DETECTIVE WESTERN
DETECTIVE WESTERN 7 ~ 消えた鉄道王 ~ 4
ウエスタン小説、第4話。
敵を制するには、まず味方から。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
4.
「流石と言うか、阿漕(あこぎ)と言うか、……ね」
U州へ向かう列車の中で経緯を聞いたエミルは肩をすくめ、こう尋ねてきた。
「で、あたしは今回もあんたに同行するわけね」
「ああ、そこはいつも通りだ」
「その点は別に、どうこう言うつもりは無いわ。
でもなんでまた、コイツを連れてくの?」
そう言って、エミルは対面の席で眠りこけているロバートを指差す。
「いくらもう探す相手が見付かってて、後は連れてくだけって言っても、2人いれば十分でしょ?」
「理由は2つだそうだ」
アデルは頭をかきながら、説明する。
「1つは、日当稼ぎだ。今回の条件、『探偵1人につき1日1ドル』だからな。
3人で向かえば1日3ドル、必要経費を引いたとしても1日で2ドル近いプラスになる。U州に行って帰ってってだけでも2、30ドルの儲けってわけさ」
「セコいわね」
「実にそう思うよ。で、理由の2つめは、『エクスキューズのため』だってさ」
「つまり『未熟な調査員がいたせいで、調査に数日を要しました』って言い訳したいってこと?」
「その分、増えるしな。日数が」
「呆れた」
本当に呆れた顔を見せるエミルに、アデルはニヤニヤと笑いかけた。
「いいじゃないか。俺たちにしても、遊んで給料もらえるようなもんだ」
「前回の仕事だってそんなに大した仕事してないじゃない。
こんなことばっかりやってたら勘が鈍って、いざって言う時困るわよ」
「その点は同感かな。俺にしたって、次はもうちょい歯ごたえのある仕事を希望したいね」
当たり障りのない返事をダラダラと返しながら、アデルは局長と交わしていた「密談」を思い出していた。
「そして3つ目の理由だが、これは私と君だけの話にしておいてくれ」
局長から2つの呆れた理由を聞かされていたアデルは、トゲトゲしく返した。
「なんです? 他にどんな儲け話が?」
「そうじゃあない。言い換えよう、これはエミル嬢に聞かせたくない話だ」
「……って言うと?」
真面目な顔になった局長を見て、アデルも背筋を正す。
「しばらく君に随行させることで、エミル嬢を探偵局から遠ざけておきたい。私の調べ物を、彼女に悟らせないためにね」
「調べ物……。こないだ言ってた、シャタリーヌとヴェルヌの?」
「そうだ。鋭いエミル嬢なら、私が何かしらコソコソやっていて、気付かないと言うことは恐らくあるまい。事実、彼女はそれとなく、私や君の動向を伺っている節があった。
君も覚えがあるんじゃあないか?」
そう問われ、アデルはここ数週間のエミルの様子を振り返る。
「……そうですね。確かに最近、話したりメシ食ったりする機会が多いですね」
「うむ。これではうかつに調査すれば、彼女に悟られてしまうかも知れん。
そうなった場合、我々にとってあまりいい結果には結びつくまい。以前に局を抜けようとしたこともあるからね」
「なるほど。……じゃあ、ロバートのことは?」
尋ねられ、局長は肩をすくめる。
「エミル嬢は鋭いと言っただろう? このタイミングで君と彼女だけをU州へ追いやれば、彼女は私の真意に気付くかも知れん。
それをごまかすには、もっと『らしい』名目を聞かせてやった方がいい。それがさっきの『儲け話』だ。
彼女には私が『カネにがめつくてセコい小悪党』であると、そう思わせておくんだ」
「……承知しました」
「どうしたの?」
エミルに尋ねられ、アデルは我に返る。
「ん? 何がだ?」
「ボーッとしてたけど、考え事でも?」
「ああ……。まあ、そんなトコだ。帰ったらジョーンズの店のコテージパイが食いたいなーって」
「アハハ……、そんなこと?
