DETECTIVE WESTERN
DETECTIVE WESTERN 7 ~ 消えた鉄道王 ~ 14
ウエスタン小説、第14話。
買収劇の顛末と、局長の真の目的。
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14.
「W&B鉄道 アトランティック海運を買収 『海運の株価暴落の責任取った』と説明
西部開拓の一翼を担う鉄道会社、ワットウッド&ボールドロイド西部開拓鉄道が先日中止を発表したアトランティック海運の買収計画について、同社最高経営責任者であるボールドロイド氏は昨日28日、かねてからの計画通り、アトランティック海運を買収したことを発表した。
中止を発表していた計画を事実上進めていたことについて、ボールドロイド氏は『12日の当社の発表を受け、アトランティック海運の株価が急落していた。同社の株主総会がその責任を当社に追求してきたため、同社との協議を重ねた結果、やむなく市場価格の13.5%増しでの購入に応じた』と説明している。
しかし買収断念の報道後、アトランティック海運の株価は昨日28日までに約40%もの下落を記録しており、関係者筋からは『株価暴落を狙うために買収断念を発表したのではないか』、『極めて姑息な敵対的買収とも判じられる』との意見も出ている」
W&Bの買収成功を報じる新聞を机に置いて、ロドニーはパディントン局長と、そしてU州から戻ったばかりのアデルに、深々と頭を下げていた。
「本っ当に済まん! 俺の早とちりって言うか、スチュアートさんに騙されてたっていうか、……いやもう、ともかく本当に、済まなかった!」
「いやいや、お気になさらず。頭を上げて下さい」
やんわりとなだめつつも、局長はにこにこと微笑んでいる。
「まさかメディアを利用しての買収工作とは。これは私も予想外でした。おかげでリーランドさんも我々も、見事に踊らされてしまいましたな。
とは言え探偵局の人間を3名、実際に西部へ派遣したのは事実ですからな。その分の支払いはしていただかないと……」
「う……」
ロドニーは苦い顔を挙げたが、やがて観念したようにうなずいた。
「しゃーねーよなぁ。分かった、払うよ。いくらになる?」
「基本料金が50ドル、そして3名を23日派遣したので、69ドル。成功報酬は結構ですので、合計119ドルとなります。
ああ、端数を省いて110ドルで構いませんよ」
「おお、そりゃありがとう。んじゃ、まあ、……ホイ、と」
ロドニーは懐から小切手帳を取り出し、金額を書いて差し出した。
ロドニーが帰ったところで、アデルは局長に苦い顔を向けた。
「阿漕なとこは阿漕ですね、局長」
「稼ぐべき時は稼がねば。それが経営者と言うものだろう?」
ロドニーが置いていった新聞を手に取り、局長はニヤッと笑う。
「それでネイサン、Aはどうしていた? 元気だったか?」
「……そこですよ、局長」
アデルはため息をつき、局長に尋ねた。
「失踪者のリストアップだの何だのって話以前に、ボールドロイド氏のこと、知ってたんですよね?」
「うむ、長い付き合いだ」
「じゃあなんで俺たちに、最初から『ボールドロイドは親しい友人だ』と教えてくれなかったんですか?」
「理由は3つだ」
新聞をたたみながら、局長は飄々とした様子でドアを開ける。
「君たちも聞きたかろう?」
「……っ」
ドアの向こうには、エミルとロバートが立っていた。
「い、いや、その、局長」
しどろもどろに何か言おうとしたロバートの肩に手を置き、局長が中に入るよう促す。
「立ち話もなんだ、ゆっくり歓談しようじゃあないか。
多少は胸襟を開いて話すつもりだよ、今日はね」
「それなら話が早いわ」
そう返し、エミルはアデルの横に座る。
「詳しく聞かせてくれないかしら?
