「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 第2部
琥珀暁・群獣伝 2
神様たちの話、第58話。
深刻化する央中。
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2.
山を降り、道に出たところで、モールが「ちょいと」と声を上げた。
「……なんです?」
やはり邪険にあしらおうとしたエリザに、モールは真面目な声を作って続ける。
「この道を見て、君は何か感じないね?」
「は?」
うざったそうな顔を返しつつも、エリザは自分の足元に視線を落とす。
「……前に歩いた時より、広くなっとる気ぃはするけど」
「ソレさ。つまり体積だけ考えても、昔よりデカいバケモノが多くなってるってコトは、容易に予測できる。
やはり鳳凰の言ってた通り、ヤバいバケモノが闊歩しまくってるってコトだろうね」
「ソレがどないしたん?」
「ちょっとは頭冷やして考えろ、おバカ」
モールはエリザに近付き、べちっと頭を叩いた。
「あいたっ!?」
「成長したのか、昔のまんまか? 私に『見てほしい』ってんならね、成長したってトコを見せてみな。
よーく思い出してみな、この道くらい幅のデカいのが昔、そんなにゴロゴロいたかね?」
「む~……」
頭をさすりながら、エリザは渋々と言った様子で答える。
「そら確かにこんなデカいのん、いてた覚えはあらへんよ。でも『ゴロゴロしとる』って言うたけど、いっぱいおるってなんで分かるん?」
「道ってのは、人やらケモノやらが行き来するからできるものだろ? コレだけしっかり道が作られてるって言うなら、ソレだけデカいヤツの行き来が多いってコトだ。
ソレともエリザ、まさか君はこんな幅のデカい人間が何人もいるなんて思ってるの? まさか、だよねぇ?」
「ぐ、……ふんっ」
顔を真っ赤にし、背を向けたエリザに、モールはいつもの飄々とした声をかける。
「エリザ、山を降りて人間の生活圏に戻って来た今、ココはドコだってバケモノの捕食圏内、超危険ゾーンだね。言うまでもなく油断は禁物だし、二手、三手先を読んで行動してなきゃ、命取りになるかも知れない。
熱くなってるコトについては特に言うコト無いね。戦う時は気持ちが燃えてなきゃダメだしね。でも冷静に考えるってコトも、絶対忘れちゃいけないからね。
そんなワケでだ、エリザ」
モールはエリザの前に回り込み、道の先を魔杖で指し示した。
「数年前みたく、のんきな道のりと行かないコトは明白だね。いつ、ドコで、どんな敵と出くわすか、私にも予測が付かない。
油断するなよ」
「言われんでも」
どちらから促すともなく、二人は歩き出した。
「ぐるるる……ぐふううう……」
間も無く、二人の前にバケモノと思しき巨獣が現れる。
「ベースは馬? ……にしちゃ、脚が多すぎるね。まるで蜘蛛だ」
「て言うか、目ぇおかしない? 火ぃ噴いとるで」
「そもそもデカいね。馬って言うより、まるで戦車だね」
「走って来よったら一瞬やろな。……っと、言うてる間に来よるで、先生」
二人で軽口を叩き合いつつ、揃って魔杖を構える。
「んじゃやってやろうかね。連射するね!」
「あいあい、了解っ!」
目が合うなり、戦車馬は鼻から火を噴き出し、エリザたち目がけて突進してくる。
しかし二人にぶつかるはるか手前で、エリザとモールは同時に魔術を放っていた。
「『フレイムドラゴン』!」「『ファイアランス』!」
いくつもの火球が立て続けに戦車馬に叩きつけられ、そのいくつかは貫通する。
「ギヒ……ッ!?」
戦車馬は体中から火を噴き上げ、その場に崩れる。やがて轟々と燃え上がり、そのまま炭になった。
「よっしゃ!」
エリザが魔杖を振り上げ、勝ち誇ろうとする。
しかし直後、モールが後ろを振り返り、魔術を放つ。
「油断するなっつったろ!」
「えっ?」
エリザは振り向くと同時に、体を火に包まれながら走り込んでくる、別のバケモノがいたことを確認する。
「う、うわ、うわっ、……『ファイアランス』!」
どうにか魔術を発動させ、バケモノの頭を貫く。
「……お、終わり?」
きょろきょろと辺りを見回すエリザに、モールがフン、と鼻を鳴らす。
「私がいなきゃ、別な意味で終わりだったね」
「す、……すんません」
「いいさ。逆に私一人だったとしても、この先がキツくなってくるだろうしね。
二人で協力して行こう、エリザ。生きて村に着くにゃ、ソレが一番だね」
そう言ってニヤっと笑ったモールに、エリザは深く頭を下げ、うなずいた。
「……はいっ!」
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2.
