「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 第1部
琥珀暁・邂朋伝 4
神様たちの話、第37話。
ゼロの家族。
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4.
ゼロの住む部屋に通されたところで、モールたちは赤ん坊を抱えた長耳の女性から、挨拶を受けた。
「ようこそいらっしゃいました。わたしがゼロの妻、シノン・タイムズです」
「どーも。私はモール。こっちのはエリザ」
「ど、ども」
師弟揃って頭を下げ、すぐにモールがシノンにすり寄る。
「可愛い子だね。何ヶ月?」
「え? ええ、ありがとうございます。4ヶ月になります」
「男の子? 女の子? お名前は?」
「男の子です。名前はバルトロ」
「ほうほう。概ね、奥さん似だね」
「あら、そうかしら」
元々から人懐こい性格のためか、二言三言交わす間に、シノンとモールは親しく会話し始めていた。
「で、もう一人は?」
「えっ?」
が、モールの一言に、シノンは目を丸くする。
「どうして子供が2人だと? ゼロからお聞きに?」
「違うね。後ろ、後ろ」
モールに示され、シノンは背後を振り返り、「ああ」と声を上げる。
「こっちにいらっしゃい、アロイ。お客さんにご挨拶して」
「はい」
とてとてと歩み寄ってきた子供を見て、モールは満面の笑みを浮かべた。
「やぁやぁアロイ、君の方はお父さん似だね。耳だけ長いけど」
「うん」
「私はモール。よろしくね」
「よろしく」
モールがアロイの前にしゃがみ込み、とろけそうな笑顔で握手を交している間に、ゼロはエリザに声をかけていた。
「エリザちゃん、そう言えば君は今、いくつなのかな」
「さあ……? 先生に会うまでアタシ、年の数え方とか全然知りませんでしたから」
「あ、そっか」
「先生と会うてから8年経ちます。ソレ以外は、アタシの年数はさっぱりですわ」
「そうか……。
良かったら色々聞かせてもらえるかな? 君のお師匠さん、僕の子供たちに夢中みたいだから、君のことをじっくり話してもらいたいな」
「はあ……」
きょとんとした顔を見せたエリザに、シノンも寄ってきた。
「わたしも興味あるわ。毛並みが『狼』とちょっと違うし、この辺りの子じゃないわよね?」
「ええ、山の向こうに住んでました」
「本当に?」
「らしいよ。お師匠さんと一緒に、山越えしたんだって」
夫の言葉を聞いて、シノンはさらに興味深そうな目を、エリザに向ける。
「すごく聞きたいわ、その話。ね、エリザちゃん。お菓子は好きかしら」
「はい」
素直にうなずいたエリザを見て、シノンは嬉しそうに微笑んだ。
「じゃあ、用意するわね。お菓子食べながら、ゆっくりあなたのこと、ゼロと一緒に聞かせてね」
「は、はい」
と、いつの間にかモールが、エリザの側に立っている。
「お菓子? 随分文化的だね。砂糖も作ったっての?」
モールの問いに、ゼロが答える。
「ああ。あと、小麦粉も作れるようになってきた」
「そりゃすごいね。……ねえ、エリザ」
モールはエリザの頭をぽんぽんと撫で、こう言った。
「こっちでも色々、勉強しといた方がいいね。
どんなコトでも学んでおいて損は無いってコト、ちょくちょく言ってるけども、この街では特に覚えといた方がいいコト、一杯あるだろうからね」
「はい。確かゼロさんも、魔術教えてはるんですよね?」
「あ、うん」「いや、そんなのよりもだ」
ゼロがうなずいたところで、モールがそれをさえぎる。
「人と街を治める方法、美味しいご飯を毎日食べられる秘訣、その他いくらでも、魔術以外に学べるコトはいっぱいあるからね。
私からは魔術くらいしか教えられないけど、ソレ以外はこの街で、たっぷり修めて覚えときな」
「はいっ」
話している間に、シノンが皿いっぱいに焼菓子を持ってくる。
「お待たせしました。さ、聞かせてちょうだい、エリザちゃん」
「あ、はい。……えーと」
戸惑う様子を見せたエリザに、シノンがにこっと笑みを返した。
「そうね、まず山の向こうのお話から、……ううん、あなたの故郷の話から、聞かせてもらえるかしら?」
琥珀暁・邂朋伝 終
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ゼロの家族。
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4.
