DETECTIVE WESTERN
DETECTIVE WESTERN 6 ~ オールド・サザン・ドリーム ~ 6
ウエスタン小説、第6話。
二つの事件と二人の政治家。
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6.
サムを懐柔したところで、アデルたちは改めて、その「お宝」の情報集めに取り掛かった。
「で、アデル。情報屋から聞いたお宝の話って、具体的には?」
「ああ。グレースから聞いたのは、こんな感じだ。
T州のとある大物政治家が1860年、即ち南北戦争の直前になって、資金を大量にかき集めたんだ。どうやら戦争が起こることを見越して、その時自分が付くであろう陣営、即ち南軍に合流させるべく、私兵団を築くつもりだったらしい。
しかし翌61年、その企みは失敗に終わる。何故なら首謀者だったその政治家が突然、ぽっくり逝っちまったんだそうだ。
だもんでそいつが集めさせた資金に関しても、完全に流れが見失われた。資金がどこに回ってどう使われたのか、誰も知らないし、何も分からないままになってるって話だ」
「つまり、そいつがお宝ってワケっスね」
ロバートの言葉に、アデルはうんうんとうなずいた。
「そうだ。巷じゃこいつは『F資金』と呼ばれてる。その大物政治家の頭文字が由来だそうだ。
ってわけで、まず俺たちが探すのは、Fってイニシャルで、T州を拠点にしていた、61年まで上院議員として活動していた奴だ。
サムが言ってた通り、この資料室には政治家、それも大物の情報がずらりとファイリングされている。その中でクサい奴がいれば、60年から61年にかけて何やってたか、徹底的に調べるんだ」
「……えっと」
と、サムがけげんな顔をする。
「それ、……さっきスティルマン議員と関係があったって言う、フィッシャー議員のことでは?」
「あ?」
サムの意見に、アデルは肩をすくめて返す。
「おいおい、混同しちゃいけねーよ、サムのお坊ちゃん。アレとコレとは別の話だぜ」
「で、でも」
サムが反論しかけたところで、ロバートも賛成票を投じてきた。
「いや、俺も先輩の話聞いてて、なーんか『っぽい』なーって思ってたっス」
「……うーん」
サムとロバートの意見に押され、アデルも渋々うなずく。
「まあ、じゃあ、まずはフィッシャー議員のとこから洗うか」
そしてFの棚に収められていた、フィッシャー議員についての資料を確認したところで、アデルも確信せざるを得なくなった。
「ヘクター・M・フィッシャー。178X年、旧メキシコ領(現合衆国T州)出身。
同州の合衆国併合の際には両国の間を渡り、併合に一部貢献した実績を持つ。その他にも同州および近隣州の経済発展に尽力し、最盛期は『フィッシャー・トラスト』とまで呼ばれる、巨大な政治資金団体を形成していた、……か。
なるほど、『F資金』はそれが基ってわけか。もしこの『F』が本当にフィッシャーのFだとするなら、だが」
「本当だとして、っスよ」
ロバートが恐る恐ると言った口ぶりで、アデルに尋ねる。
「このフィッシャー議員の跡を継いだのが、さっきのスティルマン議員っスよね?」
「ああ」
「ってことはっスよ、議員先生、『フィッシャー・トラスト』も継いだってことっスか?」
「……ふむ」
アデルはもう一度、スティルマン議員についての資料を開き、目を通す。
「可能性はありそうだな。
経歴からして尋常じゃない。3X年に生まれて61年に政治家に転身、そして70年代末にはもう、上院議員の座に登り詰めてる。
ちょっとやそっとカネがあっても、敗戦直後の混迷極めるT州で、30代、40代の若手政治家が上院議員に選出されるなんて、なかなかできることじゃ無い。
ってことは、ちょっとどころじゃなくカネを持ってたってことだろうな」
「今回追っかけてるのだって、カネが原因でしょ? ますます怪しいっスよ」
「確かにな。となりゃ……」
アデルは持っていたメモにぐりぐりと円を描き、話を締めた。
「どっちの件を追うにせよ、このスティルマン議員が鍵ってわけだな」
