「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 第2部
琥珀暁・錬杖伝 4
神様たちの話、第47話。
鉱山の村。
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4.
六目狼との遭遇から2日、3日と過ぎたところで、モールたちはとある村にたどり着いた。
「ココが、君が言ってた村だといいんだけどねぇ」
「っぽいで。ほら、山あるし」
エリザが指差した方向には、確かに山と、そのふもとにたむろする人間がいた。
モールはそのうちの一人に近付き、声を掛けてみる。
「ちょいと聞いていいかね?」
「ん?」
「この山、何か採れるね? 人が出入りしてるっぽいけども」
尋ねられた男は、素直に答えてくれた。
「ああ、色々採れるよ。青銅とか錫とか」
「へぇ?」
これを聞いて、モールはエリザの頭をぽんぽんと撫でる。
「エリザ、どーやらココが私らの目的地みたいだね」
「せやね。後は原料もらえたらええんやけど」
と、二人の話を聞いていたらしい男が尋ね返してくる。
「原料? あんたら、ここの鉱物が欲しいのか?」
「ああ、ちょいとね。ドコに行けば話できるね?」
「向こうに集めてるところがある。親分もそこにいるよ。俺も用事あるから、良けりゃ案内するぞ」
「どーも」
男に案内され、二人は大きな小屋の中に通された。
男は小屋の奥にいる、黒髪に銀色の毛並みをした狼獣人に声をかける。
「親分、新しい坑道のヤツ掘ってきました」
「おう、後で調べる。……そっちの二人は?」
声をかけられ、モールたちは狼獣人に応える。
「どーも。私はモール」
「アタシはエリザ・アーティエゴです」
「あん? アーティエゴ? ……どこかで聞いた名だな」
狼獣人は首を傾げ、やがて「ああ」と声を上げた。
「東の村にいた宝飾屋の名だな。そう言や、あの『狐』の親父と毛並みが同じだ。そこの子か?」
「うん」
「大人と一緒とは言え、よく無事に来られたな。ここまで全然、バケモノに襲われなかったのか? 運がいい」
そう言われて、モールが首を横に振る。
「いや、六つ目の狼に襲われたんだけどもね。燃やしてやった」
「燃やし、……はぁ!?」
狼獣人は目を丸くし、聞き返してくる。
「アレを燃やしただと? どう言う意味だ?」
「そのまんまの意味だね。跡形もなく、燃やし尽くしてやった」
「冗談だろ?」
「マジ」
「……マジかよ」
狼獣人は驚きで毛羽立ったらしい毛並みを整えつつ、こう返してきた。
「詳しく話を聞かせてくれ。ソイツにゃ手を焼いてたんだ」
「いいとも。……んで、アンタの名前は?」
「ああ、そうだった。
俺はラボ・ネール。ここいらの鉱山やら畑やら一帯を取り仕切ってる」
場所をラボの家に移し、モールは六目狼を倒した話、エリザを自分の弟子として身柄を引き受けた話、そして魔杖を造るために原料を必要としている話を語った。
「まじょう? まあ、何だか分からんが」
話を聞き終えたラボは、まだ納得の行かなさそうな顔をしつつも、モールの頼みに応じてくれた。
「マジにあの狼やらを倒せるってなら、青銅でも何でも、欲しいだけくれてやるよ。
ただ、俺たちにもその、……何てったっけ、魔術? を教えてくれると助かるんだが」
「使えるかどうかは別だけど、教えて欲しいってんならいくらでも。
ついでにエリザ。今まで道すがらざっくり教えてたけども、ここらで君にもしっかり、基本を教えとこうかね」
「はーい」
エリザの故郷と違って、ラボが治めるこの村はよそ者に対して寛大であり、モールたちにも気さくに応じ、また、素直に話を聞いてくれた。
(ってか、エリザんトコに馴染めなかったヤツらがこっちに流れて集まってきたって感じもするねぇ)
モールは彼らの中にも魔術の素質がある者がいることを確かめた上で、エリザも交えて魔術の講義を行うことにした。
「……ってワケで、基本的にゃ最後にキーワードを宣言するコトで発動するようになってるね。んじゃま、実践してみな」
モールのざっくりとした指導に、皆それぞれ、魔術を使おうと試みる。
が――。
「……出ない」
「どうやるんだ? こうか?」
「出た? 出たのかこれ?」
ほとんどの者が、まともに扱えないでいる。
そんな中、一人空中に火球を浮かべていたエリザが、ぼそ、とつぶやく。
「前から思てたけど、……先生、教えんの下手くそやで?」
「マジで? いつも君に教えてるみたく、分かりやすく説明したつもりだったんだけどね」
「ソコも前から言おうと思てたけど、アタシも『何やソレ? どう言う意味やろ?』って思う時、チョイチョイあるもん」
「……マジかー」
モールは肩をすくめ、苦笑いを返した。
