「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 第2部
琥珀暁・狐童伝 4
神様たちの話、第41話。
MUAF(マフ)。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
4.
「どないしたん、モールさん?」
家の外に出たところで、モールはエリザに魔杖を向けた。
「検査だね。今の今までそんな可能性をまったく考えもしなかったから、今めちゃくちゃビックリしてるんだけどもね、よくよく考えりゃ、有り得る話ではあるんだね」
「何が?」
「マフって私らが呼んでるモノがあるんだけどね」
モールは説明しつつ、呪文を唱え始める。
「魔術使用可能因子(Magic Using Available Factor)、その頭文字を取ってマフ(MUAF)。
コレはヒトだとか、多少脳みその進化した生き物の中に含まれるコトがあるモノなんだけどもね」
「……?」
モールの説明に、エリザはきょとんとするばかりである。
「あー、いいや、ともかく魔術が使える素質だね。逆に言えば、ソレを持ってないとまず、魔術は使えない。
何で私がこんなにビックリしてるかって言うとね、元々私がいた世界じゃ、生まれながらにしてコレを持ってるヤツは、100万人に1人だとか、1000万人に1人だとか言われてたからさ。
ソレなのにさ、今日偶然会った君がマフ持ちだなんて、誰が予想するかってね。……いや、でもこの世界は、私の世界とは大きく在り様が異なってるもんねぇ。君みたいにふわふわで超可愛い耳と尻尾を持ってるヤツなんて、私のトコじゃ一人も見かけなかったしね。
だから逆に、ココはそーゆー世界なのかも、……っと」
「えーと……?」
話に付いていけていないらしく、エリザは戸惑った様子を見せている。しかしモールはそれに構わず、話を続けていた。
「検査終了だね。やっぱりエリザ、君はマフ持ちだった。しかもコレは、……いや、……もしかして……だとすると……」
それどころか、モールは一人でぶつぶつと独り言を始めてしまい、エリザは完全に放置されてしまった。
「……んもぉ、何やのん?」
エリザは唇をとがらせながら、モールの尻尾をぐにっと握り締める。
「……つまりこの世界は派生型の……うぎゃあ!?」
尻尾を締められ、モールは大声を出して飛び上がった。
「いてててて……、うー、尻尾ってこんなに敏感なんだね、……じゃないや。
何すんのさ、エリザ?」
「こっちのセリフやん。何やワケ分からんコトぎょーさんブツブツ言うて、何なんっちゅう話やん?」
「あー、そうだったね。ゴメンゴメン。……えーと、まあ、ともかく。
結論から言うとエリザ、君には魔術を使える素質があるね。ソレもかなりの素質だ。ちょっと修行すれば、私みたいにひょいひょいっと扱えるようになるかも知れないね」
「え、ホンマに?」
モールにそう聞かされ、エリザは目を輝かせた。
と、家からヨブが出てくる。
「どないしはったんです、モールさん? ウチの子に何かありました?」
「ん? ああ、まあ、色々ね。
んじゃ、詳しいコトはご飯の後に話そうか、エリザ」
「はーい」
そして夕食を終えた後、モールはヨブたち一家を並べ、こう切り出した。
「ヨブ、君の娘さんには稀有な才能があるね。私が君を助けるのに使った、魔術の才能がね」
「はあ」
「でもコレは、放っといて伸びるような才能じゃないね。誰かが使い方を教えなきゃ、一生埋もれたままの才能だ。
だからヨブ、私はこの子に色々教えてやりたいんだけど、構わないかね?」
そう問われ、ヨブはけげんな顔になる。
「教える、……ちゅうのんは、モールさんがこの村に住んで、っちゅうことですか?」
「ソレか、私の旅にこの子を連れていくかだね。
勿論、まだ10歳にも満たなさそうな幼子をウロウロ連れ回すなんてかわいそうだし、できれば前者がいいよね。
だけどもし、この村が私を受け入れないってコトになったら、その時は私に預けてほしいんだよね」
「無茶言わんで下さい」
モールの提案に対し、当然ヨブは渋る。
「今日会ったばかりのあんたに、娘を預けろと?」
「分かってる。無茶だってコトは、十分承知さね。
でもソレだけの価値がある。だからお願いするのさ」
「うーん……」
ヨブは眉間にしわを寄せ、うなるばかりである。
