DETECTIVE WESTERN
DETECTIVE WESTERN 7 ~ 消えた鉄道王 ~ 2
ウエスタン小説、第2話。
機関車バカ、ふたたび。
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2.
「よーっす、お久しぶり」
応接室に入るなり、あごひげの男からフランクに挨拶され、アデルは面食らった。
「え、あ、……お、お久しぶり?」
「なんだよ、俺の顔忘れたのか? つれないねぇ」
「えーと……」
アデルは記憶をたどり、そしてようやく、相手の名前を思い出した。
「……あ! そうだ、ロドニー! ロドニー・リーランド! 機関車バ、……機関車ギーク(オタク)の」
「そうそう、俺、俺」
そこでようやく、アデルはロドニーと握手を交わした。
「いや、久しぶり過ぎてマジで忘れてた。悪いな」
「いいってことよ。もうあれから、半年は過ぎてるし」
「いや、もっとだぜ」
「ありゃ、そうだったか? いやぁ、何しろ引きこもってると、新聞もろくに読まなくなっちまうからなぁ」
と、アデルよりも先に応接室に来ていたパディントン局長が、穏やかな口調でロドニーに尋ねる。
「それでリーランドさん、本日はどのようなご用件で、当探偵局にいらっしゃったのでしょうか?」
「ああ、そうだった。
いやさ、おたくら探偵さんだろ? ちょっと依頼したいんだわ」
「依頼? 機関車関係か?」
そう尋ね返したアデルに、ロドニーは首を傾げながら応じる。
「まあ、そっち関係と言えばそう言えるかな」
「何だよ? 機関車を時速88マイルまで加速させたいだとか言うんじゃないだろうな」
「んなことお前さんたちに頼むかよ。そんなノウハウ聞くなら探偵局じゃなく、石炭売りか鍛冶屋にでも相談するっつの。
そうじゃなくて鉄道関係、つーか鉄道会社関係だな」
「鉄道会社?」
おうむ返しに尋ね返し、今度はアデルが首を傾げる。
「アンタ、廃業したって言ってたじゃないか。再開するのか?」
「いや、そう言うつもりじゃない。俺じゃなく、俺の恩師に関わる依頼なんだ。
10年前に失踪した、ボールドロイドって男を探して欲しい」
「ボールドロイド……」
静かに話を聞いていた局長が、口を挟む。
「10年前に失踪した、アーサー・ボールドロイド氏のことでしょうか?」
「え? あ、ああ、そうだ。知ってるのか?」
ぎょっとした顔をしているロドニーに、局長はにっこり笑って答える。
「合衆国有数の実業家でしたからな。今も天才経営者と絶賛する者は、決して少なくはないでしょう」
「そう、その通りだ。そして、だからこそ今、探すべき男なんだ」
「ふむ。……失礼、少々席を外します」
そこで突然、局長は席を立ち、応接室を離れる。
「ん、ん?」
面食らった様子のロドニーに対し、アデルは「ああ」と声を上げる。
「きっと局長、新聞を取りに行ったんだな」
「新聞? ……いや、そうか。まあ、報道もされてるよな、あれだけの騒ぎじゃ」
アデルの予想通り、程無くして局長は、数日前の新聞を手に戻って来た。
「察するにスチュアート・ボールドロイド氏の件ですな?」
「ああ、そうだ。さっき言ったA・ボールドロイド氏の息子で、現W&B鉄道の最高経営責任者だ。
そして俺の、鉄道関係の師匠でもあり、かけがえのない友人でもある」
そう言ったロドニーの顔は、暗く沈んだものとなっていた。
「頼む、ボールドロイド氏を何としてでも見つけ出して、スチュアートさんを救ってくれ。
あの人は今、とんでもなく困ってるんだ」
ロドニーは局長の持っている新聞を指差し、ついには顔を覆ってしまった。
「W&B鉄道 アトランティック海運買収計画を断念 経営破綻のおそれありとの意見も」
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機関車バカ、ふたたび。
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2.
「よーっす、お久しぶり」
応接室に入るなり、あごひげの男からフランクに挨拶され、アデルは面食らった。
「え、あ、……お、お久しぶり?」
「なんだよ、俺の顔忘れたのか? つれないねぇ」
「えーと……」
アデルは記憶をたどり、そしてようやく、相手の名前を思い出した。
「……あ! そうだ、ロドニー! ロドニー・リーランド! 機関車バ、……機関車ギーク(オタク)の」
「そうそう、俺、俺」
そこでようやく、アデルはロドニーと握手を交わした。
「いや、久しぶり過ぎてマジで忘れてた。悪いな」
「いいってことよ。もうあれから、半年は過ぎてるし」
「いや、もっとだぜ」
「ありゃ、そうだったか? いやぁ、何しろ引きこもってると、新聞もろくに読まなくなっちまうからなぁ」
と、アデルよりも先に応接室に来ていたパディントン局長が、穏やかな口調でロドニーに尋ねる。
「それでリーランドさん、本日はどのようなご用件で、当探偵局にいらっしゃったのでしょうか?」
「ああ、そうだった。
いやさ、おたくら探偵さんだろ? ちょっと依頼したいんだわ」
「依頼? 機関車関係か?」
そう尋ね返したアデルに、ロドニーは首を傾げながら応じる。
「まあ、そっち関係と言えばそう言えるかな」
「何だよ? 機関車を時速88マイルまで加速させたいだとか言うんじゃないだろうな」
「んなことお前さんたちに頼むかよ。そんなノウハウ聞くなら探偵局じゃなく、石炭売りか鍛冶屋にでも相談するっつの。
そうじゃなくて鉄道関係、つーか鉄道会社関係だな」
「鉄道会社?」
おうむ返しに尋ね返し、今度はアデルが首を傾げる。
「アンタ、廃業したって言ってたじゃないか。再開するのか?」
「いや、そう言うつもりじゃない。俺じゃなく、俺の恩師に関わる依頼なんだ。
10年前に失踪した、ボールドロイドって男を探して欲しい」
「ボールドロイド……」
静かに話を聞いていた局長が、口を挟む。
「10年前に失踪した、アーサー・ボールドロイド氏のことでしょうか?」
「え? あ、ああ、そうだ。知ってるのか?」
ぎょっとした顔をしているロドニーに、局長はにっこり笑って答える。
「合衆国有数の実業家でしたからな。今も天才経営者と絶賛する者は、決して少なくはないでしょう」
「そう、その通りだ。そして、だからこそ今、探すべき男なんだ」
「ふむ。……失礼、少々席を外します」
そこで突然、局長は席を立ち、応接室を離れる。
「ん、ん?」
面食らった様子のロドニーに対し、アデルは「ああ」と声を上げる。
「きっと局長、新聞を取りに行ったんだな」
「新聞? ……いや、そうか。まあ、報道もされてるよな、あれだけの騒ぎじゃ」
アデルの予想通り、程無くして局長は、数日前の新聞を手に戻って来た。
「察するにスチュアート・ボールドロイド氏の件ですな?」
「ああ、そうだ。さっき言ったA・ボールドロイド氏の息子で、現W&B鉄道の最高経営責任者だ。
そして俺の、鉄道関係の師匠でもあり、かけがえのない友人でもある」
そう言ったロドニーの顔は、暗く沈んだものとなっていた。
「頼む、ボールドロイド氏を何としてでも見つけ出して、スチュアートさんを救ってくれ。
あの人は今、とんでもなく困ってるんだ」
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