「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 第2部
琥珀暁・鳳凰伝 6
神様たちの話、第55話。
第三の賢者。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
6.
遺跡に入り、エリザたちが居間として使っている部屋に入ったところで、鳳凰が呪文を唱え始めた。
「『メタモルフォーゼ:解除』」
途端、鳳凰の姿が――以前にエリザがモールから聞いたものと同じ姿の――茶髪の短耳に変わる。
「うん、間違い無く鳳凰だね」
それを確認し、モールが深くうなずく。
対する鳳凰は、肩をすくめてこう返した。
「ソレでさ、モール。何でキミさ、姿が違うの?」
「ソレなんだけどねぇ」
そう前置きし、モールは鳳凰に耳打ちする。
「……で……多分……だから……結局……そーゆーコトなんじゃないかなーって」
「ふーん……? まあ確かにキミって、普通の人間と色々事情が違うもんねぇ。でも納得した。
ソレで、この子は? なんかこの子、キミのコトを師匠って呼んでたけど」
「ああ、魔術の弟子だね。不思議なコトにDの方のマフ持ってた」
「Dの方? Pじゃなくて?」
モールの話に、鳳凰は目を丸くする。
「ああ、Dの方だね。多分『旧世界』の終わりで暴走したのが生物的に変異して、この世界の人間とくっついちゃってるんじゃないかって思う。ミトコンドリアみたく」
「怖い仮説だなぁ」
モールと鳳凰がこそこそと話し合っているのを見て、エリザが頬をふくらませる。
「あーもー、ワケ分からんコトごちゃごちゃ言うてるんが二人に増えてー」
エリザは二人の後ろに回り込み、ぺち、ぺちっと尻を叩く。
「あいてっ」「なっ、なになに?」
「ワケ分からん話ダラダラ聞かさんといて。ホウオウさん自己紹介して。お腹すいた。あと話聞いてて疲れた」
エリザから箇条式に要求と不満を聞かされ、モールは苦い顔をした。
「あー、……うん。ほんじゃ、ご飯にしようかね」
食事の用意が整い、3人とも卓に着いたところで、鳳凰が切り出した。
「自己紹介してって言ってたね、そう言や。
ボクの名前は鳳凰。おめでたい鳥の名前から取られたんだ」
「おめでたい? ……アホってコト?」
エリザの言葉に、鳳凰は大げさにのけぞる。
「ち、違うよぉ~。おめでたいってのは、縁起がいいって意味さ。
まあ、ともかくソレが、ボクの号なんだ。ちなみに本名はモールにもゼロにも秘密。って言うか二人の本名もボク、知らないしね」
「え? 師匠の名前、ウソのんやったん?」
目を丸くして尋ねたエリザに、モールは肩をすくめて返す。
「今じゃ本名みたいなもんさね。今まで通り、モールでいい。新しい世界に来たんだし、名前も新しくなくちゃ、ね。
私の話より、今聞くのは鳳凰の話さ」
「あ、せやったね」
師弟揃ってくるっと鳳凰に向き直り、彼の話を待つ。
「ああ、まあ、……えーと、ボクの名前は言ったし、後は何を話せばいいかな」
「ホウオウさんも魔法使いなん?」
「ん? まあ、そんなもんなのかな」
と、鳳凰がくるんとモールに振り返り、尋ねてくる。
「も、ってコトはモールもそう言ったの?」
「ん、まあ、うん。いや、だってさ」
モールはどこか気恥ずかしそうな様子で、こう返した。
「君、、魔術のコト、一から何から説明して、この世界の人に分かってもらえると思うね?」
「……んー、まあ、そうか。確かに考えると、ちょっと面倒かもね。
ゼロがいたトコの人たちも、そんなに詳しくなさそうだったし」
「……ん、ん?」
鳳凰の一言に、今度はモールが目を丸くした。
「ちょい待ち、君もしかして、ゼロに会ったね?」
「『会ったの』って、長い付き合いじゃない。キミもボクも」
「じゃなくて、最近会ったのかってコトだね」
「あ、うん。2年前くらいかなぁ」
「マジか」
モールは立ち上がり、鳳凰に詰め寄る。
「元気してたね、アイツ?」
「さあ?」
「さあって……」
「正確に言うと、直には会ってないんだ。彼の友達っぽいのから聞いただけで」
「アホかっ」
モールは席に戻り、天を仰いだ。
「本っ当に、君ってヤツは。前々から思ってたけども、重要なトコをわざと外すよねぇ?」
「いいじゃん。元気そうってコトは雰囲気で分かったし。
ソレよりかさ、気になるならキミたちが直に行けばいいんじゃない?」
「そうさせてもらうね。ココ数年山ごもりしてたし、そろそろ下界に戻ってみてもいいかもって気はしてたしね」
それを聞いて、今度は鳳凰が尋ねてくる。
「そう言やさ、ゼロのコト知らないってコトだし、北には全然行ったコト無いの?」
「ああ。何年か前に南をちょろっと回ったくらいさね」
「南ばっかり? へー、よく無事だったね」
その言葉に、モールもエリザもけげんな表情を浮かべた。
@au_ringさんをフォロー
第三の賢者。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
6.
遺跡に入り、エリザたちが居間として使っている部屋に入ったところで、鳳凰が呪文を唱え始めた。
「『メタモルフォーゼ:解除』」
途端、鳳凰の姿が――以前にエリザがモールから聞いたものと同じ姿の――茶髪の短耳に変わる。
「うん、間違い無く鳳凰だね」
