DETECTIVE WESTERN
DETECTIVE WESTERN 7 ~ 消えた鉄道王 ~ 11
ウエスタン小説、第11話。
衰えぬ推理力。
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11.
デズたち3人をアデルたちに囲ませ、アーサー老人はデズに再度尋ねた。
「君が依頼されたのは、どんな内容だ? 私の捜索かね?」
「いや、暗殺だ。あんたを殺せと」
それを聞いて、アデルが慌てて尋ねる。
「ちょ、ちょっと待てよ!? 暗殺だと!?」
「黙っていてくれんかね、赤毛君」
アデルに釘を刺し、アーサー老人は詰問を続ける。
「依頼者は?」
「ジョン・デイビス。東部で鉄道関連の会社を経営してるって話だった」
「偽名臭いな。恐らくはカットアウト(本当の依頼者を隠すための代理人)だろう。言わずともいい身元をわざわざ話したのも妙だ。十中八九、嘘だろう。
帯同している二人は何者かね? 君の同業者か? それとも暗殺の見届人か?」
「見届人だ。デイビス氏から連れて行くようにと」
「ふむ。ではキャンバー君、そのジョン某から、何故私を暗殺して欲しいと言われた?」
「何でも、最近のW&Bの件だか何だかで、あんたが復帰するようなことがあったら困るからって」
「それも妙な話だ。私が復帰することを懸念するのならば、それこそW&B退任のすぐ後にでも、手を打ちに来ようと言うものだ。あれから何年も経った今に比べれば、退任直後の方が私の足跡もいくらか残っていただろうし、より容易に探し得るだろう。
W&Bのゴタゴタなんぞは、方便に過ぎん。本当の目的は私そのものにあるのだろう。その私に接触してこようと言う人間が現れたからこそ、黒幕は慌ててそのジョン某に命じ、君へ依頼させたのだろう」
「って、言うと?」
きょとんとするデズに、アーサー老人は続けてこう尋ねる。
「君が依頼を受けたのは、今月の14日と言うところだろう?」
「な、何で知ってんだ?」
ぎょっとした顔を見せたデズに、アーサー老人はニヤッと、得意気に笑って返す。
「知りはしない。初歩的な推理だよ。
本格的にW&Bの不調が報じられたのが今月12日だ。パディントン探偵局が私の息子の近くにいたであろうリーランド氏から依頼を受けたのはその1~2日後だろうが、同氏の動きを黒幕がかねてより把握していたとすれば、同氏が息子の不手際を耳にしてどう動くかも予測が付いていただろうし、どんな依頼を探偵局にするかも、容易に推理し得るだろう。
即ち『息子を元気付けるべく、父親のアーサー・ボールドロイドを探して欲しい』、と言う依頼をな」
「そ、それが、……どうした?」
何が何だか分からない、と言いたげな顔をしているデズに、アーサー老人は呆れた目を向ける。
「そんな依頼がF、即ちパディントン局長に入れば、その黒幕はこう考えるはずだ。『あのパディントン局長の手際ならば、この数年全く足跡のつかめなかったアーサー・ボールドロイドを、極めて容易に、かつ、迅速に発見し得るだろう』と。
それを見越して黒幕は君をこの西部に向かわせ、この探偵諸君を追わせることで、私の居所を突き止めようとしたのだ。違うかね?」
「い、いや、まあ、……確かに、依頼された時に、そう入れ知恵されたけど」
「そうだろうな。そこまでは容易に推理し得る」
こくこくとうなずいたデズにくるりと背を向け、アーサー老人は帽子越しに頭をかきつつ、推察を続ける。
「しかし私の目から見ても、そして君の評判からしても――奇跡的に私のところまで行き着いたとして、そこから私の暗殺が可能かどうか? それについては確実に成し得ると言う確証は持てない。事実、君はこうして拘束されてしまっているわけだからな。
無論、そんなことは黒幕も懸念しているだろうし、ましてや本当に失敗してしまうなど、彼にとってはあってはならない事態だ。となれば……」
そこまで語ったところで――銃声が、荒野にこだました。
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衰えぬ推理力。
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11.
