「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 第2部
琥珀暁・錬杖伝 2
神様たちの話、第45話。
モールの夢;荳芽ウ「閠??鬟溷酷鬚ィ譎ッ縲 。
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2.
エリザの記憶に従い、モールたち二人はのんびりと西への道を進む。
その道中、モールはこんな質問を向けてきた。
「そう言やさ、エリザ。さっき『村の外の人と』って言ってたけど、他の村と交流があるの?」
「どう言う意味?」
尋ね返され、モールは「あー、と」と声を漏らす。
「いやさ、あの村って排他的って言うか何て言うか、同じ村の人間じゃないヤツにゃ冷たそうな印象があったからね」
「んー、まあ、ソコら辺は先生の言う通りって感じやね。手土産とか無しで村に来るような人は追い返されとるよ」
「ああ、ソレは納得だね。んじゃ、何かしらの取引をしてるって感じか。
そう言やこの辺りのカネって見たコトないんだけど、持ってる?」
「ちょこっとやったら」
エリザはポケットから、わずかに赤みを帯びた団栗大の粒をころころと取り出し、モールに渡す。
「コイン、……じゃないんだね。コレ1粒でどんくらいの価値?」
「どんくらい、って言うとー、……んー、3つでリンゴ1個くらい。
あと、もうちょい大きいのんとか、もっと大きくて黒いのんとかもあるで。さっき言うてた取引ん時、お父やんがなんぼか受け取ってはった」
「ふむふむ、……『黒いのん』ってのも実物を見てみたいけども、聞く感じじゃ結構値打ちが高そうだし、子供にゃ持たさないか。
ま、村に着いたら何かしら大道芸でもやって稼いでみるかね」
「だいどうげい?」
尋ねたエリザに、モールはニヤッと笑って返した。
「君に見せたような、鳥とか蝶とか飛ばすアレさね。結構綺麗だったろ?」
「うんうん」
「そーゆー滅多に見られないよーなモノを見せて、『感動した方はそのお気持ちをお代としてお支払い下さいな』っつって、小銭を稼ぐのさ」
「んー……? うまく行くんかなぁ、そんなん」
「まあ、君の村みたいにしょっぱくてケチ臭くってシケたヤツらばっかじゃ、赤粒いっこだってくれりゃしないだろうけどもね」
「うん、そんな気ぃするわ」
そんな風に、モールとエリザは取り留めもない話を重ねつつ、のんびりと歩みを進めているうちに――。
「……あー、と」
「どないしたん、先生?」
尋ねるエリザに、モールは空を指差して見せる。
「もう日が暮れそうだね。コレ以上進むのは危ない」
「せやね。ほな、またこの辺で?」
「だねぇ」
二人は辺りを見回し、野宿ができそうな場所を探す。そしてすぐ、エリザがモールの袖を引いた。
「あの辺とかどう?」
「悪くないね。んじゃ、準備するかね。
エリザ、そんじゃ……」「たきぎと食べれそうなのん、やね」「ん、ソレ」
共に旅をして何日も経つからか、それともエリザが特別聡いからなのか――モールが大して指示も与えないうちに、エリザはきびきびと動き始める。
10分も経たないうち、二人は野宿の準備を終え、焚き火を囲んでいた。
「魔術ってホンマに便利やね。火もカンタンに起こせるし、食べもんに毒があるかどうかも分かるっちゅうのんは」
「ふっふっふ」
木の枝に挿したキノコを焚き火であぶりながら、モールは得意気に笑う。
「何でもできる、……とは言い過ぎだけども、『ほとんど』何でも、だね」
「『ほとんど』? びみょーな言い方やね」
「できないコトは意外と多いさ。月へ行ったりもできないし、世界中を常春にするコトだってできない。死んだ人にも会えやしないしね」
「そら誰かてでけへんやろ、あはは……」
程良く焼けたキノコや木の実を頬張りつつ、二人は取り留めもなく話を交わしていた。
腹もふくれ、眠気も感じたところで、二人はそのまま寄り添い、眠りに就いた。
エリザの狐耳の、ふわふわとした毛並みをあごの辺りに感じながら、モールは夢を見ていた。
「この体じゃ椅子に上がるだけでも億劫だね、まったく」
もぞもぞと卓に着こうとしたモールを、誰かが後ろからひょいと持ち上げる。
「ま、慣れるまで付き合うよ」
「そりゃどーも」
「ご飯できたよー」
と、別の誰かがのんきな声を出しながら、鍋を両手で抱えて持って来る。
「試しにさ、外に生ってた植物を煮込んでみた。ワラビっぽいから多分食べられると思う」
「思う、……って」
モールはげんなりしつつ尋ねる。
「試食とか毒味は?」
「まだ」
「んなもん食わすなッ!」
モールが声を荒げるが、この茶髪の彼は、全く意に介していないらしい。
「んじゃ、今食べてみるねー」
彼はそう言ってひょい、と鍋の中身をひとつまみ、口の中に放り込む。
(コイツ、こう言う時ホントに躊躇しないなぁ)
「うん。美味しいよ。ちゃんと出汁が染みてる」
「う、うーん」
いつもは穏やかに笑っている、この若白髪の青年も、この時ばかりは笑顔を凍りつかせていた。
(でも確かに、匂いは悪く無さそうだ)
モールは箸をつかみ、そのワラビっぽいものを口へと運んだ。
(あ、マジでうまい)
「……むにゃ……ん……エリザ?」
ふわふわとした感触が、いつの間にかあごの辺りから消えていることに気付き、モールは夢の中から引き戻された。
「……どした?」
寝ぼけた目をこすりつつ、辺りを見回したが――エリザの姿は無かった。
