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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 4;琥珀暁」
    琥珀暁 第1部

    琥珀暁・邂朋伝 3

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    神様たちの話、第36話。
    変化と進化。

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    3.
     エリザを見て、ゼロが尋ねる。
    「さっきから気になってたんだけど、その子は?」
     尋ねられ、モールがニヤッと笑って答える。
    「私の弟子だね」
    「弟子だって?」
     その返答に、ゼロがけげんな顔を返した。
    「君が弟子を取ったってこと? イメージ沸かないなぁ。そう言うの、嫌いなタイプだと思ってたんだけど」
    「モノを教えてるってだけさ。かなり筋がいいんだよね、この子。私の魔術やら何やら、ひょいひょい覚えてくれるもんでね、すっかり私のお気に入りさ。
     勿論、上下関係なんかクソ喰らえってなもんだけどね。コイツにも『先生って呼ぶな』っつってんだけどね」
    「なんぼなんでもソコは大事やん。教わっとるワケやし」
     そう答えたエリザに、モールは肩をすくめる。
    「いーっての。……ま、ソコ以外は気楽にやってるけどね。妹みたいな感じで扱ってるね」
    「ああ、そう言う方が君らしい。ホウオウに対しても君、よく『おねーちゃんに任せときなってね』って言ってたし」
    「アハハ、言ってた言ってた」
    「おね……?」
     きょとんとするエリザに構わず、ゼロとモールは昔話に花を咲かせている。
    「……ああ、三人で色々やってた時が懐かしい。あの頃は本当に、楽しかった」
    「今だって楽しいね。この新しい、……いや、ドコだろうと、気ままに旅するってのが、ね」
    「そうだね、君はずっと、『気楽に放浪の旅ってのが私の夢だね』って言ってた。夢が叶ったわけだ」
    「そーゆーコトさ。ま、むしろ君の方が今、楽しくないかも知れないね。ひとつところでじっとしてたいタイプだって言ってたしね」
    「いや、今は今で楽しいよ。さっきも君が言ってた通り、こうやって現実で国造りするのは、ある意味夢だったから」
    「そりゃ良かった。アイツはどうなんだろうね?」
    「楽しんでるんじゃないかな? あの後、直接会ったわけじゃないんだけど、人づてに様子を聞いたんだ。彼は彼で、気ままにやってるっぽいよ」
    「ソレもアイツらしいっちゃらしいね、アハハハ」
    「確かにそうだ、ふふふ……」
     ゼロは椅子から立ち上がり、モールたちに付いてくるよう促した。
    「今日はもう遅い。もっと色々、ゆっくり話をしたいんだけど、僕の家に泊まっていってくれる?」
    「ああ、喜んで。魔物の話だって今日、明日で状況がガラッと変わるワケじゃないしね。ソレにもっと、エリザの話を君にしてやりたいし。
     構わないよね、エリザ?」
     モールの問いに、エリザはこくりとうなずく。
    「よっしゃ、そんじゃ行こうかね」
     モールたちを連れ、ゼロは執務室を後にした。
    「で、ゼロ」
     その途中で、モールがニヤニヤしながら尋ねてくる。
    「ココ、ただのお役所ってワケじゃないよね?」
    「って言うと?」
    「王様がお城に通って、平屋に住むっての?」
    「ああ……」
     ゼロは小さくうなずき、恥ずかしそうに微笑む。
    「まあ、そうだね。ここが僕の家だ」
    「やっぱりね」
     そう返し、モールは廊下の真ん中で立ち止まる。
    「世界初のお城ってワケだね、ココは」
    「そうなる」
    「ただ、私らのイメージするような宮殿だとか城塞だとかにゃ、まだちょっとばかし程遠いけどね。
     ま、ソレも時間の問題か。後10年、20年も経ちゃ、ソレもできあがるだろうねぇ」
    「どうだろう? まだまだやることは一杯あるから、とてもそこまで手が伸ばせないかも知れないし」
    「ソレでも30年はかからないだろうね。
     予言したげるよ。きっと30年以内に、ココにはでっかい城が建ってるね」
    「君が予言だって?」
     モールの言葉に、ゼロは苦笑して返した。
    「徹底した現実主義者のくせに、予言だの占いだの言い出すとは思わなかった」
    「新しい世界に来たんだ。どんなモノだって、色々変わるもんさね。……いや、変えていくって方が正しいかね」
    「なるほど。それもいいかも」
    「『なるほど』? 君だって変わったじゃないね」
     そう言って、モールはゼロの背中を小突いた。
    「あいてっ」
    「朴念仁だった君に奥さんがいるとか、聞いてビックリってもんだね。ソコら辺も聞かせなよ、ゼロ」
    「あ、うん、それは勿論。むしろ喜んで紹介したいよ」
    「ヘッ、ノロケちゃって」
     モールは笑いながらもう一度、ゼロを小突いた。
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