DETECTIVE WESTERN
DETECTIVE WESTERN 6 ~ オールド・サザン・ドリーム ~ 9
ウエスタン小説、第9話。
部屋割り。
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9.
ワシントンを発ってから8日後、アデルたち一行は予定通りT州、フランコビルを訪れていた。
「西部っつーか、南の端まで来ちまったなー」
「そっスねー。って言うか鉄道自体が端っこ、終着駅っスもんねー」
並んで立つアデルとロバートは、だらだらと汗を流している。サムも額をハンカチで拭きながら、気温の変化を分析している。
「流石に緯度10度近くも南下すると、空気が全然違いますね。ワシントンと全然、日差しが違います」
「い……ど?」
きょとんとしたロバートを見て、サムが説明しようとする。
「あ、緯度と言うのはですね、地球上における赤道からの距離を……」「やめとけ、サム」
が、アデルがそれを止めた。
「このアホにそんな小難しい説明はするだけ無駄だ。見ろ、このきょとぉんとした顔」
「……要するに、暑いところに来たってことです」
噛み砕いた説明をしたサムに、ロバートは憮然とした顔を返した。
「子供だって知ってるっつの。メキシコの隣だし」
「その暑い国がなんで暑いか知らねーからアホだって言われんだよ」
「ちぇー」
と、エミルが胸元をぱたぱたと扇ぎながら、3人に声をかける。
「いつまで日差しの真下で駄弁ってるつもり? そのまま続けてたら3人とも、マジで頭悪くなるわよ」
「ごもっとも。そんじゃ先に、宿を取りに行くか」
「賛成っスー」
一行は駅隣のサルーンに入り、マスターに声をかける。
「ちょっと聞きたいんだが、ここって泊まれるか?」
「ええ、一泊1ドル10セントです。ただ2階に2部屋しか無いんで、2人ずつになりますが」
マスターの返答に、4人は顔を見合わせる。
「まあ、そうよね。ニューヨークやフィラデルフィアならともかく、アメリカの端近くまで来てて、そんなに部屋数のある宿なんて普通無いわよ」
「まあ、道理だな。だが今、そこを論じたってしょうがない。部屋数が増えるわけじゃないからな。
今論じるべきは、どう分けるか、だ」
アデルの言葉に、ロバートが全員の顔をぐるっと見渡す。
「姉御と先輩、俺とサムって分け方じゃダメなんスか?」
「え」
ロバートの案に、サムが目を丸くする。
「え、……って、普通に考えたらそうなるだろ?」
けげんな顔をするロバートに、サムはしどろもどろに説明する。
「あ、でも、エミルさんとアデルさんは、そう言う関係じゃ」
「いや、それは俺も知ってるって。
だけど例えばさ、ヒラの俺と姉御じゃ余計おかしいだろ。お前でもそれは同じだし」
「それは……うーん……そう……ですよね」
うなずきかけたサムに、アデルがこう提案する。
「いや、それよか1対3、エミルに1部屋、残りを俺たち、って分けた方が紳士的だろ」
「あ、……そーっスよね、そっちの方がいいっス、絶対」
ロバートは素直に納得したが――何故かサムはこの案に対しても、面食らった様子を見せた。
「えぇぇ!?」
「おいおい、待てよサム。どこも変じゃ無いだろ、今の案は? 男部屋と女部屋に分けようって話だろうが」
アデルにそう言われ、サムは目をきょろきょろさせ、もごもごとうなるが、どうやら反論の言葉が出ないらしい。
「あっ、あの、でも、……その、……そう、ですよね」
「……」
しゅんとなり、黙り込んでしまったサムを、エミルはじーっと眺めている。
その間にロバートが、マスターに声をかけようとした。
「決まりっスね。んじゃ……」
と、そこでエミルが口を開き、ロバートをさえぎる。
「マスター。部屋割りはそっちの赤毛と茶髪で1つ。それからメガネの子とあたしで1つ。よろしくね」
「……え?」
エミルの言葉に、アデルたち3人は揃って唖然となる。
「かしこまりました、ごゆっくりどうぞ。夕食は18時に、1階で出しますので」
「分かったわ。それじゃ後でね、アデル。それからロバートも」
その間にマスターが鍵を2つカウンターに置き、エミルは片方の鍵を受け取ると同時にサムの手を引いて、そのまま2階へ行ってしまった。
残されたアデルは、ロバートと顔を見合わせる。
「……ちょっと待て」
「いや、俺に言ったって」
「え、エミル、ま、まさか、あいつが、あんなのが、タイプなのか? アレがタイプだってことか?」
「分かんないっスよぉ、俺に言われたって」
「い、いや、違うよな? ほ、保護欲みたいな、子犬可愛がりたいみたいな、ソレ的なアレだよな? な? なっ? なあっ!?」
「だから分かんないっスってー……」
狼狽えるアデルをなだめつつ、ロバートはカウンターに置かれた鍵を受け取り、まだぶつぶつつぶやいている彼を引っ張るようにしつつ、2階へ向かった。

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部屋割り。
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9.
