DETECTIVE WESTERN
DETECTIVE WESTERN 7 ~ 消えた鉄道王 ~ 6
ウエスタン小説、第6話。
「空回り」。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
6.
エミルたちの筆談に、ロバートもたどたどしく続く。
《おれがさぐり入れて気ましょうか》
《『気』じゃなくて『来』だアホ
チラチラ見てきてる以上 俺たちは少なからずマークされてるはずだ そんなとこにノコノコ忍び寄ったら 即ボコられるぞ》
《じゃあ 池になんかいい方方が?》
《『池』じゃなくて『他』、『方方』じゃなくて『方法』
いい考えがあるわ》
そう返し、エミルは何かを書き綴った。
1時間後、列車はとある駅に停車した。
それと同時に、エミルたちは席を立つ。
「……!」
それを見て、二組の男たちはガタガタと立ち上がり、それぞれ窓の外に目をやる。
「……いや、違う」
と、エミルにデズと呼ばれていた銀髪の男が、エミルたちのいた席を見て、首を横に振る。
「茶髪の若僧が残ってる。かばんもだ。用足しにでも行ったんだろう」
「そ、そうですか」
デズの言葉に、彼に同行していた男たちは座り直す。それを見て、捜査局員と思しき者たちも腰を下ろした。
が――出発の時間になっても、エミルたちは席に戻って来ない。
「……チッ、まさか!」
デズは勢い良く立ち上がり、席に一人残っていたロバートのすぐ横まで迫り、彼の胸ぐらをぐいっとつかんで立ち上がらせる。
「うげっ、なっ、なんスか!?」
苦しそうな表情を浮かべ、顔を真っ赤にするロバートに、デズが怒鳴りつける。
「てめえ、囮になったな!? ミヌーはどこだッ!」
「みっ、見りゃ、分かるっしょ? ここにゃ、いないっス、って」
「……クソがッ!」
デズはロバートを突き飛ばし、同行していた男たちに怒鳴る。
「おい、出るぞ! だまされた! ミヌーたちはここで降りてやがる!」
「え、ちょっ」
「も、もう動き始めて……」「うるせえ!」
うろたえる男たちに、デズは怒鳴り返す。
「てめえら、ボールドロイドの手がかり見失ってもいいってのか!? どうなんだ、ああ!?」
「い、いや、そりゃ」
「それは、その」
「いいから出るぞ!」
男たちがまごついている間にデズは窓を開け、外へと飛び出す。
残された男たちも、奥にいた捜査局員たちも、慌ててそれに付いて行った。
デズたちが下車して、3分ほど後――。
「どうだった?」
客車の扉を開け、エミルたちがロバートのいる席へと戻ってきた。
「どうもこうも。首絞められてぎゃーぎゃー怒鳴られたっスよ」
「ま、そーゆーヤツなのよ。だから手を切ったんだけどね」
「ちなみに、今までどこにいたんスか? あいつら、完璧に列車降りたと思ってたみたいっスけど」
「貨物車に隠れてたのよ。で、動き出してから屋根伝いに、ね。
それでロバート、あいつら今回の件に関係しそうなこと、何か言ってなかった?」
エミルに問われ、ロバートはこくりとうなずく。
「言ってましたっス。デズってヤツが、『ボールドロイドの手がかり見失ってもいいのか』っつって」
「なるほどな」
それを聞いて、アデルもうなずき返す。
「捜査局のヤツらもいないってことは、目的は同じってことだろうな。
だが妙なのは、何故捜査局もデズたちも、ボールドロイド氏を探してるのか、だ」
「どこかの駅で電話借りて、サムのヤツに聞いてみたらどうっスか?」
ロバートがそう提案するが、エミルは肩をすくめる。
「捜査局がサムじゃなく、あんなのを寄越して尾行させるってことは、捜査局はあたしたちに、自分たちがボールドロイド氏を探してることを知らせたくないのよ。もしその辺の話をオープンにしてたら、最初からサムを寄越すでしょうし。
となれば、サムが何か知らされてるって可能性は、まず無いわ。聞いても電話代の無駄でしょうね」
「うーん……、そうっスよねぇ」
「とりあえずあいつらのことは、今は放っておきましょ。判断材料が無いのに判断したって、ろくなことにならないし」
そう返したエミルに、アデルも賛成する。
「だな。
ま、目障りなのがいなくなったんだ。後は目的地まで、のんびりしてりゃいいさ」
アデルは駅で買ってきたらしい新聞を広げ、読み始めた。
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「空回り」。
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6.
