「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 第2部
琥珀暁・鳳凰伝 5
神様たちの話、第54話。
本物? 偽物?
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
5.
「だっ、だっ、だ、誰やアンタ!?」
後ずさり、両手を胸の前で組みながら、エリザは怒鳴るように尋ねる。
「誰って、ボクのコト?」
「他に誰がおるっちゅうんや!?」
「ああ、いないねぇ」
きょろきょろと辺りを見回し、その奇抜な色合いの毛並みをした獣人が答える。
「まあ、でもさ。別に誰でもいいでしょ?」
「良くないから言うねんや! あ、アタシの独り言、聞いてたやろ!?」
「『そらまだちょこっとやけど』くらいからは」
「ふざけんなボケぇ!」
怒りと恥ずかしさに任せ、エリザは青年を平手打ちしようとする。
が、青年は事も無げにひょいとかわし、手をぺらぺらと振って返す。
「いや、思春期の乙女によくある悩みだと思うよ?
女の子は誰でも、そーゆーコト考えるっぽいし。ボクの姉弟子の麒麟だって、いっぺん『マコトさんみたいな人がボクの恋人になってくれたらなぁ』なんて、アイツのキャラに似合わない、ふざけたコト言ってたコトあるし。
ソレに、妹も似たよーなコト……」「知るかぁッ!」
逆上したエリザは聞く耳を持たず、護身用に持っていた魔杖を振り回す。
「わ、わ、ちょっと、危ないって。
って言うか、魔杖をそーゆー使い方しちゃダメだってば。魔杖が泣くよ? 魔法使いに向いているタイプなのに、キミ」
「そんなん見ただけで分かるんか!?」
苛立ち気味に尋ねたエリザに、青年はうんうんとうなずく。
「ボクは分かるんだ。見ただけで。キミも、って言うかキミくらいなら、言葉を介さずとも分かるんじゃない?
何て言うか、肌で感じれるって言うか、そーゆーレベルで」
「ワケ分からんコトばっか、ゴチャゴチャ言うな! 師匠みたいにアレやコレや……」
そこまで言って、エリザは――癪に障るものの、確かに青年がそう言ったように――直感的に、ピンと来た。
「……ホウオウ? アンタもしかして、ホウオウちゃうん?」
「ふぇ?」
そこでようやく、青年が動揺した様子を見せる。
「なんでボクの名前知ってんの?」
「師匠から聞いた。何ちゅうか、メチャメチャな性格しとるって」
「ひどい言われようだなぁ。君の師匠って誰?」
尋ねた鳳凰に、エリザが答えようとした、その瞬間――。
「あれ?」
エリザの背後から、声が投げかけられる。
「……」
遺跡から出てきたモールが、鳳凰を凝視する。
「……」
一方の鳳凰も、モールを凝視している。
そして――揃って、こう尋ねた。
「誰?」
てっきり揃って再会の感動を分かち合うものと思っていたエリザは、呆気に取られる。
「……えーと、お二人さん?」
「ん?」「どしたね?」
「アンタはホウオウやんな?」
手を向けられ、鳳凰はこくりとうなずく。
「そうだよ」
「ほんで師匠? この人、ホウオウやないのん?」
尋ねられ、モールは首を傾げる。
「見たコト無いね」
「そりゃまあ、変装してるし」
そう言って、鳳凰は空を見上げる。
「ドコにどんな監視があるか分かんないもん。空なんて一番厄介だ。
じゃあ、まあ、変装解くからさ、中入ろう。……多分、モールかなって気もする人」
鳳凰にそう声をかけられ、モールは憮然とした様子でうなずいた。
「そう言うしゃべり方は鳳凰っぽいね。そうだよ、私ゃモールさ」
「やっぱり? でも何て言うか、うーん、……全部違わなくない? 特に見た目が」
「あー」
そう言われて、モールは自分の体に目をやる。
「なるほどね。そりゃ分かるワケ無いか。分かった、私もちゃんと説明するね」
「助かる」
ここでようやく、鳳凰もモールも、互いに相好を崩した。
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本物? 偽物?
