黄輪雑貨本店 新館


    「琥珀暁」
    琥珀暁 第2部

    琥珀暁・南征伝 5

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    神様たちの話、第68話。
    打算と悲報。

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    5.
     モールの後ろ姿を呆然と見送る遠征隊の皆に、エリザは明るい声を作って呼びかける。
    「まあ、何や。とりあえず放っとくしかあらへんでしょ。行きましょか、皆さん」
    「い、いいのかよ?」
     尋ねた黒い狼獣人に、エリザは肩をすくめて返す。
    「謝らへんし、悪びれもせえへんし、不貞腐れてどっか行くようなんをいつまでも構ってられへんでしょ?
     あんなアホ一人に構うより、今は村へ急ぐ方が先ですわ」
    「おっ、……おう」

     モールが抜けた後、エリザが場をどうにかなだめ、遠征隊はラボたちの村へと到着した。
    「見た感じ……、は、無事そうやな」
    「ああ。建物も柵も壊れてないし、普通に畑耕してる奴が何人もいるな」
     そのまま村に入ると、すぐに村人たちが集まってきた。
    「エリちゃん! 戻ってきたのか!」
    「あ、みんな!」
     集まってきた皆に、エリザと遠征隊の者たちが経緯を説明する。
    「……ちゅうコトで、武器を用意してほしいんですけども、でけますか?」
    「そう言うことなら、喜んで造るさ。勿論、お代は欲しいところなんだが……」
     若干渋ったラボに、エリザがこう提案する。
    「こっちが平和になって、山越えするんが普通になってきたら、ココで買い物する人は確実に増えますで。
     その時、『ココで使た武器がめっちゃ使い心地良かった』っちゅう前評判があったら、もっと儲けが出るんやないですか?」
    「なるほど、そう言う考えもあるか。もしそれでマジに儲けが出るんなら、差し引きで黒字になるかも知れんしな」
    「ソレにですで」
     エリザはニヤっと笑い、こう付け加えた。
    「ココで『ウチらの武器で助けに来たったで』ちゅうて東の村に乗り込んだったら、恩も売れますしな」
    「東の、……だって?」
     ところが、ラボは神妙な顔になる。
    「どないしたんですか?」
    「……そうか、あれは最近の話だからな。エリちゃんが知らんのも無理は無いか」
    「何を……ですか」
     そう尋ねつつも、エリザは心のどこかで、その「何か」を察していた。
    「東の村――エリちゃんが元いた村は、……本当に最近のことだが、……その」
    「襲われた、っちゅうコトですか」
    「ああ。正直憎らしい村だったが、それだけに、あんなところが襲われて壊滅するなんて、夢にも思わなかった」
    「村の人らは……?」
     エリザの問いに、ラボは首を横に降って答える。
    「何人かはこっちに来た。だが大半は行方知らずだとさ。……とは言え、恐らくは」
    「食われた、……と」
    「だろうな。だから恩を売るも何も、売る相手がいないってことだ。
     しかしバケモノを追い払い、村を奪還できれば、鉱床はほぼ間違い無くエリちゃん、君のものになるだろう。大軍を引き連れ、バケモノ退治した英雄なんだから、な。
     もしそうなれば、君は事実上、この界隈一の大金持ちになるだろう。あそこには金を始めとして、かなり色んな種類の鉱物・金属が出るらしいからな」
    「なるかも、……ですな」
    「他が反発したって、俺と、俺の村の奴は君を支持する。東の村にいた奴らだって、何だかんだ幅を利かせて独り占めしてたようなもんだからな。
     もっとも君がいらないと言うなら、俺たちで協議してどこに渡すか決めるが」
     暗に尋ねるようなラボの言葉に、エリザは肩をすくめて返した。
    「アタシがもらいます。公平に考えたらそら、アタシにもらう権利は無いかも知れませんけども、公平にしてもろた記憶はまったくありませんしな。
     多少歪んでようと、何かしらもらえる理由があるんやったら、遠慮せんともらうつもりですわ」
    「そう言ってくれた方が、こちらとしては気が楽だ。
     っと、そうだ。エリちゃん、あの『魔法使い』さん、姿が見えないが、どこにいるんだ?」
    「……先生のコトですか」
     エリザはクロスセントラルや行軍中におけるモールの言動を話し、大きくかぶりを振った。
    「ホンマにあのポンコツ、いなくなってせいせいしたっちゅうか」
    「う、……うーん?」
     ところが、ラボは腑に落ち無さそうな表情を浮かべている。
    「そんな奴……、だったか? 俺の記憶じゃ、結構色んなことを腐心してくれたって覚えがあるんだが……?」
    「……え?」
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