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モールの夢;荳芽ウ「閠??鬟溷酷鬚ィ譎ッ縲 。
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エリザの記憶に従い、モールたち二人はのんびりと西への道を進む。
その道中、モールはこんな質問を向けてきた。
「そう言やさ、エリザ。さっき『村の外の人と』って言ってたけど、他の村と交流があるの?」
「どう言う意味?」
尋ね返され、モールは「あー、と」と声を漏らす。
「いやさ、あの村って排他的って言うか何て言うか、同じ村の人間じゃないヤツにゃ冷たそうな印象があったからね」
「んー、まあ、ソコら辺は先生の言う通りって感じやね。手土産とか無しで村に来るような人は追い返されとるよ」
「ああ、ソレは納得だね。んじゃ、何かしらの取引をしてるって感じか。
そう言やこの辺りのカネって見たコトないんだけど、持ってる?」
「ちょこっとやったら」
エリザはポケットから、わずかに赤みを帯びた団栗大の粒をころころと取り出し、モールに渡す。
「コイン、……じゃないんだね。コレ1粒でどんくらいの価値?」
「どんくらい、って言うとー、……んー、3つでリンゴ1個くらい。
あと、もうちょい大きいのんとか、もっと大きくて黒いのんとかもあるで。さっき言うてた取引ん時、お父やんがなんぼか受け取ってはった」
「ふむふむ、……『黒いのん』ってのも実物を見てみたいけども、聞く感じじゃ結構値打ちが高そうだし、子供にゃ持たさないか。
ま、村に着いたら何かしら大道芸でもやって稼いでみるかね」
「だいどうげい?」
尋ねたエリザに、モールはニヤッと笑って返した。
「君に見せたような、鳥とか蝶とか飛ばすアレさね。結構綺麗だったろ?」
「うんうん」
「そーゆー滅多に見られないよーなモノを見せて、『感動した方はそのお気持ちをお代としてお支払い下さいな』っつって、小銭を稼ぐのさ」
「んー……? うまく行くんかなぁ、そんなん」
「まあ、君の村みたいにしょっぱくてケチ臭くってシケたヤツらばっかじゃ、赤粒いっこだってくれりゃしないだろうけどもね」
「うん、そんな気ぃするわ」
そんな風に、モールとエリザは取り留めもない話を重ねつつ、のんびりと歩みを進めているうちに――。
「……あー、と」
「どないしたん、先生?」
尋ねるエリザに、モールは空を指差して見せる。
「もう日が暮れそうだね。コレ以上進むのは危ない」
「せやね。ほな、またこの辺で?」
「だねぇ」
二人は辺りを見回し、野宿ができそうな場所を探す。そしてすぐ、エリザがモールの袖を引いた。
「あの辺とかどう?」
「悪くないね。んじゃ、準備するかね。
エリザ、そんじゃ……」「たきぎと食べれそうなのん、やね」「ん、ソレ」
共に旅をして何日も経つからか、それともエリザが特別聡いからなのか――モールが大して指示も与えないうちに、エリザはきびきびと動き始める。
10分も経たないうち、二人は野宿の準備を終え、焚き火を囲んでいた。
「魔術ってホンマに便利やね。火もカンタンに起こせるし、食べもんに毒があるかどうかも分かるっちゅうのんは」
「ふっふっふ」
木の枝に挿したキノコを焚き火であぶりながら、モールは得意気に笑う。
「何でもできる、……とは言い過ぎだけども、『ほとんど』何でも、だね」
「『ほとんど』? びみょーな言い方やね」
「できないコトは意外と多いさ。月へ行ったりもできないし、世界中を常春にするコトだってできない。死んだ人にも会えやしないしね」
「そら誰かてでけへんやろ、あはは……」
程良く焼けたキノコや木の実を頬張りつつ、二人は取り留めもなく話を交わしていた。
腹もふくれ、眠気も感じたところで、二人はそのまま寄り添い、眠りに就いた。
エリザの狐耳の、ふわふわとした毛並みをあごの辺りに感じながら、モールは夢を見ていた。
「この体じゃ椅子に上がるだけでも億劫だね、まったく」
もぞもぞと卓に着こうとしたモールを、誰かが後ろからひょいと持ち上げる。
「ま、慣れるまで付き合うよ」
「そりゃどーも」
「ご飯できたよー」
と、別の誰かがのんきな声を出しながら、鍋を両手で抱えて持って来る。
「試しにさ、外に生ってた植物を煮込んでみた。ワラビっぽいから多分食べられると思う」
「思う、……って」
モールはげんなりしつつ尋ねる。
「試食とか毒味は?」
「まだ」
「んなもん食わすなッ!」
モールが声を荒げるが、この茶髪の彼は、全く意に介していないらしい。
「んじゃ、今食べてみるねー」
彼はそう言ってひょい、と鍋の中身をひとつまみ、口の中に放り込む。
(コイツ、こう言う時ホントに躊躇しないなぁ)
「うん。美味しいよ。ちゃんと出汁が染みてる」
「う、うーん」
いつもは穏やかに笑っている、この若白髪の青年も、この時ばかりは笑顔を凍りつかせていた。
(でも確かに、匂いは悪く無さそうだ)
モールは箸をつかみ、そのワラビっぽいものを口へと運んだ。
(あ、マジでうまい)
「……むにゃ……ん……エリザ?」
ふわふわとした感触が、いつの間にかあごの辺りから消えていることに気付き、モールは夢の中から引き戻された。
「……どした?」
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