「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 第1部
琥珀暁・邂朋伝 1
神様たちの話、第34話。
古き朋友。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
1.
双月暦の制定以降も、ゼロは様々なものを創り、築き上げた。
その一つが、後に国の礎の一つとなる力――即ち「武力」だった。
「紀元前日の戦い」を契機に、彼は村を守るための自警団を組織し、バケモノの襲撃を防ぐための防壁と監視塔を築くうち、結果として戦力を手に入れた。
それはやがて防衛だけではなく、近隣の村落に出向いてバケモノを駆除、撃退する部隊へと進化し、その活躍は近隣村落の感謝と尊敬を集めることとなった。
それに伴って各村との連携が密になり始める一方で、物々交換を主とした取引の件数は飛躍的・幾何的に膨れ上がり、破綻しかけていた。
「タイムズ様!」
いつの間にか尊称を付けて呼ばれることにもすっかり慣れたらしく、ゼロは謙遜することも無く、その呼び声に応じた。
「どうしたの?」
「本日も市場で喧嘩沙汰があり、ここ数日、まともな取引が行えません! いくら警備団の人間を増やしても、一向に収まりが付く気配がありません!
どうか取引が円滑に進むよう、お力を示して下さい!」
近隣の村人からの陳情に、ゼロは深くうなずいて返した。
「うん、うん、安心して。対策は講じてある。明日か明後日には、公布するつもりをしてる。それまでは何とか、現場の話し合いで収めてもらえないだろうか」
「さ、さようでございましたか! ご配慮に気付かず、失礼いたしました!」
「いやいや、僕の方こそ対応が遅れて、迷惑をかけちゃったね」
「いえいえ、滅相もございません! では、私はこれにて失礼いたします。
期待しておりますぞ、タイムズ様!」
「うん、頑張ってね」
陳情を処理し、ゼロはふう、とため息を付く。
「早いところ、おカネを用意しなきゃな。でもなー……」
一人になったところで、ゼロはぼそぼそと、誰に言うでもないつぶやきを漏らしていた。
と――。
「国、いや、文明を一から創るのは、さぞや楽しいだろうね。君が昔ハマってたゲームみたいな感じだよね。
傍から見てる私も結構ワクワクさせてもらってるよ、君の建国譚にね」
「……え?」
いつの間にか、ゼロの目の前には二人の人間が立っていた。
「君は、……君は、まさか?」
驚くゼロの顔を見て、その猫獣人はニヤッと笑った。
「私が誰だか、分かるよね?」
「分からないわけが無い。そんな言葉遣い、君以外にいるもんか!
死んだかと思ってたよ、モール! まさかこうやって会えるなんて!」
名前を呼ばれ、モールは肩をすくめる。
「死んだようなもんだけどね。ま、中身は前のまんまさ」
「だよね。その姿を見ただけじゃ、君だってまったく分からないよ。猫耳生えてるし」
「アハハ、もう私にも『元』が何だったかあやふやだね」
二人で楽しそうに一笑いし、ゼロが真顔になる。
「それで、その子は? 狼獣人、……じゃ無さそうだな。毛並みとか耳の形がなんか、ちょっと、違うような……?」
「ああ、狐っ子さ。山越えたトコにゃ、わんさかいるね」
「山? ……山ってあの、南にある山? まさかモール、君、あの山を越えたの?」
一々驚愕するゼロの反応が面白いらしく、モールはケタケタ笑っている。
「へっへっへ、私にかかりゃチョイチョイってなもんだね。
とは言えちゃんとしたルートを確立、構築するにゃもうちょい時間がかかる。ソレでもあと2、3年かけりゃ、向こうとの交流ができるようになるはずさね。
ソコでいっこ、話があるんだよね」
そう言ってモールは、その狐獣人の少女の肩に手を置いた。
「この子の故郷で、かなりデカそうな金鉱床を見付けたね。君の計画する貨幣鋳造計画に、大きく貢献ができるはずだね。って言うか、計画が止まってる最大の原因は、ズバリ貴金属が無いからだろ?」
「お見通しかぁ。うん、そうなんだ」
恥ずかしそうに笑うゼロに、モールはニヤっと笑って返した。
「君もどうやら権力と軍隊を手に入れたっぽいし、ちょっと手を貸してくれないかね?」
「どう言うこと?」
「その故郷に巣食ってるのさ、バケモノがね」
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古き朋友。
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双月暦の制定以降も、ゼロは様々なものを創り、築き上げた。
その一つが、後に国の礎の一つとなる力――即ち「武力」だった。
「紀元前日の戦い」を契機に、彼は村を守るための自警団を組織し、バケモノの襲撃を防ぐための防壁と監視塔を築くうち、結果として戦力を手に入れた。
それはやがて防衛だけではなく、近隣の村落に出向いてバケモノを駆除、撃退する部隊へと進化し、その活躍は近隣村落の感謝と尊敬を集めることとなった。
それに伴って各村との連携が密になり始める一方で、物々交換を主とした取引の件数は飛躍的・幾何的に膨れ上がり、破綻しかけていた。
「タイムズ様!」
いつの間にか尊称を付けて呼ばれることにもすっかり慣れたらしく、ゼロは謙遜することも無く、その呼び声に応じた。
「どうしたの?」
「本日も市場で喧嘩沙汰があり、ここ数日、まともな取引が行えません! いくら警備団の人間を増やしても、一向に収まりが付く気配がありません!