山を降り、道に出たところで、モールが「ちょいと」と声を上げた。
「……なんです?」
やはり邪険にあしらおうとしたエリザに、モールは真面目な声を作って続ける。
「この道を見て、君は何か感じないね?」
「は?」
うざったそうな顔を返しつつも、エリザは自分の足元に視線を落とす。
「……前に歩いた時より、広くなっとる気ぃはするけど」
「ソレさ。つまり体積だけ考えても、昔よりデカいバケモノが多くなってるってコトは、容易に予測できる。
やはり鳳凰の言ってた通り、ヤバいバケモノが闊歩しまくってるってコトだろうね」
「ソレがどないしたん?」
「ちょっとは頭冷やして考えろ、おバカ」
モールはエリザに近付き、べちっと頭を叩いた。
「あいたっ!?」
「成長したのか、昔のまんまか? 私に『見てほしい』ってんならね、成長したってトコを見せてみな。
よーく思い出してみな、この道くらい幅のデカいのが昔、そんなにゴロゴロいたかね?」
「む~……」
頭をさすりながら、エリザは渋々と言った様子で答える。
「そら確かにこんなデカいのん、いてた覚えはあらへんよ。でも『ゴロゴロしとる』って言うたけど、いっぱいおるってなんで分かるん?」
「道ってのは、人やらケモノやらが行き来するからできるものだろ? コレだけしっかり道が作られてるって言うなら、ソレだけデカいヤツの行き来が多いってコトだ。
ソレともエリザ、まさか君はこんな幅のデカい人間が何人もいるなんて思ってるの? まさか、だよねぇ?」
「ぐ、……ふんっ」
顔を真っ赤にし、背を向けたエリザに、モールはいつもの飄々とした声をかける。
「エリザ、山を降りて人間の生活圏に戻って来た今、ココはドコだってバケモノの捕食圏内、超危険ゾーンだね。言うまでもなく油断は禁物だし、二手、三手先を読んで行動してなきゃ、命取りになるかも知れない。
熱くなってるコトについては特に言うコト無いね。戦う時は気持ちが燃えてなきゃダメだしね。でも冷静に考えるってコトも、絶対忘れちゃいけないからね。
そんなワケでだ、エリザ」
モールはエリザの前に回り込み、道の先を魔杖で指し示した。
「数年前みたく、のんきな道のりと行かないコトは明白だね。いつ、ドコで、どんな敵と出くわすか、私にも予測が付かない。
油断するなよ」
「言われんでも」
どちらから促すともなく、二人は歩き出した。
「ぐるるる……ぐふううう……」
間も無く、二人の前にバケモノと思しき巨獣が現れる。
「ベースは馬? ……にしちゃ、脚が多すぎるね。まるで蜘蛛だ」
「て言うか、目ぇおかしない? 火ぃ噴いとるで」
「そもそもデカいね。馬って言うより、まるで戦車だね」
「走って来よったら一瞬やろな。……っと、言うてる間に来よるで、先生」
二人で軽口を叩き合いつつ、揃って魔杖を構える。
「んじゃやってやろうかね。連射するね!」
「あいあい、了解っ!」
目が合うなり、戦車馬は鼻から火を噴き出し、エリザたち目がけて突進してくる。
しかし二人にぶつかるはるか手前で、エリザとモールは同時に魔術を放っていた。
「『フレイムドラゴン』!」「『ファイアランス』!」
いくつもの火球が立て続けに戦車馬に叩きつけられ、そのいくつかは貫通する。
「ギヒ……ッ!?」
戦車馬は体中から火を噴き上げ、その場に崩れる。やがて轟々と燃え上がり、そのまま炭になった。
「よっしゃ!」
エリザが魔杖を振り上げ、勝ち誇ろうとする。
しかし直後、モールが後ろを振り返り、魔術を放つ。
「油断するなっつったろ!」
「えっ?」
エリザは振り向くと同時に、体を火に包まれながら走り込んでくる、別のバケモノがいたことを確認する。
「う、うわ、うわっ、……『ファイアランス』!」
どうにか魔術を発動させ、バケモノの頭を貫く。
「……お、終わり?」
きょろきょろと辺りを見回すエリザに、モールがフン、と鼻を鳴らす。
「私がいなきゃ、別な意味で終わりだったね」
「す、……すんません」
「いいさ。逆に私一人だったとしても、この先がキツくなってくるだろうしね。
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