「双月千年世界 1;蒼天剣」
蒼天剣 第4部
蒼天剣・奸虎録 7
晴奈の話、第206話。
日上追跡、一段落。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
7.
「ニガシタカ……。ン、ンん、……逃がしたか。この女ボケがしっかりしていれば、逃がすことも無かったのだが」
アランは毒づき、のどを抑えて揉み――それだけで、アランののどは完全にふさがれてしまった――倒れたままのフーを蹴った。
「う、ん……」
フーは目を覚まし、ゆっくりと起き上がった。
「いた、たた……」
「大丈夫か、フー」
「くそ、鎖骨やら何やら折られたみたいだ。でも、まあ、致命傷には至らない、かな」
アランは彼への罵声などなかったかのように、フーに肩を貸した。
「戻ろう。転倒したことにし、治療してもらうぞ」
「ああ……」
フーはよろめきつつ、悔しそうにつぶやく。
「俺もまだまだだな。まさか、ああまで打ちのめされるなんてな」
「お、おい。お前ら」
床に倒れていた晴奈は、自分たちを覗き込む者と目が合った。
「何でいきなり、アタシの店に……、い、いや、それよりも!
一体、どうしたんだそのケガ!? すぐ医者呼んでくるからな! 死ぬなよ! 絶対死ぬなよ!」
「かた、じけ、ない、朱海殿……」
一瞬のうちに、晴奈たちはクラフトランドからゴールドコースト、朱海の店に移動していた。レイリンの「とっておき」とは、黒炎教団の秘中の秘、「テレポート」だったのだ。
「助かったわ、レイリン」
小鈴が礼を言ったが、それに応える者はいない。その代わりに小鈴の杖がちり、と鳴った。
数時間後、晴奈たちは治療を受け、何とか一命を取り留めた。
「そっか。そんなことがあったのか……」
三人の容態が安定したところで、朱海から根掘り葉掘りと尋ねられた。事情を聞き終え、朱海はメモを取りながらうなる。
「まーた、商売のネタにしようとしてるんじゃないわよね」
小鈴が釘を刺すと、朱海は恥ずかしそうに笑った。
「へへ、ばれたか。……ま、それは冗談としても。そのアランって奴、どうも気になるんだ。アタシの方で、調べておこうかと思ってね。
ケガが治るまではしばらく、ウチで静養してな」
そう言って、朱海は部屋を離れた。
残された晴奈と小鈴、フォルナの三人は、しばらく見つめあった後、笑い出した。
「……はは、ばっちり生きてたわね、晴奈」
「小鈴、こそ。本当に、死んでしまったかと思った」
「ホントにね。あたしもあの時ばかりはさすがに、死ぬかと思ったわ」
「ええ、わたくしも生きた心地がいたしませんでしたわ」
そう言ったフォルナに、小鈴がイタズラっぽい顔をしてささやく。
「ココに、同じ服と下着があって良かったわね。誰にもばれずに済んだし」
「う」
フォルナの顔が真っ赤に染まる。
「大丈夫、内緒にしたげる。晴奈と朱海には、黙って洗濯しとくからね」
「ううー……」
フォルナは顔を真っ赤にし、布団に顔を埋める。
「どうした、フォルナ?」
「いーからいーから、ほっといたげなさいって」
「はあ……?」
「……ま、なんつーか」
小鈴は深いため息をつき、両脇にいた晴奈とフォルナの手をつかむ。
「生きてて良かった、つーか」
「……はは、そうですね」
「ええ……、ええ」
三人の間に、沈黙が流れる。ここで三人にようやく、安堵の時が訪れた。
その沈黙を破ったのは、晴奈だった。
「……強くなりたい」
「ん?」
「あの悪魔は、強かった。あいつを倒さねば、剣は取り戻せぬだろうな」
晴奈の言葉に、小鈴は目を丸くした。
「まさか……、アイツ、倒す気なの?」
フォルナも青い顔で尋ねる。
「無茶ですわよ……! 死ぬところでしたわ!」
二人に対し、晴奈は強い決意を秘めた目で、一言こう返した。
「やらねばならぬのだ、私は」
蒼天剣・奸雄録 終
@au_ringさんをフォロー
日上追跡、一段落。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
7.
「ニガシタカ……。ン、ンん、……逃がしたか。この女ボケがしっかりしていれば、逃がすことも無かったのだが」
アランは毒づき、のどを抑えて揉み――それだけで、アランののどは完全にふさがれてしまった――倒れたままのフーを蹴った。
「う、ん……」
フーは目を覚まし、ゆっくりと起き上がった。
「いた、たた……」
「大丈夫か、フー」
「くそ、鎖骨やら何やら折られたみたいだ。でも、まあ、致命傷には至らない、かな」
アランは彼への罵声などなかったかのように、フーに肩を貸した。
「戻ろう。転倒したことにし、治療してもらうぞ」
「ああ……」
フーはよろめきつつ、悔しそうにつぶやく。
「俺もまだまだだな。まさか、ああまで打ちのめされるなんてな」
「お、おい。お前ら」
床に倒れていた晴奈は、自分たちを覗き込む者と目が合った。
「何でいきなり、アタシの店に……、い、いや、それよりも!
一体、どうしたんだそのケガ!? すぐ医者呼んでくるからな! 死ぬなよ! 絶対死ぬなよ!」
「かた、じけ、ない、朱海殿……」
一瞬のうちに、晴奈たちはクラフトランドからゴールドコースト、朱海の店に移動していた。レイリンの「とっておき」とは、黒炎教団の秘中の秘、「テレポート」だったのだ。
「助かったわ、レイリン」
小鈴が礼を言ったが、それに応える者はいない。その代わりに小鈴の杖がちり、と鳴った。
数時間後、晴奈たちは治療を受け、何とか一命を取り留めた。
「そっか。そんなことがあったのか……」
三人の容態が安定したところで、朱海から根掘り葉掘りと尋ねられた。事情を聞き終え、朱海はメモを取りながらうなる。
「まーた、商売のネタにしようとしてるんじゃないわよね」
小鈴が釘を刺すと、朱海は恥ずかしそうに笑った。
「へへ、ばれたか。……ま、それは冗談としても。そのアランって奴、どうも気になるんだ。アタシの方で、調べておこうかと思ってね。
ケガが治るまではしばらく、ウチで静養してな」
そう言って、朱海は部屋を離れた。
残された晴奈と小鈴、フォルナの三人は、しばらく見つめあった後、笑い出した。
「……はは、ばっちり生きてたわね、晴奈」
「小鈴、こそ。本当に、死んでしまったかと思った」
「ホントにね。あたしもあの時ばかりはさすがに、死ぬかと思ったわ」
「ええ、わたくしも生きた心地がいたしませんでしたわ」
そう言ったフォルナに、小鈴がイタズラっぽい顔をしてささやく。
「ココに、同じ服と下着があって良かったわね。誰にもばれずに済んだし」
「う」
フォルナの顔が真っ赤に染まる。
「大丈夫、内緒にしたげる。晴奈と朱海には、黙って洗濯しとくからね」
「ううー……」
フォルナは顔を真っ赤にし、布団に顔を埋める。
「どうした、フォルナ?」
「いーからいーから、ほっといたげなさいって」
「はあ……?」
「……ま、なんつーか」
小鈴は深いため息をつき、両脇にいた晴奈とフォルナの手をつかむ。
「生きてて良かった、つーか」
「……はは、そうですね」
「ええ……、ええ」
三人の間に、沈黙が流れる。ここで三人にようやく、安堵の時が訪れた。
その沈黙を破ったのは、晴奈だった。
「……強くなりたい」
「ん?」
「あの悪魔は、強かった。あいつを倒さねば、剣は取り戻せぬだろうな」
晴奈の言葉に、小鈴は目を丸くした。
「まさか……、アイツ、倒す気なの?」
フォルナも青い顔で尋ねる。
「無茶ですわよ……! 死ぬところでしたわ!」
二人に対し、晴奈は強い決意を秘めた目で、一言こう返した。
「やらねばならぬのだ、私は」
蒼天剣・奸雄録 終
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
第4部「日上追跡編」もこれでおしまい。
続いて第5部に進む……、前に。
スピンオフでも掲載しようかなぁ、と。
いや、別に第5部が完成してないわけじゃないですよ?
ただ、第6部が完成して無いだけなんです(
ある程度余裕を持って掲載していきたいなーと思ってるので。
それと、毎度毎度晴奈の話ばかりじゃ、ねw
たまには別の人に目を向けないと、感性も磨り減るというもので。
と言うわけで携帯待受でワンクッション置いた後、スピンオフを流したいと思います。
第4部「日上追跡編」もこれでおしまい。
続いて第5部に進む……、前に。
スピンオフでも掲載しようかなぁ、と。
いや、別に第5部が完成してないわけじゃないですよ?
ただ、第6部が完成して無いだけなんです(
ある程度余裕を持って掲載していきたいなーと思ってるので。
それと、毎度毎度晴奈の話ばかりじゃ、ねw
たまには別の人に目を向けないと、感性も磨り減るというもので。
と言うわけで携帯待受でワンクッション置いた後、スピンオフを流したいと思います。



