「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 第2部
琥珀暁・鳳凰伝 3
神様たちの話、第52話。
「旧世界(Old World)」からの三賢者。
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3.
モールは二本目の串に手を伸ばしつつ、自分のことを語り始めた。
「私ともう二人、ココの山頂近くに住んでたんだ。詳しく数えちゃいないけど、半年かそこらくらいね。
で、何やかんやあって二人ともどっか行っちゃってね。いや、ケンカ別れしたとかそーゆーコトじゃない。二人とも、いや、私も含めて三人全員、好奇心旺盛なタチでね。『新しい世界』が見たくて見たくて、じっくりじっくり調べたくてたまらなくなっちゃったのさ」
「『新しい世界』?」
「君たちの今いる、この世界のコトさ。
そう、もっとぶっちゃけるとね、私もその二人も、別の世界から来たんだよね。いや、別の世界と言うよりも、『過去』、『古代』と言うべきか」
「アタシがアホなんか、先生の説明がド下手クソなんか分からんけど、何言うてるんかさっぱりやで?」
エリザににらまれ、モールは口を尖らせる。
「まーたそーゆーコト言う。……まあ、でも、確かに説明がし辛い話ではあるんだ、確かにね。……んー、どう言えばいいもんかねぇ。とりあえず事実を、思い付く順に言うしかないね。ソレ以外にいい説明の仕方が思い付かないし。
まず1つ目。今言った通り、私とその二人、合わせて三人は、とんでもなく昔の世界から来た。そしてその世界は、今よりずっと、ずーっと、文明の進んだ世界だったのさ」
「今より? 昔やのに?」
「歴史は人間社会と一緒さ。優秀でできるヤツだって、若くてひよっこの頃からそうだったワケじゃないし、いつかは老いて死ぬ。でも死ぬ前に子供を遺すもんさ。いずれ育っていく、ひよっこをね。
ソレと一緒で、その超文明をたたえた『古い世界』は老いて死んだ。ソコから『新たな世界』ができたってのも一緒。だけども残念だったのは、『古い世界』が『新しい世界』に何にも知識やら経験やらを遺さず、逝っちゃったコトさ。
だから遺された『新しい世界』にゃ、なーんにも受け継がれてないね。まっさら、まっしろ。でも自分でちょこっと、ちょこっとずつ、知識や経験を蓄え始めてる。
ソレが私ら三人にとって、とっても興味深くて、たまらなく面白くて、コレ以上無いくらいにワクワクさせるコトだったのさ」
「せやから先生もその二人も、家を出てったんやね」
「そう言うコト。……ああ、そうそう。何を隠そう、私らが目指すのはその家なんだ。君への修行の仕上げを、ソコでするつもりでね」
「へぇ~」
山を登り始めて1週間も経つ頃、二人は雲を見下ろせる位置にまで到達していた。
「ふしぎっちゅうか、すごいっちゅうか、……キレイやなぁ」
「だねぇ」
山道をゆっくりと進みながら、モールはまた、自分と友人のことを語り始めた。
「私はココを、南に向かって降りた。ゼロが北に行ってきたってのを、本人から聞いたしね」
「ゼロ?」
「友達の名前さ。まだ20代だってのに、白髪にヒゲぼっさぼさのヤツでね。中身も相当浮世離れしてた、とんでもない変わり者だったよ。私から見てもね」
「もう一人は? 何て名前なん?」
「あん?」
尋ねられ、モールはきょとんとした顔をエリザに向ける。
「モールさんの話ん中で、もう一人、……何やっけ、ほー? って言うんもよお出てくるやん?」
「ああ、そう言や話してたかもね。そう、もう一人は鳳凰(ほうおう)だね。ソイツも変わり者さ。私やゼロに、負けず劣らずのね。
何て言うか、鳳凰は大抵のコトに無関心な感じだったね。世俗やら社会問題やら健康ブームやら、そう言うの全部『そんなのボクに関係ある?』で済ますヤツだった。
ともすると自分のコトにすら、無頓着な時があったね」
「例えば?」
「ソコいらの草やらキノコやら、毒かどうかも調べずに、いきなりひょいっと口に入れるんだよね。『んなコトしてたら君、下手したら死ぬっての』ってたしなめてみても、『死んだら死んだ時だよ』っつって。
アイツは自分の生き死にすら、どーでもいいやってヤツなのさ。正直今現在、ちゃんと生きてるのか、不安になるヤツだね。
ただ、まあ、もしちゃんと生きてるとするなら」
モールは道の先、窪(くぼ)みになっている場所を魔杖で指した。
