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    DETECTIVE WESTERN

    DETECTIVE WESTERN 6 ~ オールド・サザン・ドリーム ~ 3

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    ウエスタン小説、第3話。
    欲と義と。

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    3.
    「今回君に任せる件の詳細は、以下の通り。
     先のN準州開発に絡む汚職事件についての追求を逃れ蒸発した代議士、セオドア・スティルマンの捜索、及び拘束だ。
     無論、罪に問われているとは言え、まだ犯罪者と確定したわけでもない男を、我々が勝手に拘束するわけにはいかん。そこで逮捕権を持つ連邦特務捜査局の人間に同行し、名目上は彼に拘束させるようにしてほしい。
    (と言うよりもこの件、捜査局からの依頼なんだ。また人員不足だとか予算が十分じゃあ無いだとか、何だかんだと文句をこぼしていたよ)
     そう、今回もまたあのお坊ちゃん、サミュエル・クインシー捜査官と一緒に仕事してもらう。言うまでもないが、勿論エミルにも同行してもらうこと。
     あと、あの、……イタリア君にも初仕事をさせてやろう。一緒に連れて行くように。

    P.S.
     イタリア君の名前をど忘れした。何となくは覚えているんだが。彼、名前なんだったっけか?」



    「このメモ、局長から?」
     尋ねたエミルに、アデルはこくりとうなずく。
    「ああ。彼は今、別の事件を追っているらしい。だもんで、こうして書面での指示をもらってるってワケだ」
    「……ああ、だから?」
     そう返し、エミルは呆れた目を向ける。
    「局長の目が届かないうちにお宝探しして、ちゃっかり独り占めしようってわけね」
    「いやいや、二人占めさ。俺とお前で」
    「それでも強欲ね。サムとロバートも絡むことになるのに、二人には何も無し?」
    「あいつらには何かしら、俺からボーナスを出すさ。お宝が本当にあったならな」
    「あ、そ。慈悲深いこと」
     エミルにそう返されつつ冷たい目でじろっと眺められ、アデルは顔を背け、やがてぼそっとこうつぶやいた。
    「……分かったよ。4等分だ」
    「5等分にしなさいよ、そう言うのは。
     仕事にかこつけて宝探しするんだから、機会を与えてくれた局長にもきっちり分けるべきじゃないの?」
     エミルの言葉に、アデルは顔をしかめる。
    「エミル、お前ってそんなに博愛主義だったか? いいじゃねーか、局長に内緒でも」
    「一人でカネだの利権だのを独り占めしようなんて意地汚い奴は、結局ひどい目に遭うのよ。
     そりゃあたしだって儲け話は嫌いじゃないけど、出さなくていいバカみたいな欲を出して、ひどい目に遭いたくないもの」
     そう言ってエミルは新聞紙を広げ、アデルに紙面を見せつける。
    「『スティルマン議員 新たに脱税疑惑も浮上』ですってよ?
     独り占めしようとするようなろくでなしは結局悪事がバレて、こうやって追い回されて大損するのよ。
     あんた、こいつに悪事の指南を受けるつもりで捜索するの?」
    「……」
     アデルは憮然としていたが、やがてがっくりと肩を落とし、うなずいた。
    「……ごもっとも過ぎて反論できねーな、くそっ」
    「ま、そんなわけだから」
     そう言って、エミルはアデルの前方、衝立の向こうに声をかけた。
    「もしお宝の分け前があれば、あんたにもちゃんとあげるわよ」
    「どーもっス」
     衝立の陰から「イタリア君」――パディントン探偵局の新人、ロバート・ビアンキが苦笑いしつつ、ひょいと顔を出した。



    「あ、お前? もしかしてずっとそこにいたのか?」
     目を丸くしたアデルに、ロバートは口をとがらせてこう返す。
    「先輩、ひどいじゃないっスか。俺にタダ働きさせようなんて」
    「反省してるって。ちゃんと渡すさ」
    「へいへーい。ま、今回はそれで許してあげるっスよ、へへ」
     ばつが悪そうに答えたアデルに、ロバートはニヤニヤ笑いながら、肩をすくめて返した。

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    ブログ「妄想の荒野」の矢端想さんに挿絵を描いていただきました。
    ありがとうございます!
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    ~ Comment ~

    NoTitle 

    西部開拓時代の1ドルの価値、なかなか資料や基準になるものが無いので、
    個人的にはきっちり追求したいテーマですね。

    確かに最速ですねw
    いつもなら大体、半月から1ヶ月くらい間がありましたが、
    今回は色々事情がありましたから……。

    NoTitle 

    僕がものの本で読んだ知識では、保安官(いろいろですけど)の月給が50~100ドルぐらいだったみたい。僕はめっちゃ大雑把に1ドル=1万円ぐらいの感覚です。
    …あっ、さっそくイラスト掲載ありがとうございます!これまでで最速ww

    NoTitle 

    なぜローマ遺跡が新大陸にw
    それはそれで、なかなかとんでもない考古学ロマン小説になりそうですが。

    僕が検証したところによると、どうも1ドル辺り4~5,000円くらいじゃないかなーと考えていました。
    (当時の賃金とか物価から、ざっくり算出したものですが)
    ポールさんが示した資料に関しても、こちらで計算したところ、
    1ドル辺り2,200~2,400円くらいでした。
    当時の物価を考えても、1ドル4万円は高すぎじゃ……?
    もっとも、上の試算を元にしても100万ドルは25~50億円。
    やっぱり欲に目がくらんでしまいそう。

    NoTitle 

    アデル「そうか、隠し資産の正体は、ローマの遺跡だったのか。それじゃおいらのポケットにゃ入らねえ」

    エミル「あらゆる意味で間違ってるわよ」


    ……ちょっと調べてみました( http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12112060107 )が、1880年代の100ドルは今の400万円くらいに相当したらしいです。100万ドルというと……400億円!

    欲に目がくらんだアデルくんは正しい(笑)。
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