その後もモールは熱心に説き続けたが、結局ヨブは、首を縦に振ることは無かった。
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MUAF(マフ)。
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「どないしたん、モールさん?」
家の外に出たところで、モールはエリザに魔杖を向けた。
「検査だね。今の今までそんな可能性をまったく考えもしなかったから、今めちゃくちゃビックリしてるんだけどもね、よくよく考えりゃ、有り得る話ではあるんだね」
「何が?」
「マフって私らが呼んでるモノがあるんだけどね」
モールは説明しつつ、呪文を唱え始める。
「魔術使用可能因子(Magic Using Available Factor)、その頭文字を取ってマフ(MUAF)。
コレはヒトだとか、多少脳みその進化した生き物の中に含まれるコトがあるモノなんだけどもね」
「……?」
モールの説明に、エリザはきょとんとするばかりである。
「あー、いいや、ともかく魔術が使える素質だね。逆に言えば、ソレを持ってないとまず、魔術は使えない。
何で私がこんなにビックリしてるかって言うとね、元々私がいた世界じゃ、生まれながらにしてコレを持ってるヤツは、100万人に1人だとか、1000万人に1人だとか言われてたからさ。
ソレなのにさ、今日偶然会った君がマフ持ちだなんて、誰が予想するかってね。……いや、でもこの世界は、私の世界とは大きく在り様が異なってるもんねぇ。君みたいにふわふわで超可愛い耳と尻尾を持ってるヤツなんて、私のトコじゃ一人も見かけなかったしね。
だから逆に、ココはそーゆー世界なのかも、……っと」
「えーと……?」
話に付いていけていないらしく、エリザは戸惑った様子を見せている。しかしモールはそれに構わず、話を続けていた。
「検査終了だね。やっぱりエリザ、君はマフ持ちだった。しかもコレは、……いや、……もしかして……だとすると……」
それどころか、モールは一人でぶつぶつと独り言を始めてしまい、エリザは完全に放置されてしまった。
「……んもぉ、何やのん?」
エリザは唇をとがらせながら、モールの尻尾をぐにっと握り締める。
「……つまりこの世界は派生型の……うぎゃあ!?」
尻尾を締められ、モールは大声を出して飛び上がった。
「いてててて……、うー、尻尾ってこんなに敏感なんだね、……じゃないや。
何すんのさ、エリザ?」
「こっちのセリフやん。何やワケ分からんコトぎょーさんブツブツ言うて、何なんっちゅう話やん?」
「あー、そうだったね。ゴメンゴメン。……えーと、まあ、ともかく。
結論から言うとエリザ、君には魔術を使える素質があるね。ソレもかなりの素質だ。ちょっと修行すれば、私みたいにひょいひょいっと扱えるようになるかも知れないね」
「え、ホンマに?」
モールにそう聞かされ、エリザは目を輝かせた。
と、家からヨブが出てくる。
「どないしはったんです、モールさん? ウチの子に何かありました?」
「ん? ああ、まあ、色々ね。
んじゃ、詳しいコトはご飯の後に話そうか、エリザ」
「はーい」
そして夕食を終えた後、モールはヨブたち一家を並べ、こう切り出した。
「ヨブ、君の娘さんには稀有な才能があるね。私が君を助けるのに使った、魔術の才能がね」
「はあ」
「でもコレは、放っといて伸びるような才能じゃないね。誰かが使い方を教えなきゃ、一生埋もれたままの才能だ。
だからヨブ、私はこの子に色々教えてやりたいんだけど、構わないかね?」
そう問われ、ヨブはけげんな顔になる。
「教える、……ちゅうのんは、モールさんがこの村に住んで、っちゅうことですか?」
「ソレか、私の旅にこの子を連れていくかだね。
勿論、まだ10歳にも満たなさそうな幼子をウロウロ連れ回すなんてかわいそうだし、できれば前者がいいよね。
だけどもし、この村が私を受け入れないってコトになったら、その時は私に預けてほしいんだよね」
「無茶言わんで下さい」
モールの提案に対し、当然ヨブは渋る。
「今日会ったばかりのあんたに、娘を預けろと?」
「分かってる。無茶だってコトは、十分承知さね。
でもソレだけの価値がある。だからお願いするのさ」
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