ご飯のことでそんな、眉間にしわ寄せるほど考え事するの? 意外と食いしん坊なのね、あんた」
「へへ……、ほっとけ。ジャガイモ料理好きなんだよ、俺は」
アデルは適当にごまかし、3つ目の理由について思い返すのをやめた。
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敵を制するには、まず味方から。
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「流石と言うか、阿漕(あこぎ)と言うか、……ね」
U州へ向かう列車の中で経緯を聞いたエミルは肩をすくめ、こう尋ねてきた。
「で、あたしは今回もあんたに同行するわけね」
「ああ、そこはいつも通りだ」
「その点は別に、どうこう言うつもりは無いわ。
でもなんでまた、コイツを連れてくの?」
そう言って、エミルは対面の席で眠りこけているロバートを指差す。
「いくらもう探す相手が見付かってて、後は連れてくだけって言っても、2人いれば十分でしょ?」
「理由は2つだそうだ」
アデルは頭をかきながら、説明する。
「1つは、日当稼ぎだ。今回の条件、『探偵1人につき1日1ドル』だからな。
3人で向かえば1日3ドル、必要経費を引いたとしても1日で2ドル近いプラスになる。U州に行って帰ってってだけでも2、30ドルの儲けってわけさ」
「セコいわね」
「実にそう思うよ。で、理由の2つめは、『エクスキューズのため』だってさ」
「つまり『未熟な調査員がいたせいで、調査に数日を要しました』って言い訳したいってこと?」
「その分、増えるしな。日数が」
「呆れた」
本当に呆れた顔を見せるエミルに、アデルはニヤニヤと笑いかけた。
「いいじゃないか。俺たちにしても、遊んで給料もらえるようなもんだ」
「前回の仕事だってそんなに大した仕事してないじゃない。
こんなことばっかりやってたら勘が鈍って、いざって言う時困るわよ」
「その点は同感かな。俺にしたって、次はもうちょい歯ごたえのある仕事を希望したいね」
当たり障りのない返事をダラダラと返しながら、アデルは局長と交わしていた「密談」を思い出していた。
「そして3つ目の理由だが、これは私と君だけの話にしておいてくれ」
局長から2つの呆れた理由を聞かされていたアデルは、トゲトゲしく返した。
「なんです? 他にどんな儲け話が?」
「そうじゃあない。言い換えよう、これはエミル嬢に聞かせたくない話だ」
「……って言うと?」
真面目な顔になった局長を見て、アデルも背筋を正す。
「しばらく君に随行させることで、エミル嬢を探偵局から遠ざけておきたい。私の調べ物を、彼女に悟らせないためにね」
「調べ物……。こないだ言ってた、シャタリーヌとヴェルヌの?」
「そうだ。鋭いエミル嬢なら、私が何かしらコソコソやっていて、気付かないと言うことは恐らくあるまい。事実、彼女はそれとなく、私や君の動向を伺っている節があった。
君も覚えがあるんじゃあないか?」
そう問われ、アデルはここ数週間のエミルの様子を振り返る。
「……そうですね。確かに最近、話したりメシ食ったりする機会が多いですね」
「うむ。これではうかつに調査すれば、彼女に悟られてしまうかも知れん。
そうなった場合、我々にとってあまりいい結果には結びつくまい。以前に局を抜けようとしたこともあるからね」
「なるほど。……じゃあ、ロバートのことは?」
尋ねられ、局長は肩をすくめる。
「エミル嬢は鋭いと言っただろう? このタイミングで君と彼女だけをU州へ追いやれば、彼女は私の真意に気付くかも知れん。
それをごまかすには、もっと『らしい』名目を聞かせてやった方がいい。それがさっきの『儲け話』だ。
彼女には私が『カネにがめつくてセコい小悪党』であると、そう思わせておくんだ」
「……承知しました」
「どうしたの?」
エミルに尋ねられ、アデルは我に返る。
「ん? 何がだ?」
「ボーッとしてたけど、考え事でも?」
「ああ……。まあ、そんなトコだ。帰ったらジョーンズの店のコテージパイが食いたいなーって」
「アハハ……、そんなこと?
ご飯のことでそんな、眉間にしわ寄せるほど考え事するの? 意外と食いしん坊なのね、あんた」
「へへ……、ほっとけ。ジャガイモ料理好きなんだよ、俺は」
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