エミルたちの筆談に、ロバートもたどたどしく続く。
《おれがさぐり入れて気ましょうか》
《『気』じゃなくて『来』だアホ
チラチラ見てきてる以上 俺たちは少なからずマークされてるはずだ そんなとこにノコノコ忍び寄ったら 即ボコられるぞ》
《じゃあ 池になんかいい方方が?》
《『池』じゃなくて『他』、『方方』じゃなくて『方法』
いい考えがあるわ》
そう返し、エミルは何かを書き綴った。
1時間後、列車はとある駅に停車した。
それと同時に、エミルたちは席を立つ。
「……!」
それを見て、二組の男たちはガタガタと立ち上がり、それぞれ窓の外に目をやる。
「……いや、違う」
と、エミルにデズと呼ばれていた銀髪の男が、エミルたちのいた席を見て、首を横に振る。
「茶髪の若僧が残ってる。かばんもだ。用足しにでも行ったんだろう」
「そ、そうですか」
デズの言葉に、彼に同行していた男たちは座り直す。それを見て、捜査局員と思しき者たちも腰を下ろした。
が――出発の時間になっても、エミルたちは席に戻って来ない。
「……チッ、まさか!」
デズは勢い良く立ち上がり、席に一人残っていたロバートのすぐ横まで迫り、彼の胸ぐらをぐいっとつかんで立ち上がらせる。
「うげっ、なっ、なんスか!?」
苦しそうな表情を浮かべ、顔を真っ赤にするロバートに、デズが怒鳴りつける。
「てめえ、囮になったな!? ミヌーはどこだッ!」
「みっ、見りゃ、分かるっしょ? ここにゃ、いないっス、って」
「……クソがッ!」
デズはロバートを突き飛ばし、同行していた男たちに怒鳴る。
「おい、出るぞ! だまされた! ミヌーたちはここで降りてやがる!」
「え、ちょっ」
「も、もう動き始めて……」「うるせえ!」
うろたえる男たちに、デズは怒鳴り返す。
「てめえら、ボールドロイドの手がかり見失ってもいいってのか!? どうなんだ、ああ!?」
「い、いや、そりゃ」
「それは、その」
「いいから出るぞ!」
男たちがまごついている間にデズは窓を開け、外へと飛び出す。
残された男たちも、奥にいた捜査局員たちも、慌ててそれに付いて行った。
デズたちが下車して、3分ほど後――。
「どうだった?」
客車の扉を開け、エミルたちがロバートのいる席へと戻ってきた。
「どうもこうも。首絞められてぎゃーぎゃー怒鳴られたっスよ」
「ま、そーゆーヤツなのよ。だから手を切ったんだけどね」
「ちなみに、今までどこにいたんスか? あいつら、完璧に列車降りたと思ってたみたいっスけど」
「貨物車に隠れてたのよ。で、動き出してから屋根伝いに、ね。
それでロバート、あいつら今回の件に関係しそうなこと、何か言ってなかった?」
エミルに問われ、ロバートはこくりとうなずく。
「言ってましたっス。デズってヤツが、『ボールドロイドの手がかり見失ってもいいのか』っつって」
「なるほどな」
それを聞いて、アデルもうなずき返す。
「捜査局のヤツらもいないってことは、目的は同じってことだろうな。
だが妙なのは、何故捜査局もデズたちも、ボールドロイド氏を探してるのか、だ」
「どこかの駅で電話借りて、サムのヤツに聞いてみたらどうっスか?」
ロバートがそう提案するが、エミルは肩をすくめる。
「捜査局がサムじゃなく、あんなのを寄越して尾行させるってことは、捜査局はあたしたちに、自分たちがボールドロイド氏を探してることを知らせたくないのよ。もしその辺の話をオープンにしてたら、最初からサムを寄越すでしょうし。
となれば、サムが何か知らされてるって可能性は、まず無いわ。聞いても電話代の無駄でしょうね」
「うーん……、そうっスよねぇ」
「とりあえずあいつらのことは、今は放っておきましょ。判断材料が無いのに判断したって、ろくなことにならないし」
そう返したエミルに、アデルも賛成する。
「だな。
ま、目障りなのがいなくなったんだ。後は目的地まで、のんびりしてりゃいいさ」
アデルは駅で買ってきたらしい新聞を広げ、読み始めた。
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