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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 1;蒼天剣」
    蒼天剣 第4部

    蒼天剣・奸虎録 3

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    晴奈の話、第202話。
    追いついた。

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    3.
     夕食を食べ終えた晴奈たちは、検討を再開した。
    「まあ、でもさ。ここでボーっとしてるより、実際に見てみた方が早いかもね。案外、庭園をブラついてるかもしれないし」
    「庭園は入れるのですか?」
     小鈴の代わりに、フォルナが答える。
    「ええ。宮殿内は無理だそうですけれど、その前にある庭園と、門前広場は出入り自由と聞いておりますわ。夜の、確か……、10時くらいまでは入れたかと」
     その時刻を聞いた瞬間、晴奈の脳内に電流が走った。
    ――キミが眠ってから、10時間後に起こるコトさ――
     白猫から聞かされた言葉が、天啓のように響き渡る。
    (入場制限は、10時まで。そして私が宿で眠ったのは、正午。丁度、10時間の間がある。もしや、そこで……!?)
    「フォルナ、小鈴殿っ」
    「ん? どしたの、晴奈?」
    「どうなさったの?」
     晴奈は立ち上がり、二人の手をつかむ。
    「行ってみましょう、そこへ。いるかも知れない」
    「え、うん」「あ、はい」
     慌ただしく動き出した晴奈に、小鈴とフォルナは目を白黒させながらも付いて行った。



     フーはぼんやり月を見上げながら、宮殿前の広場に立っていた。今、この広場には彼と、広場全体を見下ろす初代ネール大公の銅像しか人影はない。
    (超人となり、名声を挙げ、伝説の武具も手に入れ、そして最高の女に『妻にしてくれ』とまで言わせちまった。……恐ろしいくらいだ。
     恐ろしいくらい、俺はツイてる。恐ろしいくらい、俺は世界の頂点へと、恐るべきスピードで駆け上がってる。恐ろしくて、たまらねえ……。
     この先――頂点を極めた先、俺は一体、どうなるんだろうか?)

     日上風は元々、凡庸な兵士だった。いや、素行の悪さから「使い物にならないクズ」とまでけなす者もあった。
     そんなフーをまず、一端の兵士として引き上げたのはナイジェル博士とエルスだった。博士は彼の戦闘能力の高さを見込んで、愛弟子であり凄腕の諜報員だったエルスの補佐役に就かせるよう、軍部に指示した。
     一匹狼ならぬ、一匹虎だったフーは、初めは人の下に就くことを良しとはしていなかった。だが「大徳」と呼ばれるだけあり、人材活用と人心掌握に秀でたエルスとともに活動するうち、彼は兵士に必要不可欠な団体行動の基本、そして他人と付き合うその楽しさと、安らぎを知るようになった。
     ところが、ある一件――「バニッシャー」強奪に端を発する、ジーン王国軍の内紛を納めるため、彼の上官だったエルスは「バニッシャー」を持って国を去った。同時に、彼の部下だったフーもエルスに加担したと疑われ、その後しばらく軍内で冷遇されていた。
     この一件で精神的に追い詰められ、さらに唯一の肉親であった祖母も亡くし、どん底に落ちていたフーは、ある男と出会った。それがアランである。アランは――実際にその技を使われたフー自身にも、良く分からない方法で――フーに驚異的な「力」を与え、超人に仕立て上げた。
     そこから、彼の人生は劇的に変化した。たちまち彼は軍のエース、英雄となり、同時期に勃発した中央政府との戦争で大活躍を納め、今に至る。

    (……まあ、いいか。何を悩む必要がある? アランの言うことに従ってれば、俺は世界の王になれるんだ。
     その後のことは、それから考えりゃいいさ)
     フーはため息をつき、首を鳴らす。
    「……戻るか」
     軽く屈伸をして、肩を鳴らした瞬間――関節が鳴るのとは違う、ポキと言う音がフーの背後から聞こえてきた。フーは瞬間的に、木の枝が折れる音――つまり、誰かがそれを踏んだ音だと悟った。
    「誰だ?」
     フーは振り返り、辺りの気配を伺う。
    「気のせいじゃないよな? 犬猫の類でも無さそうだ。俺に何の用だ?」
     何も応えない。
    「隠れてないで出て来いよ。うまく隠れてるつもりだろうが、気配がプンプン匂ってくるぜ?」
     フーが挑発すると、何者かが銅像の陰から姿を現した。
    「ん? お前……、どこかで見た覚えがあるな。どこだったか……? 女、ってことは、俺と付き合ったこと、あるか?」
    「ふざけるな、日上」
     隠れていた女は、怒気を含んだ声でフーに答える。
    「あ、違うか。……そうだ、思い出したぜ。コウカイで、スミスを斬った奴だな」
    「いかにも。焔流免許皆伝、セイナ・コウと申す。あの時貴様が奪った剣、『バニッシャー』を奪い返しに参上した」
    「そうか。……すげえな、強そうだ。何て言うか、『猫』には見えねえ。もっと大型の、獅子や豹を感じさせる殺気だ。
     ……いいだろ。俺から奪い返したいって言うなら、力ずくで来いや」
     フーは剣を抜き払い、晴奈と対峙した。
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    ~ Comment ~

    NoTitle 

    やはりこの「双月世界」でも、簡単には王、世界全域の支配者にはなれません。
    あちこちに大きな勢力が存在しますし、その全てを納得させなければいけません。
    フーの(正確にはアランの)野望は、非常に道が険しいです。

    ゲーム制作、頑張ってください。
    執筆も楽しみにしてます。

    NoTitle 

    エウレカセブンのデューイ・ノヴァクが
    「王となるための王殺し…。
    自分の父をその手にかけなければ、次代の王になる権利は得られない。私は自分の力で王になった。この世界を救うためのな。」
    と王について語っていますね。

    確かにイギリスの王室を見ても、結構派閥争いが激しかったですし、簡単に王になれるといいんですけどね。。。


    今やっているゲーム制作が終われば、本格的にヒイラギやウィリアムが登場する話の執筆をしようと思っているので、よろしくお願いします。たぶん3月からです。
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