「あそこでまだ、暮らしてるかも知れないね」
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「旧世界(Old World)」からの三賢者。
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モールは二本目の串に手を伸ばしつつ、自分のことを語り始めた。
「私ともう二人、ココの山頂近くに住んでたんだ。詳しく数えちゃいないけど、半年かそこらくらいね。
で、何やかんやあって二人ともどっか行っちゃってね。いや、ケンカ別れしたとかそーゆーコトじゃない。二人とも、いや、私も含めて三人全員、好奇心旺盛なタチでね。『新しい世界』が見たくて見たくて、じっくりじっくり調べたくてたまらなくなっちゃったのさ」
「『新しい世界』?」
「君たちの今いる、この世界のコトさ。
そう、もっとぶっちゃけるとね、私もその二人も、別の世界から来たんだよね。いや、別の世界と言うよりも、『過去』、『古代』と言うべきか」
「アタシがアホなんか、先生の説明がド下手クソなんか分からんけど、何言うてるんかさっぱりやで?」
エリザににらまれ、モールは口を尖らせる。
「まーたそーゆーコト言う。……まあ、でも、確かに説明がし辛い話ではあるんだ、確かにね。……んー、どう言えばいいもんかねぇ。とりあえず事実を、思い付く順に言うしかないね。ソレ以外にいい説明の仕方が思い付かないし。
まず1つ目。今言った通り、私とその二人、合わせて三人は、とんでもなく昔の世界から来た。そしてその世界は、今よりずっと、ずーっと、文明の進んだ世界だったのさ」
「今より? 昔やのに?」
「歴史は人間社会と一緒さ。優秀でできるヤツだって、若くてひよっこの頃からそうだったワケじゃないし、いつかは老いて死ぬ。でも死ぬ前に子供を遺すもんさ。いずれ育っていく、ひよっこをね。
ソレと一緒で、その超文明をたたえた『古い世界』は老いて死んだ。ソコから『新たな世界』ができたってのも一緒。だけども残念だったのは、『古い世界』が『新しい世界』に何にも知識やら経験やらを遺さず、逝っちゃったコトさ。
だから遺された『新しい世界』にゃ、なーんにも受け継がれてないね。まっさら、まっしろ。でも自分でちょこっと、ちょこっとずつ、知識や経験を蓄え始めてる。
ソレが私ら三人にとって、とっても興味深くて、たまらなく面白くて、コレ以上無いくらいにワクワクさせるコトだったのさ」
「せやから先生もその二人も、家を出てったんやね」
「そう言うコト。……ああ、そうそう。何を隠そう、私らが目指すのはその家なんだ。君への修行の仕上げを、ソコでするつもりでね」
「へぇ~」
山を登り始めて1週間も経つ頃、二人は雲を見下ろせる位置にまで到達していた。
「ふしぎっちゅうか、すごいっちゅうか、……キレイやなぁ」
「だねぇ」
山道をゆっくりと進みながら、モールはまた、自分と友人のことを語り始めた。
「私はココを、南に向かって降りた。ゼロが北に行ってきたってのを、本人から聞いたしね」
「ゼロ?」
「友達の名前さ。まだ20代だってのに、白髪にヒゲぼっさぼさのヤツでね。中身も相当浮世離れしてた、とんでもない変わり者だったよ。私から見てもね」
「もう一人は? 何て名前なん?」
「あん?」
尋ねられ、モールはきょとんとした顔をエリザに向ける。
「モールさんの話ん中で、もう一人、……何やっけ、ほー? って言うんもよお出てくるやん?」
「ああ、そう言や話してたかもね。そう、もう一人は鳳凰(ほうおう)だね。ソイツも変わり者さ。私やゼロに、負けず劣らずのね。
何て言うか、鳳凰は大抵のコトに無関心な感じだったね。世俗やら社会問題やら健康ブームやら、そう言うの全部『そんなのボクに関係ある?』で済ますヤツだった。
ともすると自分のコトにすら、無頓着な時があったね」
「例えば?」
「ソコいらの草やらキノコやら、毒かどうかも調べずに、いきなりひょいっと口に入れるんだよね。『んなコトしてたら君、下手したら死ぬっての』ってたしなめてみても、『死んだら死んだ時だよ』っつって。
アイツは自分の生き死にすら、どーでもいいやってヤツなのさ。正直今現在、ちゃんと生きてるのか、不安になるヤツだね。
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