「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 第2部
琥珀暁・狐童伝 2
神様たちの話、第39話。
砂金と宝飾屋。
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2.
「うん、いいね。かっこいいデザインだ」
ヨブからもらった腕輪を早速身に付け、モールは嬉しそうな声を漏らした。
「ですやろ?」
「山で見た格好からじゃ、こんないいセンスしてるおっさんだとは思わなかったね。いや、私の見る目もまだまだって感じだね」
砂金の採れる山を降り、麓の村に戻ったヨブは早速モールを自分の家に招き、助けてもらったお礼にと、自分が造った腕輪を渡した。
モールはその腕輪がすっかり気に入ったらしく、右腕に付け替えたり、左腕に戻したりして、ずっといじくり回している。
「正直言や、こんな原始スレスレの世界じゃろくなものも手に入らないだろって思ってたけど、なかなかどうして、こんなにいい逸品をもらえるなんて思ってもなかったね。
いやいや、見直したよ、ヨブ」
「ほめられとるんかけなされとるんか、よお分かりませんなぁ」
苦い顔を向けたヨブに、モールは「いやいや」と肩をすくめて返す。
「ほめてるさ、素直にね。
……ってか、そうだ。ちょいと色々聞いてもいいね?」
「なんでっしゃろ」
「いやさ、私ゃコレまであちこち回ってきたんだけどもね、ココみたいに大きな村は初めて見るんだよね。ざっと見た限りじゃ、商売してたりおめかししてたり、かなり文化的なコトしてたみたいだしね。
他んトコはもっとちっちゃくまとまってるか、さもなくばグチャグチャに引っ掻き回されて壊滅してるかって状態だったんだけどもね」
「さっきのんみたいなバケモノが時々出る、みたいな話はわしもよお聞きますな。
ただ、ここは狡(こす)い奴が仰山おりまして、落とし穴掘ったり落石使うたりとか、罠を仕掛けて撃退しとるんですわ」
「はっは、すごいねぇ。なるほど、ソレでこの村は他に比べて文化的だってワケか」
「ちゅうても万全、盤石っちゅうわけには行きませんけどな。さっきのわしがええ見本ですわ。恥ずかしながら、わしは昔っから鈍臭い、鈍臭いとよお言われとりまして」
「センスはいいのにねぇ」
モールにそうほめられたものの、ヨブは肩をすくめ、こう返す。
「それだけで生かさせてもろてるようなもんですわ。正直、装飾具造る腕あらへんかったら、カネも手に入りませんやろし、飯も住むとこもさっぱりでしたやろし」
「あん?」
モールは納得が行かない、と言いたげな表情を浮かべる。
「君、卑屈になりすぎじゃないね? 宝飾屋だって立派な仕事だね。君がいなきゃ、その腕の立つ奴らはみんな、クソダサいまんまだろ?」
「……ぷっ」
モールの言葉に、ヨブが噴き出した。
「はは……、そうですわ。言うたらそうですな」
「だろ? 後ろめたく思う必要、全然無いってね。そんな風に自分を卑下してばっかじゃ、女も寄ってこないね」
「あー……、いや、わしにはもう、十分ですけどな」
そう返したヨブに、モールはけげんな表情を浮かべる。
「って言うと?」
「わし、昔おったんです、奥さん。今はもう、亡くなってしもたんですけども」
「ありゃ、そうだったか。ゴメンね、変なコト言って」
「いやいや、そう思うんも無理は無いですわ。こんなしょぼくれたおっさん……」
言いかけたヨブの鼻を、モールがつかむ。
「ふひゃっ!?」
「だーから言ってるじゃないね、卑屈になるなって。君の腕は確かだ。私がバッチリ保証してやるね」
「は、はんはひほひょうひゃれひぇひょ……(アンタに保証されても……)」
「なんだよ、私じゃ不満だっての? えっらそうにしちゃってねぇ」
モールは鼻をつかんでいた手を、ぴっと離す。その拍子に、ヨブの口と鼻から妙な音が漏れた。
「ぷひゃっ!」
「アハハ、『ぷひゃ』だって、アハハハハハハ」
モールは顔を真っ赤にするヨブを見て、ゲラゲラと笑い転げていた。