どうして今回、局長はあたしたちを『調査』って名目で、長い付き合いのボールドロイドさんのところへわざわざ送ったのか」
「うむ、詳しく説明しよう。
……と、エミル。済まんがコーヒーを頼んでも構わんかね? ゆったり話をしようと言うのに、飲み物が無いんじゃあ息が詰まってしまうからね」
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買収劇の顛末と、局長の真の目的。
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「W&B鉄道 アトランティック海運を買収 『海運の株価暴落の責任取った』と説明
西部開拓の一翼を担う鉄道会社、ワットウッド&ボールドロイド西部開拓鉄道が先日中止を発表したアトランティック海運の買収計画について、同社最高経営責任者であるボールドロイド氏は昨日28日、かねてからの計画通り、アトランティック海運を買収したことを発表した。
中止を発表していた計画を事実上進めていたことについて、ボールドロイド氏は『12日の当社の発表を受け、アトランティック海運の株価が急落していた。同社の株主総会がその責任を当社に追求してきたため、同社との協議を重ねた結果、やむなく市場価格の13.5%増しでの購入に応じた』と説明している。
しかし買収断念の報道後、アトランティック海運の株価は昨日28日までに約40%もの下落を記録しており、関係者筋からは『株価暴落を狙うために買収断念を発表したのではないか』、『極めて姑息な敵対的買収とも判じられる』との意見も出ている」
W&Bの買収成功を報じる新聞を机に置いて、ロドニーはパディントン局長と、そしてU州から戻ったばかりのアデルに、深々と頭を下げていた。
「本っ当に済まん! 俺の早とちりって言うか、スチュアートさんに騙されてたっていうか、……いやもう、ともかく本当に、済まなかった!」
「いやいや、お気になさらず。頭を上げて下さい」
やんわりとなだめつつも、局長はにこにこと微笑んでいる。
「まさかメディアを利用しての買収工作とは。これは私も予想外でした。おかげでリーランドさんも我々も、見事に踊らされてしまいましたな。
とは言え探偵局の人間を3名、実際に西部へ派遣したのは事実ですからな。その分の支払いはしていただかないと……」
「う……」
ロドニーは苦い顔を挙げたが、やがて観念したようにうなずいた。
「しゃーねーよなぁ。分かった、払うよ。いくらになる?」
「基本料金が50ドル、そして3名を23日派遣したので、69ドル。成功報酬は結構ですので、合計119ドルとなります。
ああ、端数を省いて110ドルで構いませんよ」
「おお、そりゃありがとう。んじゃ、まあ、……ホイ、と」
ロドニーは懐から小切手帳を取り出し、金額を書いて差し出した。
ロドニーが帰ったところで、アデルは局長に苦い顔を向けた。
「阿漕なとこは阿漕ですね、局長」
「稼ぐべき時は稼がねば。それが経営者と言うものだろう?」
ロドニーが置いていった新聞を手に取り、局長はニヤッと笑う。
「それでネイサン、Aはどうしていた? 元気だったか?」
「……そこですよ、局長」
アデルはため息をつき、局長に尋ねた。
「失踪者のリストアップだの何だのって話以前に、ボールドロイド氏のこと、知ってたんですよね?」
「うむ、長い付き合いだ」
「じゃあなんで俺たちに、最初から『ボールドロイドは親しい友人だ』と教えてくれなかったんですか?」
「理由は3つだ」
新聞をたたみながら、局長は飄々とした様子でドアを開ける。
「君たちも聞きたかろう?」
「……っ」
ドアの向こうには、エミルとロバートが立っていた。
「い、いや、その、局長」
しどろもどろに何か言おうとしたロバートの肩に手を置き、局長が中に入るよう促す。
「立ち話もなんだ、ゆっくり歓談しようじゃあないか。
多少は胸襟を開いて話すつもりだよ、今日はね」
「それなら話が早いわ」
そう返し、エミルはアデルの横に座る。
「詳しく聞かせてくれないかしら?
どうして今回、局長はあたしたちを『調査』って名目で、長い付き合いのボールドロイドさんのところへわざわざ送ったのか」
「うむ、詳しく説明しよう。
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