ゼロの住む部屋に通されたところで、モールたちは赤ん坊を抱えた長耳の女性から、挨拶を受けた。
「ようこそいらっしゃいました。わたしがゼロの妻、シノン・タイムズです」
「どーも。私はモール。こっちのはエリザ」
「ど、ども」
師弟揃って頭を下げ、すぐにモールがシノンにすり寄る。
「可愛い子だね。何ヶ月?」
「え? ええ、ありがとうございます。4ヶ月になります」
「男の子? 女の子? お名前は?」
「男の子です。名前はバルトロ」
「ほうほう。概ね、奥さん似だね」
「あら、そうかしら」
元々から人懐こい性格のためか、二言三言交わす間に、シノンとモールは親しく会話し始めていた。
「で、もう一人は?」
「えっ?」
が、モールの一言に、シノンは目を丸くする。
「どうして子供が2人だと? ゼロからお聞きに?」
「違うね。後ろ、後ろ」
モールに示され、シノンは背後を振り返り、「ああ」と声を上げる。
「こっちにいらっしゃい、アロイ。お客さんにご挨拶して」
「はい」
とてとてと歩み寄ってきた子供を見て、モールは満面の笑みを浮かべた。
「やぁやぁアロイ、君の方はお父さん似だね。耳だけ長いけど」
「うん」
「私はモール。よろしくね」
「よろしく」
モールがアロイの前にしゃがみ込み、とろけそうな笑顔で握手を交している間に、ゼロはエリザに声をかけていた。
「エリザちゃん、そう言えば君は今、いくつなのかな」
「さあ……? 先生に会うまでアタシ、年の数え方とか全然知りませんでしたから」
「あ、そっか」
「先生と会うてから8年経ちます。ソレ以外は、アタシの年数はさっぱりですわ」
「そうか……。
良かったら色々聞かせてもらえるかな? 君のお師匠さん、僕の子供たちに夢中みたいだから、君のことをじっくり話してもらいたいな」
「はあ……」
きょとんとした顔を見せたエリザに、シノンも寄ってきた。
「わたしも興味あるわ。毛並みが『狼』とちょっと違うし、この辺りの子じゃないわよね?」
「ええ、山の向こうに住んでました」
「本当に?」
「らしいよ。お師匠さんと一緒に、山越えしたんだって」
夫の言葉を聞いて、シノンはさらに興味深そうな目を、エリザに向ける。
「すごく聞きたいわ、その話。ね、エリザちゃん。お菓子は好きかしら」
「はい」
素直にうなずいたエリザを見て、シノンは嬉しそうに微笑んだ。
「じゃあ、用意するわね。お菓子食べながら、ゆっくりあなたのこと、ゼロと一緒に聞かせてね」
「は、はい」
と、いつの間にかモールが、エリザの側に立っている。
「お菓子? 随分文化的だね。砂糖も作ったっての?」
モールの問いに、ゼロが答える。
「ああ。あと、小麦粉も作れるようになってきた」
「そりゃすごいね。……ねえ、エリザ」
モールはエリザの頭をぽんぽんと撫で、こう言った。
「こっちでも色々、勉強しといた方がいいね。
どんなコトでも学んでおいて損は無いってコト、ちょくちょく言ってるけども、この街では特に覚えといた方がいいコト、一杯あるだろうからね」
「はい。確かゼロさんも、魔術教えてはるんですよね?」
「あ、うん」「いや、そんなのよりもだ」
ゼロがうなずいたところで、モールがそれをさえぎる。
「人と街を治める方法、美味しいご飯を毎日食べられる秘訣、その他いくらでも、魔術以外に学べるコトはいっぱいあるからね。
私からは魔術くらいしか教えられないけど、ソレ以外はこの街で、たっぷり修めて覚えときな」
「はいっ」
話している間に、シノンが皿いっぱいに焼菓子を持ってくる。
「お待たせしました。さ、聞かせてちょうだい、エリザちゃん」
「あ、はい。……えーと」
戸惑う様子を見せたエリザに、シノンがにこっと笑みを返した。
「そうね、まず山の向こうのお話から、……ううん、あなたの故郷の話から、聞かせてもらえるかしら?」
琥珀暁・邂朋伝 終
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ひとまず「琥珀暁」、第1部はこれにて終了。
第2部の掲載は、まだしばらく先になります。
自分の話ですが、シムシティでもA列車でも、いわゆる「シナリオ」と言うモードが、あんまり好きではありません。
既に存在する街をある目的に沿って再開発していくよりも、一から街を作っていく方が好きです。
そう言う点でゼロの境遇は、羨ましい部分はあります。