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砂金と宝飾屋。
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「うん、いいね。かっこいいデザインだ」
ヨブからもらった腕輪を早速身に付け、モールは嬉しそうな声を漏らした。
「ですやろ?」
「山で見た格好からじゃ、こんないいセンスしてるおっさんだとは思わなかったね。いや、私の見る目もまだまだって感じだね」
砂金の採れる山を降り、麓の村に戻ったヨブは早速モールを自分の家に招き、助けてもらったお礼にと、自分が造った腕輪を渡した。
モールはその腕輪がすっかり気に入ったらしく、右腕に付け替えたり、左腕に戻したりして、ずっといじくり回している。
「正直言や、こんな原始スレスレの世界じゃろくなものも手に入らないだろって思ってたけど、なかなかどうして、こんなにいい逸品をもらえるなんて思ってもなかったね。
いやいや、見直したよ、ヨブ」
「ほめられとるんかけなされとるんか、よお分かりませんなぁ」
苦い顔を向けたヨブに、モールは「いやいや」と肩をすくめて返す。
「ほめてるさ、素直にね。
……ってか、そうだ。ちょいと色々聞いてもいいね?」
「なんでっしゃろ」
「いやさ、私ゃコレまであちこち回ってきたんだけどもね、ココみたいに大きな村は初めて見るんだよね。ざっと見た限りじゃ、商売してたりおめかししてたり、かなり文化的なコトしてたみたいだしね。
他んトコはもっとちっちゃくまとまってるか、さもなくばグチャグチャに引っ掻き回されて壊滅してるかって状態だったんだけどもね」
「さっきのんみたいなバケモノが時々出る、みたいな話はわしもよお聞きますな。
ただ、ここは狡(こす)い奴が仰山おりまして、落とし穴掘ったり落石使うたりとか、罠を仕掛けて撃退しとるんですわ」
「はっは、すごいねぇ。なるほど、ソレでこの村は他に比べて文化的だってワケか」
「ちゅうても万全、盤石っちゅうわけには行きませんけどな。さっきのわしがええ見本ですわ。恥ずかしながら、わしは昔っから鈍臭い、鈍臭いとよお言われとりまして」
「センスはいいのにねぇ」
モールにそうほめられたものの、ヨブは肩をすくめ、こう返す。
「それだけで生かさせてもろてるようなもんですわ。正直、装飾具造る腕あらへんかったら、カネも手に入りませんやろし、飯も住むとこもさっぱりでしたやろし」
「あん?」
モールは納得が行かない、と言いたげな表情を浮かべる。
「君、卑屈になりすぎじゃないね? 宝飾屋だって立派な仕事だね。君がいなきゃ、その腕の立つ奴らはみんな、クソダサいまんまだろ?」
「……ぷっ」
モールの言葉に、ヨブが噴き出した。
「はは……、そうですわ。言うたらそうですな」
「だろ? 後ろめたく思う必要、全然無いってね。そんな風に自分を卑下してばっかじゃ、女も寄ってこないね」
「あー……、いや、わしにはもう、十分ですけどな」
そう返したヨブに、モールはけげんな表情を浮かべる。
「って言うと?」
「わし、昔おったんです、奥さん。今はもう、亡くなってしもたんですけども」
「ありゃ、そうだったか。ゴメンね、変なコト言って」
「いやいや、そう思うんも無理は無いですわ。こんなしょぼくれたおっさん……」
言いかけたヨブの鼻を、モールがつかむ。
「ふひゃっ!?」
「だーから言ってるじゃないね、卑屈になるなって。君の腕は確かだ。私がバッチリ保証してやるね」
「は、はんはひほひょうひゃれひぇひょ……(アンタに保証されても……)」
「なんだよ、私じゃ不満だっての? えっらそうにしちゃってねぇ」
モールは鼻をつかんでいた手を、ぴっと離す。その拍子に、ヨブの口と鼻から妙な音が漏れた。
「ぷひゃっ!」
「アハハ、『ぷひゃ』だって、アハハハハハハ」
モールは顔を真っ赤にするヨブを見て、ゲラゲラと笑い転げていた。
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