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    DETECTIVE WESTERN

    DETECTIVE WESTERN 7 ~ 消えた鉄道王 ~ 5

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    ウエスタン小説、第5話。
    局長秘蔵の名士録。

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    5.
     と、今まで軽くいびきをかいて眠っていたロバートが、ビクッと体を震わせ、「……んあ?」と間抜けな声を上げた。
    「むにゃ……、あれ? ……夢か」
    「夢? 何見てたのよ」
     尋ねたエミルに、ロバートは目をこすりながら答える。
    「いや……、何て言うか、……まあ、子供ん頃の夢っス。ばーちゃん家で鶏肉とポルチーニ茸のトマト煮とか、……いや、何でも無いっス」
    「……ぷっ」
     顔を赤らめたロバートを見て、エミルはクスクスと笑う。
    「何よあんたたち、食べ物のことばっかりね」
    「あんたたち?」
     きょとんとするロバートに、アデルは「なんでもねえよ」とさえぎろうとしたが、エミルがさらりと返す。
    「コイツさっき真剣な顔してたから、何考えてんのって聞いたら、『コテージパイ食いたい』って言ったのよ」
    「ぷ、……あはは、何スかそれ、ひゃひゃ……」
     笑い転げるロバートに、アデルは苦い顔をするしか無かった。
     と、ロバートが一転、真面目な顔になる。
    「あ、そう言や先輩」
    「何だよ?」
    「今回の依頼の話聞いてからずーっと気になってたんスけど、俺たちが探そうとしてるボールドロイドって元社長、もう局長が見付けてるんスよね?」
    「そうだ。聞いた話じゃ、会社辞めたところから今住んでる町まで全部、足取りはつかんでたらしい」
    「じゃ、なんですぐ、その、引き止めるとか何とかしなかったんスかね?」
     そう尋ねたロバートに、アデルが肩をすくめる。
    「お前は近所のじーさんが家族に黙ってこそっと酒飲みに行ったからって、聞かれてもいないのにわざわざ、じーさんの家族に告げ口しに行くのか?」
    「……あー、まあ、そりゃしないっスね」
    「そう言うもんだろ? 今まで誰も探そうとするヤツがいなかったから、誰にも言わなかったってだけの話だ。
     局長にとっても、直接的にゃ全然関係ない相手だからな。わざわざ声かけたり、引き止めたりする理由は無い。
     だけどいつか、彼を必要とする人間が現れるかも知れない。局長はそう言うヤツらをピックアップして、居場所を控えてるってワケさ」
    「へぇー」
     感心したような声を上げ――続いて、ロバートは首を傾げた。
    「……って言うと、他にもそう言うヤツがいるってことっスか?」
    「ま、詳しく聞いたワケじゃないが、局長の性格と手際だ。何十人と控えて、手帳なり局長室の資料棚なりに収めてるんだろうさ」
    「ありそうっスねぇ」
     アデルの話に、ロバートはうんうんとうなずくばかりだった。

     と、エミルが窓に目を向け、そのままトントンと、アデルの膝を叩く。
    「……?」
     何かあるのかと、ロバートは窓の外に目を向けるが、特に目を引くようなものも見当たらない。
    「どしたんスか?」
    「……」
     エミルの方に向き直ったところで、いつの間にかアデルが、手帳を膝に乗せていることに気付く。
     そこにはこう書かれていた。
    《普通に話してろ 後ろは絶対見るな》
    「へ? ……っあー、えーと」
     声を上げ、後ろを振り返りかけるが、ロバートは慌ててごまかす。
    「な、何かありました?」
    「ええ、もう通り過ぎちゃったけど」
     そう返しつつ、エミルも自分の手帳に書き付ける。
    《客車の端と 真ん中右側 変なのがいる》
     続いて、アデルも手帳に書き足す。
    《端にいる二人組 揃って高そうなスーツに偉そうなベストと気取ったハット帽 おまけにライトニング持ってる どう見ても捜査局のヤツらだ》
    「そっ、……っスか」
     どうにか声を落ち着けつつ、ロバートは当たり障りの無い会話に腐心する。
     その間にも、エミルとアデルは手帳で会話を続けている。
    《なんで捜査局のヤツらが?》
    《何とも言えないわね 偶然かも知れない
     でもあいつら チラチラこっち見てるわ 無関係じゃなさそう》
    《となると あいつらもボールドロイドを?》
    《かもね》
    《で、真ん中にいる三人組 背中向けてる2人はカタギだろう そこそこのスーツとキャップ帽 東部にいる普通の勤め人って雰囲気だ
     だがその対面にいるヤツ あれは違うな》
    《同感 って言うか知ってるわ》
    「え?」
     そこでアデルが声を漏らし、慌てた様子で取り繕う。
    「……いやー、ははは。ロバート、お前さん今、すげー顔で欠伸してたな。眠いなら寝てていいぜ?」
    「ちょ、子供扱いしないで下さいって」
     ロバートがうまく応じたところで、筆談を再開する。
    《知り合いか?》
    《昔のね 2、3回 一緒に賞金首追ってたことがあるわ》
    《賞金稼ぎか》
    《当たり 名前はデズモンド・キャンバー 自称『銀旋風のデズ』》
    《アホな通り名だな》
    《同感 誰もそんな呼び方しなかったわ あたしも『空回りのデズ』ってからかってた》
    《とにかく問題なのは》
     のんきそうな表情を浮かべて見せつつ、アデルはこう続けた。
    《そいつらも捜査局のヤツらも 偶然ここに居合わせたのか? それとも俺たちに関係があるのか だ》
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