ワシントンを発ってから8日後、アデルたち一行は予定通りT州、フランコビルを訪れていた。
「西部っつーか、南の端まで来ちまったなー」
「そっスねー。って言うか鉄道自体が端っこ、終着駅っスもんねー」
並んで立つアデルとロバートは、だらだらと汗を流している。サムも額をハンカチで拭きながら、気温の変化を分析している。
「流石に緯度10度近くも南下すると、空気が全然違いますね。ワシントンと全然、日差しが違います」
「い……ど?」
きょとんとしたロバートを見て、サムが説明しようとする。
「あ、緯度と言うのはですね、地球上における赤道からの距離を……」「やめとけ、サム」
が、アデルがそれを止めた。
「このアホにそんな小難しい説明はするだけ無駄だ。見ろ、このきょとぉんとした顔」
「……要するに、暑いところに来たってことです」
噛み砕いた説明をしたサムに、ロバートは憮然とした顔を返した。
「子供だって知ってるっつの。メキシコの隣だし」
「その暑い国がなんで暑いか知らねーからアホだって言われんだよ」
「ちぇー」
と、エミルが胸元をぱたぱたと扇ぎながら、3人に声をかける。
「いつまで日差しの真下で駄弁ってるつもり? そのまま続けてたら3人とも、マジで頭悪くなるわよ」
「ごもっとも。そんじゃ先に、宿を取りに行くか」
「賛成っスー」
一行は駅隣のサルーンに入り、マスターに声をかける。
「ちょっと聞きたいんだが、ここって泊まれるか?」
「ええ、一泊1ドル10セントです。ただ2階に2部屋しか無いんで、2人ずつになりますが」
マスターの返答に、4人は顔を見合わせる。
「まあ、そうよね。ニューヨークやフィラデルフィアならともかく、アメリカの端近くまで来てて、そんなに部屋数のある宿なんて普通無いわよ」
「まあ、道理だな。だが今、そこを論じたってしょうがない。部屋数が増えるわけじゃないからな。
今論じるべきは、どう分けるか、だ」
アデルの言葉に、ロバートが全員の顔をぐるっと見渡す。
「姉御と先輩、俺とサムって分け方じゃダメなんスか?」
「え」
ロバートの案に、サムが目を丸くする。
「え、……って、普通に考えたらそうなるだろ?」
けげんな顔をするロバートに、サムはしどろもどろに説明する。
「あ、でも、エミルさんとアデルさんは、そう言う関係じゃ」
「いや、それは俺も知ってるって。
だけど例えばさ、ヒラの俺と姉御じゃ余計おかしいだろ。お前でもそれは同じだし」
「それは……うーん……そう……ですよね」
うなずきかけたサムに、アデルがこう提案する。
「いや、それよか1対3、エミルに1部屋、残りを俺たち、って分けた方が紳士的だろ」
「あ、……そーっスよね、そっちの方がいいっス、絶対」
ロバートは素直に納得したが――何故かサムはこの案に対しても、面食らった様子を見せた。
「えぇぇ!?」
「おいおい、待てよサム。どこも変じゃ無いだろ、今の案は? 男部屋と女部屋に分けようって話だろうが」
アデルにそう言われ、サムは目をきょろきょろさせ、もごもごとうなるが、どうやら反論の言葉が出ないらしい。
「あっ、あの、でも、……その、……そう、ですよね」
「……」
しゅんとなり、黙り込んでしまったサムを、エミルはじーっと眺めている。
その間にロバートが、マスターに声をかけようとした。
「決まりっスね。んじゃ……」
と、そこでエミルが口を開き、ロバートをさえぎる。
「マスター。部屋割りはそっちの赤毛と茶髪で1つ。それからメガネの子とあたしで1つ。よろしくね」
「……え?」
エミルの言葉に、アデルたち3人は揃って唖然となる。
「かしこまりました、ごゆっくりどうぞ。夕食は18時に、1階で出しますので」
「分かったわ。それじゃ後でね、アデル。それからロバートも」
その間にマスターが鍵を2つカウンターに置き、エミルは片方の鍵を受け取ると同時にサムの手を引いて、そのまま2階へ行ってしまった。
残されたアデルは、ロバートと顔を見合わせる。
「……ちょっと待て」
「いや、俺に言ったって」
「え、エミル、ま、まさか、あいつが、あんなのが、タイプなのか? アレがタイプだってことか?」
「分かんないっスよぉ、俺に言われたって」
「い、いや、違うよな? ほ、保護欲みたいな、子犬可愛がりたいみたいな、ソレ的なアレだよな? な? なっ? なあっ!?」
「だから分かんないっスってー……」
狼狽えるアデルをなだめつつ、ロバートはカウンターに置かれた鍵を受け取り、まだぶつぶつつぶやいている彼を引っ張るようにしつつ、2階へ向かった。

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ブログ「妄想の荒野」の矢端想さんに挿絵を描いていただきました。
ありがとうございます!
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