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5.
「だっ、だっ、だ、誰やアンタ!?」
後ずさり、両手を胸の前で組みながら、エリザは怒鳴るように尋ねる。
「誰って、ボクのコト?」
「他に誰がおるっちゅうんや!?」
「ああ、いないねぇ」
きょろきょろと辺りを見回し、その奇抜な色合いの毛並みをした獣人が答える。
「まあ、でもさ。別に誰でもいいでしょ?」
「良くないから言うねんや! あ、アタシの独り言、聞いてたやろ!?」
「『そらまだちょこっとやけど』くらいからは」
「ふざけんなボケぇ!」
怒りと恥ずかしさに任せ、エリザは青年を平手打ちしようとする。
が、青年は事も無げにひょいとかわし、手をぺらぺらと振って返す。
「いや、思春期の乙女によくある悩みだと思うよ?
女の子は誰でも、そーゆーコト考えるっぽいし。ボクの姉弟子の麒麟だって、いっぺん『マコトさんみたいな人がボクの恋人になってくれたらなぁ』なんて、アイツのキャラに似合わない、ふざけたコト言ってたコトあるし。
ソレに、妹も似たよーなコト……」「知るかぁッ!」
逆上したエリザは聞く耳を持たず、護身用に持っていた魔杖を振り回す。
「わ、わ、ちょっと、危ないって。
って言うか、魔杖をそーゆー使い方しちゃダメだってば。魔杖が泣くよ? 魔法使いに向いているタイプなのに、キミ」
「そんなん見ただけで分かるんか!?」
苛立ち気味に尋ねたエリザに、青年はうんうんとうなずく。
「ボクは分かるんだ。見ただけで。キミも、って言うかキミくらいなら、言葉を介さずとも分かるんじゃない?
何て言うか、肌で感じれるって言うか、そーゆーレベルで」
「ワケ分からんコトばっか、ゴチャゴチャ言うな! 師匠みたいにアレやコレや……」
そこまで言って、エリザは――癪に障るものの、確かに青年がそう言ったように――直感的に、ピンと来た。
「……ホウオウ? アンタもしかして、ホウオウちゃうん?」
「ふぇ?」
そこでようやく、青年が動揺した様子を見せる。
「なんでボクの名前知ってんの?」
「師匠から聞いた。何ちゅうか、メチャメチャな性格しとるって」
「ひどい言われようだなぁ。君の師匠って誰?」
尋ねた鳳凰に、エリザが答えようとした、その瞬間――。
「あれ?」
エリザの背後から、声が投げかけられる。
「……」
遺跡から出てきたモールが、鳳凰を凝視する。
「……」
一方の鳳凰も、モールを凝視している。
そして――揃って、こう尋ねた。
「誰?」
てっきり揃って再会の感動を分かち合うものと思っていたエリザは、呆気に取られる。
「……えーと、お二人さん?」
「ん?」「どしたね?」
「アンタはホウオウやんな?」
手を向けられ、鳳凰はこくりとうなずく。
「そうだよ」
「ほんで師匠? この人、ホウオウやないのん?」
尋ねられ、モールは首を傾げる。
「見たコト無いね」
「そりゃまあ、変装してるし」
そう言って、鳳凰は空を見上げる。
「ドコにどんな監視があるか分かんないもん。空なんて一番厄介だ。
じゃあ、まあ、変装解くからさ、中入ろう。……多分、モールかなって気もする人」
鳳凰にそう声をかけられ、モールは憮然とした様子でうなずいた。
「そう言うしゃべり方は鳳凰っぽいね。そうだよ、私ゃモールさ」
「やっぱり? でも何て言うか、うーん、……全部違わなくない? 特に見た目が」
「あー」
そう言われて、モールは自分の体に目をやる。
「なるほどね。そりゃ分かるワケ無いか。分かった、私もちゃんと説明するね」
「助かる」
ここでようやく、鳳凰もモールも、互いに相好を崩した。
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