どうか取引が円滑に進むよう、お力を示して下さい!」
近隣の村人からの陳情に、ゼロは深くうなずいて返した。
「うん、うん、安心して。対策は講じてある。明日か明後日には、公布するつもりをしてる。それまでは何とか、現場の話し合いで収めてもらえないだろうか」
「さ、さようでございましたか! ご配慮に気付かず、失礼いたしました!」
「いやいや、僕の方こそ対応が遅れて、迷惑をかけちゃったね」
「いえいえ、滅相もございません! では、私はこれにて失礼いたします。
期待しておりますぞ、タイムズ様!」
「うん、頑張ってね」
陳情を処理し、ゼロはふう、とため息を付く。
「早いところ、おカネを用意しなきゃな。でもなー……」
一人になったところで、ゼロはぼそぼそと、誰に言うでもないつぶやきを漏らしていた。
と――。
「国、いや、文明を一から創るのは、さぞや楽しいだろうね。君が昔ハマってたゲームみたいな感じだよね。
傍から見てる私も結構ワクワクさせてもらってるよ、君の建国譚にね」
「……え?」
いつの間にか、ゼロの目の前には二人の人間が立っていた。
「君は、……君は、まさか?」
驚くゼロの顔を見て、その猫獣人はニヤッと笑った。
「私が誰だか、分かるよね?」
「分からないわけが無い。そんな言葉遣い、君以外にいるもんか!
死んだかと思ってたよ、モール! まさかこうやって会えるなんて!」
名前を呼ばれ、モールは肩をすくめる。
「死んだようなもんだけどね。ま、中身は前のまんまさ」
「だよね。その姿を見ただけじゃ、君だってまったく分からないよ。猫耳生えてるし」
「アハハ、もう私にも『元』が何だったかあやふやだね」
二人で楽しそうに一笑いし、ゼロが真顔になる。
「それで、その子は? 狼獣人、……じゃ無さそうだな。毛並みとか耳の形がなんか、ちょっと、違うような……?」
「ああ、狐っ子さ。山越えたトコにゃ、わんさかいるね」
「山? ……山ってあの、南にある山? まさかモール、君、あの山を越えたの?」
一々驚愕するゼロの反応が面白いらしく、モールはケタケタ笑っている。
「へっへっへ、私にかかりゃチョイチョイってなもんだね。
とは言えちゃんとしたルートを確立、構築するにゃもうちょい時間がかかる。ソレでもあと2、3年かけりゃ、向こうとの交流ができるようになるはずさね。
ソコでいっこ、話があるんだよね」
そう言ってモールは、その狐獣人の少女の肩に手を置いた。
「この子の故郷で、かなりデカそうな金鉱床を見付けたね。君の計画する貨幣鋳造計画に、大きく貢献ができるはずだね。って言うか、計画が止まってる最大の原因は、ズバリ貴金属が無いからだろ?」
「お見通しかぁ。うん、そうなんだ」
恥ずかしそうに笑うゼロに、モールはニヤっと笑って返した。
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