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二つの事件と二人の政治家。
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サムを懐柔したところで、アデルたちは改めて、その「お宝」の情報集めに取り掛かった。
「で、アデル。情報屋から聞いたお宝の話って、具体的には?」
「ああ。グレースから聞いたのは、こんな感じだ。
T州のとある大物政治家が1860年、即ち南北戦争の直前になって、資金を大量にかき集めたんだ。どうやら戦争が起こることを見越して、その時自分が付くであろう陣営、即ち南軍に合流させるべく、私兵団を築くつもりだったらしい。
しかし翌61年、その企みは失敗に終わる。何故なら首謀者だったその政治家が突然、ぽっくり逝っちまったんだそうだ。
だもんでそいつが集めさせた資金に関しても、完全に流れが見失われた。資金がどこに回ってどう使われたのか、誰も知らないし、何も分からないままになってるって話だ」
「つまり、そいつがお宝ってワケっスね」
ロバートの言葉に、アデルはうんうんとうなずいた。
「そうだ。巷じゃこいつは『F資金』と呼ばれてる。その大物政治家の頭文字が由来だそうだ。
ってわけで、まず俺たちが探すのは、Fってイニシャルで、T州を拠点にしていた、61年まで上院議員として活動していた奴だ。
サムが言ってた通り、この資料室には政治家、それも大物の情報がずらりとファイリングされている。その中でクサい奴がいれば、60年から61年にかけて何やってたか、徹底的に調べるんだ」
「……えっと」
と、サムがけげんな顔をする。
「それ、……さっきスティルマン議員と関係があったって言う、フィッシャー議員のことでは?」
「あ?」
サムの意見に、アデルは肩をすくめて返す。
「おいおい、混同しちゃいけねーよ、サムのお坊ちゃん。アレとコレとは別の話だぜ」
「で、でも」
サムが反論しかけたところで、ロバートも賛成票を投じてきた。
「いや、俺も先輩の話聞いてて、なーんか『っぽい』なーって思ってたっス」
「……うーん」
サムとロバートの意見に押され、アデルも渋々うなずく。
「まあ、じゃあ、まずはフィッシャー議員のとこから洗うか」
そしてFの棚に収められていた、フィッシャー議員についての資料を確認したところで、アデルも確信せざるを得なくなった。
「ヘクター・M・フィッシャー。178X年、旧メキシコ領(現合衆国T州)出身。
同州の合衆国併合の際には両国の間を渡り、併合に一部貢献した実績を持つ。その他にも同州および近隣州の経済発展に尽力し、最盛期は『フィッシャー・トラスト』とまで呼ばれる、巨大な政治資金団体を形成していた、……か。
なるほど、『F資金』はそれが基ってわけか。もしこの『F』が本当にフィッシャーのFだとするなら、だが」
「本当だとして、っスよ」
ロバートが恐る恐ると言った口ぶりで、アデルに尋ねる。
「このフィッシャー議員の跡を継いだのが、さっきのスティルマン議員っスよね?」
「ああ」
「ってことはっスよ、議員先生、『フィッシャー・トラスト』も継いだってことっスか?」
「……ふむ」
アデルはもう一度、スティルマン議員についての資料を開き、目を通す。
「可能性はありそうだな。
経歴からして尋常じゃない。3X年に生まれて61年に政治家に転身、そして70年代末にはもう、上院議員の座に登り詰めてる。
ちょっとやそっとカネがあっても、敗戦直後の混迷極めるT州で、30代、40代の若手政治家が上院議員に選出されるなんて、なかなかできることじゃ無い。
ってことは、ちょっとどころじゃなくカネを持ってたってことだろうな」
「今回追っかけてるのだって、カネが原因でしょ? ますます怪しいっスよ」
「確かにな。となりゃ……」
アデルは持っていたメモにぐりぐりと円を描き、話を締めた。
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