それを確認し、モールが深くうなずく。
対する鳳凰は、肩をすくめてこう返した。
「ソレでさ、モール。何でキミさ、姿が違うの?」
「ソレなんだけどねぇ」
そう前置きし、モールは鳳凰に耳打ちする。
「……で……多分……だから……結局……そーゆーコトなんじゃないかなーって」
「ふーん……? まあ確かにキミって、普通の人間と色々事情が違うもんねぇ。でも納得した。
ソレで、この子は? なんかこの子、キミのコトを師匠って呼んでたけど」
「ああ、魔術の弟子だね。不思議なコトにDの方のマフ持ってた」
「Dの方? Pじゃなくて?」
モールの話に、鳳凰は目を丸くする。
「ああ、Dの方だね。多分『旧世界』の終わりで暴走したのが生物的に変異して、この世界の人間とくっついちゃってるんじゃないかって思う。ミトコンドリアみたく」
「怖い仮説だなぁ」
モールと鳳凰がこそこそと話し合っているのを見て、エリザが頬をふくらませる。
「あーもー、ワケ分からんコトごちゃごちゃ言うてるんが二人に増えてー」
エリザは二人の後ろに回り込み、ぺち、ぺちっと尻を叩く。
「あいてっ」「なっ、なになに?」
「ワケ分からん話ダラダラ聞かさんといて。ホウオウさん自己紹介して。お腹すいた。あと話聞いてて疲れた」
エリザから箇条式に要求と不満を聞かされ、モールは苦い顔をした。
「あー、……うん。ほんじゃ、ご飯にしようかね」
食事の用意が整い、3人とも卓に着いたところで、鳳凰が切り出した。
「自己紹介してって言ってたね、そう言や。
ボクの名前は鳳凰。おめでたい鳥の名前から取られたんだ」
「おめでたい? ……アホってコト?」
エリザの言葉に、鳳凰は大げさにのけぞる。
「ち、違うよぉ~。おめでたいってのは、縁起がいいって意味さ。
まあ、ともかくソレが、ボクの号なんだ。ちなみに本名はモールにもゼロにも秘密。って言うか二人の本名もボク、知らないしね」
「え? 師匠の名前、ウソのんやったん?」
目を丸くして尋ねたエリザに、モールは肩をすくめて返す。
「今じゃ本名みたいなもんさね。今まで通り、モールでいい。新しい世界に来たんだし、名前も新しくなくちゃ、ね。
私の話より、今聞くのは鳳凰の話さ」
「あ、せやったね」
師弟揃ってくるっと鳳凰に向き直り、彼の話を待つ。
「ああ、まあ、……えーと、ボクの名前は言ったし、後は何を話せばいいかな」
「ホウオウさんも魔法使いなん?」
「ん? まあ、そんなもんなのかな」
と、鳳凰がくるんとモールに振り返り、尋ねてくる。
「も、ってコトはモールもそう言ったの?」
「ん、まあ、うん。いや、だってさ」
モールはどこか気恥ずかしそうな様子で、こう返した。
「君、、魔術のコト、一から何から説明して、この世界の人に分かってもらえると思うね?」
「……んー、まあ、そうか。確かに考えると、ちょっと面倒かもね。
ゼロがいたトコの人たちも、そんなに詳しくなさそうだったし」
「……ん、ん?」
鳳凰の一言に、今度はモールが目を丸くした。
「ちょい待ち、君もしかして、ゼロに会ったね?」
「『会ったの』って、長い付き合いじゃない。キミもボクも」
「じゃなくて、最近会ったのかってコトだね」
「あ、うん。2年前くらいかなぁ」
「マジか」
モールは立ち上がり、鳳凰に詰め寄る。
「元気してたね、アイツ?」
「さあ?」
「さあって……」
「正確に言うと、直には会ってないんだ。彼の友達っぽいのから聞いただけで」
「アホかっ」
モールは席に戻り、天を仰いだ。
「本っ当に、君ってヤツは。前々から思ってたけども、重要なトコをわざと外すよねぇ?」
「いいじゃん。元気そうってコトは雰囲気で分かったし。
ソレよりかさ、気になるならキミたちが直に行けばいいんじゃない?」
「そうさせてもらうね。ココ数年山ごもりしてたし、そろそろ下界に戻ってみてもいいかもって気はしてたしね」
それを聞いて、今度は鳳凰が尋ねてくる。
「そう言やさ、ゼロのコト知らないってコトだし、北には全然行ったコト無いの?」
「ああ。何年か前に南をちょろっと回ったくらいさね」
「南ばっかり? へー、よく無事だったね」
その言葉に、モールもエリザもけげんな表情を浮かべた。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
2018.12.14 修正
2018.12.14 修正



@au_ringさんをフォロー
総もくじ
双月千年世界 3;白猫夢

総もくじ
双月千年世界 2;火紅狐

総もくじ
双月千年世界 1;蒼天剣

総もくじ
双月千年世界 3;白猫夢

総もくじ
双月千年世界 2;火紅狐

総もくじ
双月千年世界 1;蒼天剣

もくじ
双月千年世界 目次 / あらすじ

もくじ
他サイトさんとの交流

もくじ
短編・掌編

もくじ
未分類

もくじ
雑記

もくじ
クルマのドット絵

もくじ
携帯待受

もくじ
カウンタ、ウェブ素材

もくじ
今日の旅岡さん

- ジャンル:[小説・文学]
- テーマ:[自作小説(ファンタジー)]
~ Trackback ~
トラックバックURL
⇒
⇒この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
~ Comment ~