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    DETECTIVE WESTERN

    DETECTIVE WESTERN 6 ~ オールド・サザン・ドリーム ~ 15

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    ウエスタン小説、第15話。
    誰にも語られなかった懺悔。

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    15.
    「Thursday,12.27.1860.
     先生は北部連中の言動を受け、大層お怒りになっていた。そして私に大量の資金と兵士、さらには武器を集めるよう指示された。大変な役目を負わされたものだ。
     恐ろしくてたまらない。もし万が一、司法当局や政府権力が私を拘束した際、少しでもその責を逃れるために、日記を分けて書いておくことにする。

     Friday,1.11.1861.
     先生から密かに教えられたコネを使い、ヴェルヌなる男に接触する。
     聞けば非合法の武器ブローカーであるとか。彼に注文すれば、ミニエー銃だろうとナポレオン砲だろうと、何でも欲しいだけ揃えてくれると言う。
     これで武器調達に関してはどうにかなりそうだ。後は資金と兵士だ。

     Monday,1.14.1861.
     資金の方も目処が着きそうだ。
     先生を支持している会社や団体から、合計30万ドルにも及ぶ資金を調達できた。幸運なことに、昨日の講演会にて他にも多数、先生の主張に賛同して下さる方を獲得できたため、より多くの資金を確保できるだろう。
     早速、ヴェルヌ氏に注文の手紙を送る。

     Tuesday,1.22.1861.
     資金に続き、兵隊に関しても確保できた。
     これもまた、先生の持っていた非合法ルートでの話となったが、シャタリーヌと言う男と会い、話ができた。
     あまり詳しくは話せなかったが(いや、恐ろしくて聞くことができなかったのだ)、どうやら彼は合衆国に対する地下組織を結成しているものの、武器と資金の不足に悩んでいるようだった。
     つまり私が集めてきた資金と、それを使って購入した武器を彼の組織に貸与し、その代わりに、彼の組織に合衆国で暴れてもらう。そう言う形で取引がまとまった。
     だが、嫌な予感が残る。あのシャタリーヌと言う男が、どうにも信用し切れないのだ。先生の紹介だから取引に応じたものの、人をぬらぬらと舐め回すようなあの目を思い出す度、全身に怖気が走るのだ。

     Saturday,2.2.1861.
     完全にはめられた! ヴェルヌとシャタリーヌはつながっていたのだ。
     かき集めた資金110万ドルは消えた。武器も届かない。300人は来ると言っていた兵士も、一人も私の前に現れなかった。
     これを知った先生は憤慨し、先程倒れられてしまった。医師の話では、今夜が峠だと言う。
     何と言うことだ! まさか「だまされて110万ドルを失いました」などと、支援者に弁解できるはずも無い。
     これで私の政治生命は終わりだ。それどころか、今世紀最大の横領犯として投獄されることになるだろう。

     ふと思ったが、もしも先生がこのまま亡くなったとしたら、一体どうなるだろうか?
     110万ドルが消えたことも、取引のことも、そのすべてを知っているのは私一人になるではないか。
     となれば「私は何も知らなかった」、「先生の裁量で110万がどこかに運用されたのだ」と言い張れば、事情を知らぬ皆が私を責めようはずも無い。
     そもそも先生には、これまで散々と、ひどい思いをさせられてきたのだ。この際、先生に罪をなすりつけて

     いや、そんなことは許されない。

     しかし、私の手には余る。やはり

     駄目だ!

     だが、

     やはり

     ああ、どうすればいいのだろうか。運を天に任せるしか無いのか。
     もしも本当に今夜、先生が亡くなるのならば、それは神が私ではなく、先生に対して罰を下したのだと考えよう。私はこの件を誰にも語らず、闇に葬ることにする。
     だがもし、神が先生を生かそうとされたのならば、罪は私にあるのだと考えよう。もしそうなれば、私は正直にすべてを話し、罪を悔いることにしよう」



     読み終えたところで、スティルマン議員は元々血色の悪い顔を、さらに青ざめさせていた。
    「何と言うことだ……! 伯父がそんな、下劣なことを……!」
     そしてもう一人――エミルもまた、真っ青な顔で立ちすくんでいた。
    「……」
     すべてが凍りついたような状況の中、アデルはどうしていいか分からず、日記を握りしめることしかできなかった。

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    注釈。
    ミニエー銃もナポレオン砲も、南北戦争で広く使われた銃火器。
    特にミニエー銃に関しては、南軍に配備されていた方が、性能が優れていたとか。
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