」
「あー、と。やる気になってくれてすごく嬉しい。嬉しいんだけど」
が、そこでゼロが両腕で☓を作る。
「あんまり多過ぎてもダメなんだってば。人数が多いとバケモノに気付かれちゃう危険が大きくなる。
僕はあくまでも、バケモノをこの村から追い払いたいんであって、無理にバケモノを見付けて殲滅(せんめつ)する気は無いんだ。今はまだ、そこまでできそうにないし」
「う……、そうだよな」
「タイムズ、理想は何人くらいなんだ?」
尋ねられ、ゼロは即答する。
「僕も含めて、5人が限度。ゲートとフレンとシノンは連れてくつもり。
あと一人、腕っ節に目一杯自信があるって人がいてくれたら嬉しい」
「そんなら俺の出番だな」
と、手を挙げていた村人たちの中から、黒い毛並みをした、筋骨隆々の狼獣人の男性が一歩、前に出る。
「このメラノ様は腕自慢で通ってる。その力、あんたに貸してやるぜ」
「大助かりだ。よろしく、メラノ」
こうして南の鉱床へ向かうメンバーが決まり、他の村人たちはそれを支援することになった。
その準備を進めるため、村中で作業が進められた。
「タイムズさーん、馬は2頭でいいー?」
「ありがとー、十分だよー」
南までの道を行く馬車を用意する村人たちに手を振りつつ、ゼロは付いてきたゲートとシノンに計画を説明する。
「元々南の村にいたリズさんたちから聞いた話だと、鉱床は村からさらに南、大きな山の麓にあるって話だ」
「その山なら知ってる。『壁の山』だな」
そう答えたゲートに、シノンが続く。
「誰もその向こうを見たことが無いって言う、あれ?」
「そう、それだ。あれが世界の端っこだなんて言う奴もいるが、真相は未だ謎。
他には死後の世界と俺たちの世界とを隔ててる境目だとか、あの向こうはずっと壁が続いてるだけだとか、色々言われてる」
「何があるにせよ」
ゼロはそう返し、にこっと笑う。
「いつかあの向こう、見てみたいね」
「ん?」
「もしも僕たちがバケモノを全部倒しちゃって、どこまでも自由に行けるようになったら、きっとその謎も解き明かせるはずさ。
海だってきっとそうだ。これも聞いた話だけど、海にもバケモノがいるらしいね」
「うん。あたしも人から聞いただけだけど、でっかいタコとか、ながーいヘビとか」
「それもきっと、僕たちは倒せる。倒して、その向こうに行くんだ。
楽しみだろ?」
そうゼロに問われ、二人は顔を見合わせる。
「……そんなこと、考えもしたこと無かったな」
「うんうん。でも、……行ってみたいね。山の向こうとか、海の向こうとか」
二人の顔にわくわくとした色が浮かんでいるのを見て、ゼロもにっこりと笑った。
「すべては、近隣のバケモノ退治がうまく行ってからさ。
さ、次はお弁当作りしてるところに行こう。美味しく出来てるか、味見もしたいし」
「あはは……」
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南へ。
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「僕が南の鉱床に行って、原料を採ってくる。
でも一人じゃそんなに多くは運べない。となると作れる武器の数も減ることになる。と言ってむやみに人員を増やしても、バケモノたちに気付かれる危険性が増すだけだ。
だから希望する人だけ、一緒に来てほしい」
ゼロは滅多に見せない真剣な顔で、集まる村人たちに頼み込んだ。
しかし、誰もが目をそらし、応じようとしない。
「……分かった」
ゼロは表情を堅くし、そう答えた。
と――。
「ま、……待てよ」
ゲートの手が挙がる。
「ゲート。もしかして、来てくれるの?」
「お、おう。人手がいるんだろ? じゃあ行くさ。お前の役に立てるって言うなら、なおさらだ」
「俺も行くよ」
続いて、羊飼いのフレンも挙手する。
「もし羊が食われたら敵わんし。ただ、羊毛刈るハサミより重いの持ったこと無いから、役に立てるか分からんが」
「すっごく助かる。他にはいない?」
「あ、あたしも!」
シノンも手を挙げる。
「ゼロに教えてもらった人たちの中だったら、あたしが一番、魔術をうまく使えるもん!」
「うん、君にはお願いしようと思ってた。嬉しいよ、シノン」
3人集まったところで、他の村人たちも続き始めた。
「俺も行っていいか?」
「わ、わたしも!」
「あー、と。やる気になってくれてすごく嬉しい。嬉しいんだけど」
が、そこでゼロが両腕で☓を作る。
「あんまり多過ぎてもダメなんだってば。人数が多いとバケモノに気付かれちゃう危険が大きくなる。
僕はあくまでも、バケモノをこの村から追い払いたいんであって、無理にバケモノを見付けて殲滅(せんめつ)する気は無いんだ。今はまだ、そこまでできそうにないし」
「う……、そうだよな」
「タイムズ、理想は何人くらいなんだ?」
尋ねられ、ゼロは即答する。
「僕も含めて、5人が限度。ゲートとフレンとシノンは連れてくつもり。
あと一人、腕っ節に目一杯自信があるって人がいてくれたら嬉しい」
「そんなら俺の出番だな」
と、手を挙げていた村人たちの中から、黒い毛並みをした、筋骨隆々の狼獣人の男性が一歩、前に出る。
「このメラノ様は腕自慢で通ってる。その力、あんたに貸してやるぜ」
「大助かりだ。よろしく、メラノ」
こうして南の鉱床へ向かうメンバーが決まり、他の村人たちはそれを支援することになった。
その準備を進めるため、村中で作業が進められた。
「タイムズさーん、馬は2頭でいいー?」
「ありがとー、十分だよー」
南までの道を行く馬車を用意する村人たちに手を振りつつ、ゼロは付いてきたゲートとシノンに計画を説明する。
「元々南の村にいたリズさんたちから聞いた話だと、鉱床は村からさらに南、大きな山の麓にあるって話だ」
「その山なら知ってる。『壁の山』だな」
そう答えたゲートに、シノンが続く。
「誰もその向こうを見たことが無いって言う、あれ?」
「そう、それだ。あれが世界の端っこだなんて言う奴もいるが、真相は未だ謎。
他には死後の世界と俺たちの世界とを隔ててる境目だとか、あの向こうはずっと壁が続いてるだけだとか、色々言われてる」
「何があるにせよ」
ゼロはそう返し、にこっと笑う。
「いつかあの向こう、見てみたいね」
「ん?」
「もしも僕たちがバケモノを全部倒しちゃって、どこまでも自由に行けるようになったら、きっとその謎も解き明かせるはずさ。
海だってきっとそうだ。これも聞いた話だけど、海にもバケモノがいるらしいね」
「うん。あたしも人から聞いただけだけど、でっかいタコとか、ながーいヘビとか」
「それもきっと、僕たちは倒せる。倒して、その向こうに行くんだ。
楽しみだろ?」
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「あはは……」
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2017.12.11 修正
2017.12.11 修正



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