黄輪雑貨本店 新館


    「琥珀暁」
    琥珀暁 第1部

    琥珀暁・南旅伝 1

     ←2016年8月携帯待受 →琥珀暁・南旅伝 2
    神様たちの話、第14話。
    南へ。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    1.
    「僕が南の鉱床に行って、原料を採ってくる。
     でも一人じゃそんなに多くは運べない。となると作れる武器の数も減ることになる。と言ってむやみに人員を増やしても、バケモノたちに気付かれる危険性が増すだけだ。
     だから希望する人だけ、一緒に来てほしい」
     ゼロは滅多に見せない真剣な顔で、集まる村人たちに頼み込んだ。
     しかし、誰もが目をそらし、応じようとしない。
    「……分かった」
     ゼロは表情を堅くし、そう答えた。
     と――。
    「ま、……待てよ」
     ゲートの手が挙がる。
    「ゲート。もしかして、来てくれるの?」
    「お、おう。人手がいるんだろ? じゃあ行くさ。お前の役に立てるって言うなら、なおさらだ」
    「俺も行くよ」
     続いて、羊飼いのフレンも挙手する。
    「また羊が食われたら敵わんし。ただ、羊毛刈るハサミより重いの持ったこと無いから、役に立てるか分からんが」
    「すっごく助かる。他にはいない?」
    「あ、あたしも!」
     シノンも手を挙げる。
    「ゼロに教えてもらった人たちの中だったら、あたしが一番、魔術をうまく使えるもん!」
    「うん、君にはお願いしようと思ってた。嬉しいよ、シノン」
     3人集まったところで、他の村人たちも続き始めた。
    「俺も行っていいか?」
    「わ、わたしも!」
    「あー、と。やる気になってくれてすごく嬉しい。嬉しいんだけど」
     が、そこでゼロが両腕で☓を作る。
    「あんまり多過ぎてもダメなんだってば。人数が多いとバケモノに気付かれちゃう危険が大きくなる。
     僕はあくまでも、バケモノをこの村から追い払いたいんであって、無理にバケモノを見付けて殲滅(せんめつ)する気は無いんだ。今はまだ、そこまでできそうにないし」
    「う……、そうだよな」
    「タイムズ、理想は何人くらいなんだ?」
     尋ねられ、ゼロは即答する。
    「僕も含めて、5人が限度。ゲートとフレンとシノンは連れてくつもり。
     あと一人、腕っ節に目一杯自信があるって人がいてくれたら嬉しい」
    「そんなら俺の出番だな」
     と、手を挙げていた村人たちの中から、黒い毛並みをした、筋骨隆々の狼獣人の男性が一歩、前に出る。
    「このメラノ様は腕自慢で通ってる。その力、あんたに貸してやるぜ」
    「大助かりだ。よろしく、メラノ」
     こうして南の鉱床へ向かうメンバーが決まり、他の村人たちはそれを支援することになった。

     その準備を進めるため、村中で作業が進められた。
    「タイムズさーん、馬は2頭でいいー?」
    「ありがとー、十分だよー」
     南までの道を行く馬車を用意する村人たちに手を振りつつ、ゼロは付いてきたゲートとシノンに計画を説明する。
    「元々南の村にいたリズさんたちから聞いた話だと、鉱床は村からさらに南、大きな山の麓にあるって話だ」
    「その山なら知ってる。『壁の山』だな」
     そう答えたゲートに、シノンが続く。
    「誰もその向こうを見たことが無いって言う、あれ?」
    「そう、それだ。あれが世界の端っこだなんて言う奴もいるが、真相は未だ謎。
     他には死後の世界と俺たちの世界とを隔ててる境目だとか、あの向こうはずっと壁が続いてるだけだとか、色々言われてる」
    「何があるにせよ」
     ゼロはそう返し、にこっと笑う。
    「いつかあの向こう、見てみたいね」
    「ん?」
    「もしも僕たちがバケモノを全部倒しちゃって、どこまでも自由に行けるようになったら、きっとその謎も解き明かせるはずさ。
     海だってきっとそうだ。これも聞いた話だけど、海にもバケモノがいるらしいね」
    「うん。あたしも人から聞いただけだけど、でっかいタコとか、ながーいヘビとか」
    「それもきっと、僕たちは倒せる。倒して、その向こうに行くんだ。
     楽しみだろ?」
     そうゼロに問われ、二人は顔を見合わせる。
    「……そんなこと、考えもしたこと無かったな」
    「うんうん。でも、……行ってみたいね。山の向こうとか、海の向こうとか」
     二人の顔にわくわくとした色が浮かんでいるのを見て、ゼロもにっこりと笑った。
    「すべては、近隣のバケモノ退治がうまく行ってからさ。
     さ、次はお弁当作りしてるところに行こう。美味しく出来てるか、味見もしたいし」
    「あはは……」
    関連記事




    blogram投票ボタン ブログランキング・にほんブログ村へ





    総もくじ 3kaku_s_L.png 琥珀暁
    総もくじ 3kaku_s_L.png 白猫夢
    総もくじ 3kaku_s_L.png 火紅狐
    総もくじ 3kaku_s_L.png 蒼天剣
    総もくじ 3kaku_s_L.png 双月千年世界 短編・掌編・設定など
    総もくじ  3kaku_s_L.png 琥珀暁
    総もくじ  3kaku_s_L.png 白猫夢
    総もくじ  3kaku_s_L.png 火紅狐
    総もくじ  3kaku_s_L.png 蒼天剣
    総もくじ  3kaku_s_L.png 双月千年世界 短編・掌編・設定など
    もくじ  3kaku_s_L.png DETECTIVE WESTERN
    もくじ  3kaku_s_L.png 短編・掌編
    もくじ  3kaku_s_L.png 未分類
    もくじ  3kaku_s_L.png 雑記
    もくじ  3kaku_s_L.png 携帯待受
    • 【2016年8月携帯待受】へ
    • 【琥珀暁・南旅伝 2】へ

    ~ Comment ~

    管理者のみ表示。 | 非公開コメント投稿可能です。

    ~ Trackback ~

    トラックバックURL


    この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

    • 【2016年8月携帯待受】へ
    • 【琥珀暁・南旅伝 2】へ