@au_ringさんをフォロー
総もくじ
双月千年世界 3;白猫夢

総もくじ
双月千年世界 2;火紅狐

総もくじ
双月千年世界 1;蒼天剣

総もくじ
双月千年世界 3;白猫夢

総もくじ
双月千年世界 2;火紅狐

総もくじ
双月千年世界 1;蒼天剣

もくじ
双月千年世界 目次 / あらすじ

もくじ
他サイトさんとの交流

もくじ
短編・掌編

もくじ
未分類

もくじ
雑記

もくじ
クルマのドット絵

もくじ
携帯待受

もくじ
カウンタ、ウェブ素材

もくじ
今日の旅岡さん

~ Comment ~
NoTitle
おお4部終わりですね。
…ようやく読めたのですかね。。。
私は。
ちょっと最近これなくてすいません。おそらくこのあたりまで読んだのは覚えているのですが。。。逆行していたら申し訳ありません。
次からは5部ですね。大分読めましたね。
メールも送っているので、また確認お願いします。ようやく目途が立ちました。
…ようやく読めたのですかね。。。
私は。
ちょっと最近これなくてすいません。おそらくこのあたりまで読んだのは覚えているのですが。。。逆行していたら申し訳ありません。
次からは5部ですね。大分読めましたね。
メールも送っているので、また確認お願いします。ようやく目途が立ちました。
~ Trackback ~
トラックバックURL
⇒
⇒この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
NoTitle
5部は力作なので、非常に楽しんでもらえるかなと思います。
これからもよろしくお願いします。