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鉱山の村。
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六目狼との遭遇から2日、3日と過ぎたところで、モールたちはとある村にたどり着いた。
「ココが、君が言ってた村だといいんだけどねぇ」
「っぽいで。ほら、山あるし」
エリザが指差した方向には、確かに山と、そのふもとにたむろする人間がいた。
モールはそのうちの一人に近付き、声を掛けてみる。
「ちょいと聞いていいかね?」
「ん?」
「この山、何か採れるね? 人が出入りしてるっぽいけども」
尋ねられた男は、素直に答えてくれた。
「ああ、色々採れるよ。青銅とか錫とか」
「へぇ?」
これを聞いて、モールはエリザの頭をぽんぽんと撫でる。
「エリザ、どーやらココが私らの目的地みたいだね」
「せやね。後は原料もらえたらええんやけど」
と、二人の話を聞いていたらしい男が尋ね返してくる。
「原料? あんたら、ここの鉱物が欲しいのか?」
「ああ、ちょいとね。ドコに行けば話できるね?」
「向こうに集めてるところがある。親分もそこにいるよ。俺も用事あるから、良けりゃ案内するぞ」
「どーも」
男に案内され、二人は大きな小屋の中に通された。
男は小屋の奥にいる、黒髪に銀色の毛並みをした狼獣人に声をかける。
「親分、新しい坑道のヤツ掘ってきました」
「おう、後で調べる。……そっちの二人は?」
声をかけられ、モールたちは狼獣人に応える。
「どーも。私はモール」
「アタシはエリザ・アーティエゴです」
「あん? アーティエゴ? ……どこかで聞いた名だな」
狼獣人は首を傾げ、やがて「ああ」と声を上げた。
「東の村にいた宝飾屋の名だな。そう言や、あの『狐』の親父と毛並みが同じだ。そこの子か?」
「うん」
「大人と一緒とは言え、よく無事に来られたな。ここまで全然、バケモノに襲われなかったのか? 運がいい」
そう言われて、モールが首を横に振る。
「いや、六つ目の狼に襲われたんだけどもね。燃やしてやった」
「燃やし、……はぁ!?」
狼獣人は目を丸くし、聞き返してくる。
「アレを燃やしただと? どう言う意味だ?」
「そのまんまの意味だね。跡形もなく、燃やし尽くしてやった」
「冗談だろ?」
「マジ」
「……マジかよ」
狼獣人は驚きで毛羽立ったらしい毛並みを整えつつ、こう返してきた。
「詳しく話を聞かせてくれ。ソイツにゃ手を焼いてたんだ」
「いいとも。……んで、アンタの名前は?」
「ああ、そうだった。
俺はラボ・ネール。ここいらの鉱山やら畑やら一帯を取り仕切ってる」
場所をラボの家に移し、モールは六目狼を倒した話、エリザを自分の弟子として身柄を引き受けた話、そして魔杖を造るために原料を必要としている話を語った。
「まじょう? まあ、何だか分からんが」
話を聞き終えたラボは、まだ納得の行かなさそうな顔をしつつも、モールの頼みに応じてくれた。
「マジにあの狼やらを倒せるってなら、青銅でも何でも、欲しいだけくれてやるよ。
ただ、俺たちにもその、……何てったっけ、魔術? を教えてくれると助かるんだが」
「使えるかどうかは別だけど、教えて欲しいってんならいくらでも。
ついでにエリザ。今まで道すがらざっくり教えてたけども、ここらで君にもしっかり、基本を教えとこうかね」
「はーい」
エリザの故郷と違って、ラボが治めるこの村はよそ者に対して寛大であり、モールたちにも気さくに応じ、また、素直に話を聞いてくれた。
(ってか、エリザんトコに馴染めなかったヤツらがこっちに流れて集まってきたって感じもするねぇ)
モールは彼らの中にも魔術の素質がある者がいることを確かめた上で、エリザも交えて魔術の講義を行うことにした。
「……ってワケで、基本的にゃ最後にキーワードを宣言するコトで発動するようになってるね。んじゃま、実践してみな」
モールのざっくりとした指導に、皆それぞれ、魔術を使おうと試みる。
が――。
「……出ない」
「どうやるんだ? こうか?」
「出た? 出たのかこれ?」
ほとんどの者が、まともに扱えないでいる。
そんな中、一人空中に火球を浮かべていたエリザが、ぼそ、とつぶやく。
「前から思てたけど、……先生、教えんの下手くそやで?」
「マジで? いつも君に教えてるみたく、分かりやすく説明したつもりだったんだけどね」
「ソコも前から言おうと思てたけど、アタシも『何やソレ? どう言う意味やろ?』って思う時、チョイチョイあるもん」
「……マジかー」
モールは肩をすくめ、苦笑いを返した。
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