黄輪雑貨本店 新館


    「琥珀暁」
    琥珀暁 第2部

    琥珀暁・鳳凰伝 1

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    神様たちの話、第50話。
    「壁」を登る。

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    1.
    「はあ、はあ、……ふうっ、はあ」
     エリザの荒い呼吸を背後に感じ、モールは振り向く。
    「しんどくなったら言いなよ。その都度、休憩取ってやるから。急ぐ旅じゃないしね」
    「は、はーい」
     二人は今、山を登っている。これまで二人の旅路において、ずっと視界の端に在り続けた、あの壁のような山である。
     とは言え、まだ幼いエリザにとっては、こんな山を登ることは無謀な挑戦、いや、自殺行為にも等しい行いである。
     登山開始から1時間も経たないうち、彼女は息も切れ切れに、師匠を呼んだ。
    「せ、先生ぇ、も、もうアカぁン……」
    「お、んじゃここいらで休憩しようかね」
     モールはそこで立ち止まり、造ったばかりの魔杖「ナインテール」で少し上を指した。
    「あそこに平らなトコがあるね。あの辺りまで行った方が安全だね。もうちょい頑張って」
    「はぁー……い」

     3分後、エリザはその平らな場所に着くなり、ぺちゃりと座り込んだ。
    「はぁっ、はぁっ、……きっついわぁ」
    「ゆっくり休みな。無理していい道じゃないからね」
     モールもエリザの横に座り、こう続けた。
    「とは言え、のんびりし過ぎてもあんまり良くないけどね」
    「なんで?」
    「1つ。朝方に登山を始めたけども、どう考えたって今日中に登頂ってワケにゃ行かないからね。必ず何日かは、夜を過ごさなきゃならない。
     だから日のあるうちに、十分休める場所を確保しなきゃ危ない。ココいらはまだ標高が低いから、昼間はそこそこあったかいとしても、夜中になったら確実に寒くなるだろうからね」
    「ココやったらアカンのん?」
     尋ねたエリザの頭をぽんぽんと撫でつつ、モールは説明を続ける。
    「悪くはないけどさ、登山はまだ序盤も序盤だよ? こんなトコで一晩明かしてたら、とてもひと月やふた月じゃ登り切れないね。
     ソレにさ、ココはテントとか張るにゃちょこっと狭いね。どうせ一晩休むなら、ゆっくり足を伸ばせる場所の方がいいさ。
     んで、理由の2つ目。今まで観察してきた経験からなんだけどね」
     言いつつ、モールは立ち上がり、魔杖を構える。
    「どうもコイツら、人間の生活圏ギリギリに棲息してるっぽいんだよね。ココじゃまだ、ヤツらの棲息圏内なのさ」
     次の瞬間、魔杖の先からぱぱぱ……、と光線が飛ぶ。
     九条の光線は、いつの間にかモールたちの足元十数メートルまで迫っていた、そのトカゲと鳥の中間のようなバケモノたちを串刺しにした。
    「だからココでのんびりしてたら、おちおち寝ても休んでもいられないってワケさね。
     さてエリザ、そろそろ息は整ってきたかね?」
    「あ、うん」
    「じゃ、再開。頑張ろうね」
     モールに手を引かれ、エリザは立ち上がった。

     その日は5回休憩を挟み、太陽がエリザの目線より下に落ちてきた頃になって、ようやくモールが告げた。
    「今日はもう、この辺りがいい加減ってトコだね。今晩はココで野宿するか」
    「はぁ~……い……」
     エリザが相当疲労していることは、顔を見れば明らかだった。と言うよりも――。
    (声が『もうアカン~、死にそう~』って感じだね)
     モールは苦笑しつつ、辺りを見回す。
    「よし、本格的に暗くなってきちゃう前にテント張るか」
    「はぁ~い」
     間延びしたエリザの声に、モールは今度こそ噴き出した。
    「ふっ、ふふふふ……。いや、エリザ。疲れてるだろ? 君はソコで休んでな。私がチョイチョイとやってやるよ」
    「ええのん~……?」
    「その代わり、やり方はしっかり見てなよ。明日は君にもやってもらうつもりだしね」
    「分かったぁ~」
     くたっと座り込んでいるエリザが手を挙げたところで、モールは呪文を唱え、テントを組み立て始めた。
    「……」
     心底疲れ切った表情を浮かべつつも、エリザはじっとモールの一挙手一挙動を見つめている。
     それを横目で確認しつつ、モールは、今度はエリザに分からないよう、うっすらと笑っていた。
    (ふっふふ、真面目だねぇ)

    - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -

    ようやく50話突破。
    遅筆の原因については以前に言及したので、今後のことを考えます。

    「双月千年世界」シリーズを連載する以前、その原型となる小説を執筆していました。
    基本的に世界観と登場キャラは8割程度同じですが、展開がまるで違います。
    また、元の小説は時系列順に進めていましたが、「双月千年世界」は前後しています。
    その辺りの関係から、「蒼天剣」で触れていた「過去の話、歴史」が、「琥珀暁」と合わなくなっている箇所が多々あります。
    恐らく今後、「琥珀暁」の執筆が進むにつれて、「蒼天剣」や「火紅狐」に多数の修正が入ることが予想されます。
    昨日も触れましたが、またあの2人が更新報告を行う日も、そう遠くないでしょう。

    第2部の終了は恐らく6月半ばくらいですが、第3部は夏が終わるまでには脱稿し、連載したいところ。
    9ヶ月も待たせないよう、努力します。
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