DETECTIVE WESTERN
DETECTIVE WESTERN 7 ~ 消えた鉄道王 ~ 13
ウエスタン小説、第13話。
猫の目と三角形(Yeux de chat et un triangle)。
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13.

「ミヌー君」
アーサー老人はデズを囲むアデルたちをチラ、と確認し、エミルに耳打ちした。
「君は何か知っているのかね、このシンボルについて?」
「し、……知らないわ」
そう答えたエミルに、アーサー老人は首を横に振って返す。
「私の得意分野は人間観察だと言っただろう? 君が嘘をついているのは明白だ。
隠したいと言うのであれば、今ならあの二人はデズを構うのに夢中だ。私もそう簡単に、秘密を漏らす男ではない。教会の懺悔室より、情報の防衛力は堅固であるつもりだ。
話したまえ、ミヌー君」
「……その、マークは」
エミルは震える声で、話し始めた。
「その組織の創始者、シャタリーヌ(Chatalaine)の名前が猫(chat)に通じることと、そしてあなたが推察していたように、世界的な秘密結社の多くが『三角形』をシンボルとして登用していることから、そう言う風に象(かたど)られたの」
「ふむ」
「でも、……その組織は、10年以上前に、潰れたはず。今更こんなものを、持ってるヤツなんて、いるはずが」
「見たところ、ネックレスは比較的新しい。10年ものだとは、到底見えん。せいぜい1年か、2年と言ったところだろう。
そして『潰れた』ではなかろう。君が『潰した』のだ。違うかね?」
「……ええ、そうよ」
「だが、その組織に詳しい君が見たことのない男たちが、揃ってネックレスを懐に入れている。ネックレスの具合から見ても、組織への加入は、少なくとも2年前だろう。
この事実だけでも、君が潰したはずのその組織が、2年前には復活していたことは明白だ」
「……っ」
ネックレスを握りしめ、エミルは黙り込む。
「ともかく、これでつながったよ」
アーサー老人はもう一つのネックレスを指にかけて軽く振り回しつつ、考察を続ける。
「なるほど。私が予想していた事態が現実になろうとしている、……と言うことだろう」
「……どう言うこと?」
尋ねたエミルに、アーサー老人は肩をすくめて返す。
「私の情報防衛力は堅固だと言っただろう? 今は明かせん。
君がもう少し、込み入った事情を教えてくれるなら別だがね」
そう返され、エミルもアデルたちをチラ、と見る。
「……じゃあ、……1つ、だけ。
あたしの、昔の名前。エミル・トリーシャ・シャタリーヌよ」
「察するに、その組織の創始者の血縁者と言うところか。恐らくは、……いや、こんな要点のぼやけた掛け合いをしていても、埒が明かんな。約束したことであるし、私ももう少し、秘密の話を明かすとしよう。
その創始者の名前を、私は知っている。ジャン=ジャック・ノワール・シャタリーヌだろう?」
「……!」
無言で目を剥いたエミルに、アーサー老人は小さくうなずいて見せる。
「だが彼の死亡は、我々も確認している。確かに11年前だ。その息子も翌年、C州で死体が発見されている。
察するにどちらも君が殺したのではないかと、私は考えている。どうかね?」
「……そうよ」
答えたエミルに、アーサー老人は笑いかける。
「打ち明けた秘密が2つになったな。ではもう少し、詳しく話そう。
彼が組織なんぞを持っていたと言うことは、実は彼の死後に分かったことだ。だから組織について、詳しいことはまるで知らん。恐らくFたちも知るまい。
だがシャタリーヌ親子が故郷でやっていた悪行も、この国で企てていたことも、ある程度は把握している。恐らく君が彼らを殺害しなければ、合衆国は先の戦争以上の混乱にあえぎ、崩壊の危機を迎えていただろう。
ともかく昨日、君が私に依頼した件については、調べ次第すぐに伝えよう。もし本当に組織が復活していたと言うのならば、可及的速やかに、再度壊滅させねばならんだろうからな」
「ええ。……お願いね、ボールドロイドさん」
エミルは深々と、アーサー老人に頭を下げた。
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猫の目と三角形(Yeux de chat et un triangle)。
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13.

