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黄輪雑貨本店 新館


    「双月千年世界 1;蒼天剣」
    蒼天剣 第4部

    蒼天剣・奸虎録 5

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    晴奈の話、第204話。
    最悪の敵。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    5.
     その瞬間、晴奈は何が起こったのか良く分からなかった。
     突然、頭蓋骨からミシ、と言う嫌な音が響き、晴奈の目の前が真っ暗になる。
    「……!?」
     一瞬宙に浮く感覚を味わい、次に全身を強い衝撃が襲う。晴奈の全感覚は頭から飛び散った。
    (し、まっ、た)
     石畳に叩きつけられた晴奈は、全身の痛みをこらえながら現状把握に努める。
    (衝撃、痛み、衝撃、暗転、衝撃、……落ち着けこれは攻撃だ。何か強烈な一撃を食らったのだ私は。……誰が? 誰が私を? 日上? いや、違う日上ではない。日上は倒した間違いなく。では誰だと言うのだ誰だ落ち着け、……日上、では、ない。
     では、……そうか。側近……!)
     晴奈は己の意識の混乱を半ば無理矢理に落ち着かせた。もし仮に、ここで混乱したままであれば、晴奈は間違いなく命を落としていただろう。
    (来る! 逃げろ! 跳べ!)
     目の前が真っ暗なまま、晴奈はその場から飛びのく。その直後、自分がいたであろう場所からドゴ、と言う重たい音が聞こえてきた。
    (来る! かわせ! もう一度跳べ!)
     ほとんど本能的に、晴奈は体を動かす。必死で逃げた地点から、またもズン、と言う鈍い音が伝わってくる。
    (また! とべ、いや、かわせ、いや、か、と、か、どっ、ち、だ……)
     また、攻撃の気配を感じ、晴奈は逃げようとした。だが必死に押さえつけていた意識の混濁がここで一気に噴き出し、晴奈の判断と動きが止まった。



    (……! 起きろ、黄晴奈ッ!)
     はるか彼方に飛び去っていた意識がもう一度、晴奈の脳内に戻ってきてくれた。目も正常に戻り、辺りを正確に把握できる。
     そしてその目で、惨状を確認した。
    「小鈴殿!」
     小鈴が胸から血を流し、倒れている。息はあるようだが、まったく動けないようだった。
    「せい、な。にげて、は、やく」
     口から血を流しながら、小鈴は晴奈を逃がそうとする。位置と時間経過から考えて、どうやら小鈴は晴奈を守ってくれていたらしい。
    「あ、ああ……」
     辺りを素早く伺うが、絶望的な状況しか確認できない。
    「フォルナ! 大丈夫か!?」
    「……」
     フォルナは無事なようだが、目の焦点が定まっておらず、晴奈の呼びかけに応えない。どうやらあまりに凄惨なものを見せられ、気を失っているらしい。
    (くそ……! アラン、だな!?)
     どこからか現れたアランが、拳とフードの袖を血で濡らしている。フーはその背後で倒れたままだ。どうやら晴奈を殴り飛ばしたのも、小鈴を突いたのも、アラン一人のようだ。
    (白猫の、言った通りだ……! 何故私は、油断してしまったのだ!)
    「小鈴殿、大丈夫ですか!?」
    「だい、じょうぶじゃ、ない。だから、にげて、フォルナ、つれて」
     小鈴の声がどんどん、小さくなっていく。顔も青ざめていく。死の淵にいるのは、誰の目にも明らかだった。
    「ダメだ、小鈴殿! あなたを置いては行けない! しっかりしてくれ、小鈴殿!」
    「……いい、たび、だったけど、ざんねん、ね。こんな、さいご、で」
    「ダメだ! 起きてください! 起きてくれ、小鈴ッ!」
     晴奈は叫ぶが、小鈴の目はもう、うつろになっている。
    「小鈴! 小鈴ッ!」
     晴奈は絶叫に近い声で、小鈴の名を呼んだ。

     その時だった。
    「うるさいっ。ちょっと冷静になってよっ、晴奈っ」
     どこからか、子供の声が聞こえてきた。
    「ホラホラ、ボーっとしないでよっ」
     あどけない、少女の声が晴奈を叱る。
    「え……?」
    「小鈴は気を失ってるだけっ。血は出てるけど、もうアタシが止めたから大丈夫よっ」
     いつの間にか、小鈴の側に長耳の少女が立っていた。赤い髪に、全身赤い巫女服、そして体中に鈴を付け、動く度にジャラジャラと鳴り響く。
    「だ、誰だ?」
    「失礼な『猫』さんねっ。アタシの顔、忘れたっ?」
     少女は体中に付けた鈴をシャラシャラ鳴らしながら、ほおを膨らませる。
    「……見た、覚えが。……杖の、精?」
     晴奈の答えに、少女は面白そうに笑った。
    「アハ、杖の精はいいわねっ。でも、アタシのコトは」
     少女は晴奈の鼻先で指をピン、と立てた。
    「鈴林(レイリン)って呼んでっ」
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