もっとも、自分が本当にゼロと同じ目に遭ったら到底、生きていけないでしょうが。
とりあえず第2部、現時点でほとんどできてないので、
しばらく充電期間がてら、短編を週1ペースで掲載する予定です。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
(注:ここから先は作品に全く関係が無く、そして、あまり気分のいい話ではありません。
まだ僕の中でわだかまってるモノを吐き出したいだけです。なので今回はタグで隠したりせず、そのまま掲載しています。
作品に関係の無い話、鬱々とした重たいだけの話を読みたくないって方は、読まずにこのままブラウザバックして下さい)
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
本当にこの数ヶ月、僕は本気で頭がおかしくなるんじゃないかと思うくらい、ひどい目に遭いました。
おかげで創作活動なるものが何一つできなくなるくらい、精神が参っていました。
何かしては怒られ、何もしなくても怒られ、怒鳴られ、なじられ、「キチガイ」「アタマの病院行け」とまで言われ……。
勿論、病院には行っていませんが(と言うより、そんなん言われて行きたくありません)、
行けば間違い無く、何らかの異常と診断されたでしょう。
何しろ幻聴は聞こえるわ、目眩が続くわ、気力が沸かないわで……。
事実、最後の方には簡単な作業もできないくらい、前後不覚になっていました。
今にして思えば、本当に、僕は頭がおかしくなっていたのかも知れません。
ともかく今は、立ち直りました。
少しずつ、少しずつ、創作活動を再開していっています。
やっぱり気持ち良くモノを創るには、アタマの中がスッキリしてないと駄目みたいです。
これからも、頑張ります。
ひとまず「琥珀暁」、第1部はこれにて終了。
第2部の掲載は、まだしばらく先になります。
自分の話ですが、シムシティでもA列車でも、いわゆる「シナリオ」と言うモードが、あんまり好きではありません。
既に存在する街をある目的に沿って再開発していくよりも、一から街を作っていく方が好きです。
そう言う点でゼロの境遇は、羨ましい部分はあります。
もっとも、自分が本当にゼロと同じ目に遭ったら到底、生きていけないでしょうが。
とりあえず第2部、現時点でほとんどできてないので、
しばらく充電期間がてら、短編を週1ペースで掲載する予定です。
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(注:ここから先は作品に全く関係が無く、そして、あまり気分のいい話ではありません。
まだ僕の中でわだかまってるモノを吐き出したいだけです。なので今回はタグで隠したりせず、そのまま掲載しています。
作品に関係の無い話、鬱々とした重たいだけの話を読みたくないって方は、読まずにこのままブラウザバックして下さい)
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本当にこの数ヶ月、僕は本気で頭がおかしくなるんじゃないかと思うくらい、ひどい目に遭いました。
おかげで創作活動なるものが何一つできなくなるくらい、精神が参っていました。
何かしては怒られ、何もしなくても怒られ、怒鳴られ、なじられ、「キチガイ」「アタマの病院行け」とまで言われ……。
勿論、病院には行っていませんが(と言うより、そんなん言われて行きたくありません)、
行けば間違い無く、何らかの異常と診断されたでしょう。
何しろ幻聴は聞こえるわ、目眩が続くわ、気力が沸かないわで……。
事実、最後の方には簡単な作業もできないくらい、前後不覚になっていました。
今にして思えば、本当に、僕は頭がおかしくなっていたのかも知れません。
ともかく今は、立ち直りました。
少しずつ、少しずつ、創作活動を再開していっています。
やっぱり気持ち良くモノを創るには、アタマの中がスッキリしてないと駄目みたいです。
これからも、頑張ります。



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双月千年世界 3;白猫夢

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