デズたち3人をアデルたちに囲ませ、アーサー老人はデズに再度尋ねた。
「君が依頼されたのは、どんな内容だ? 私の捜索かね?」
「いや、暗殺だ。あんたを殺せと」
それを聞いて、アデルが慌てて尋ねる。
「ちょ、ちょっと待てよ!? 暗殺だと!?」
「黙っていてくれんかね、赤毛君」
アデルに釘を刺し、アーサー老人は詰問を続ける。
「依頼者は?」
「ジョン・デイビス。東部で鉄道関連の会社を経営してるって話だった」
「偽名臭いな。恐らくはカットアウト(本当の依頼者を隠すための代理人)だろう。言わずともいい身元をわざわざ話したのも妙だ。十中八九、嘘だろう。
帯同している二人は何者かね? 君の同業者か? それとも暗殺の見届人か?」
「見届人だ。デイビス氏から連れて行くようにと」
「ふむ。ではキャンバー君、そのジョン某から、何故私を暗殺して欲しいと言われた?」
「何でも、最近のW&Bの件だか何だかで、あんたが復帰するようなことがあったら困るからって」
「それも妙な話だ。私が復帰することを懸念するのならば、それこそW&B退任のすぐ後にでも、手を打ちに来ようと言うものだ。あれから何年も経った今に比べれば、退任直後の方が私の足跡もいくらか残っていただろうし、より容易に探し得るだろう。
W&Bのゴタゴタなんぞは、方便に過ぎん。本当の目的は私そのものにあるのだろう。その私に接触してこようと言う人間が現れたからこそ、黒幕は慌ててそのジョン某に命じ、君へ依頼させたのだろう」
「って、言うと?」
きょとんとするデズに、アーサー老人は続けてこう尋ねる。
「君が依頼を受けたのは、今月の14日と言うところだろう?」
「な、何で知ってんだ?」
ぎょっとした顔を見せたデズに、アーサー老人はニヤッと、得意気に笑って返す。
「知りはしない。初歩的な推理だよ。
本格的にW&Bの不調が報じられたのが今月12日だ。パディントン探偵局が私の息子の近くにいたであろうリーランド氏から依頼を受けたのはその1~2日後だろうが、同氏の動きを黒幕がかねてより把握していたとすれば、同氏が息子の不手際を耳にしてどう動くかも予測が付いていただろうし、どんな依頼を探偵局にするかも、容易に推理し得るだろう。
即ち『息子を元気付けるべく、父親のアーサー・ボールドロイドを探して欲しい』、と言う依頼をな」
「そ、それが、……どうした?」
何が何だか分からない、と言いたげな顔をしているデズに、アーサー老人は呆れた目を向ける。
「そんな依頼がF、即ちパディントン局長に入れば、その黒幕はこう考えるはずだ。『あのパディントン局長の手際ならば、この数年全く足跡のつかめなかったアーサー・ボールドロイドを、極めて容易に、かつ、迅速に発見し得るだろう』と。
それを見越して黒幕は君をこの西部に向かわせ、この探偵諸君を追わせることで、私の居所を突き止めようとしたのだ。違うかね?」
「い、いや、まあ、……確かに、依頼された時に、そう入れ知恵されたけど」
「そうだろうな。そこまでは容易に推理し得る」
こくこくとうなずいたデズにくるりと背を向け、アーサー老人は帽子越しに頭をかきつつ、推察を続ける。
「しかし私の目から見ても、そして君の評判からしても――奇跡的に私のところまで行き着いたとして、そこから私の暗殺が可能かどうか? それについては確実に成し得ると言う確証は持てない。事実、君はこうして拘束されてしまっているわけだからな。
無論、そんなことは黒幕も懸念しているだろうし、ましてや本当に失敗してしまうなど、彼にとってはあってはならない事態だ。となれば……」
そこまで語ったところで――銃声が、荒野にこだました。
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