「ミヌー君」
アーサー老人はデズを囲むアデルたちをチラ、と確認し、エミルに耳打ちした。
「君は何か知っているのかね、このシンボルについて?」
「し、……知らないわ」
そう答えたエミルに、アーサー老人は首を横に振って返す。
「私の得意分野は人間観察だと言っただろう? 君が嘘をついているのは明白だ。
隠したいと言うのであれば、今ならあの二人はデズを構うのに夢中だ。私もそう簡単に、秘密を漏らす男ではない。教会の懺悔室より、情報の防衛力は堅固であるつもりだ。
話したまえ、ミヌー君」
「……その、マークは」
エミルは震える声で、話し始めた。
「その組織の創始者、シャタリーヌ(Chatalaine)の名前が猫(chat)に通じることと、そしてあなたが推察していたように、世界的な秘密結社の多くが『三角形』をシンボルとして登用していることから、そう言う風に象(かたど)られたの」
「ふむ」
「でも、……その組織は、10年以上前に、潰れたはず。今更こんなものを、持ってるヤツなんて、いるはずが」
「見たところ、ネックレスは比較的新しい。10年ものだとは、到底見えん。せいぜい1年か、2年と言ったところだろう。
そして『潰れた』ではなかろう。君が『潰した』のだ。違うかね?」
「……ええ、そうよ」
「だが、その組織に詳しい君が見たことのない男たちが、揃ってネックレスを懐に入れている。ネックレスの具合から見ても、組織への加入は、少なくとも2年前だろう。
この事実だけでも、君が潰したはずのその組織が、2年前には復活していたことは明白だ」
「……っ」
ネックレスを握りしめ、エミルは黙り込む。
「ともかく、これでつながったよ」
アーサー老人はもう一つのネックレスを指にかけて軽く振り回しつつ、考察を続ける。
「なるほど。私が予想していた事態が現実になろうとしている、……と言うことだろう」
「……どう言うこと?」
尋ねたエミルに、アーサー老人は肩をすくめて返す。
「私の情報防衛力は堅固だと言っただろう? 今は明かせん。
君がもう少し、込み入った事情を教えてくれるなら別だがね」
そう返され、エミルもアデルたちをチラ、と見る。
「……じゃあ、……1つ、だけ。
あたしの、昔の名前。エミル・トリーシャ・シャタリーヌよ」
「察するに、その組織の創始者の血縁者と言うところか。恐らくは、……いや、こんな要点のぼやけた掛け合いをしていても、埒が明かんな。約束したことであるし、私ももう少し、秘密の話を明かすとしよう。
その創始者の名前を、私は知っている。ジャン=ジャック・ノワール・シャタリーヌだろう?」
「……!」
無言で目を剥いたエミルに、アーサー老人は小さくうなずいて見せる。
「だが彼の死亡は、我々も確認している。確かに11年前だ。その息子も翌年、C州で死体が発見されている。
察するにどちらも君が殺したのではないかと、私は考えている。どうかね?」
「……そうよ」
答えたエミルに、アーサー老人は笑いかける。
「打ち明けた秘密が2つになったな。ではもう少し、詳しく話そう。
彼が組織なんぞを持っていたと言うことは、実は彼の死後に分かったことだ。だから組織について、詳しいことはまるで知らん。恐らくFたちも知るまい。
だがシャタリーヌ親子が故郷でやっていた悪行も、この国で企てていたことも、ある程度は把握している。恐らく君が彼らを殺害しなければ、合衆国は先の戦争以上の混乱にあえぎ、崩壊の危機を迎えていただろう。
ともかく昨日、君が私に依頼した件については、調べ次第すぐに伝えよう。もし本当に組織が復活していたと言うのならば、可及的速やかに、再度壊滅させねばならんだろうからな」
「ええ。……お願いね、ボールドロイドさん」
エミルは深々と、アーサー老人に頭を下げた。
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ブログ「妄想の荒野」の矢端想さんに挿絵を描いていただきました。
ありがとうございます!
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こ、これは……フリーメイソン……に似た別の団体!
そうか秘密結社ものになるんですかこのシリーズ。いろいろと話がでかくなってきて伝奇小説の面白さが出てきましたね。
面白いです(^^)
そうか秘密結社ものになるんですかこのシリーズ。いろいろと話がでかくなってきて伝奇小説の面白さが出てきましたね。
面白いです(^^)
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