「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 第2部
琥珀暁・駆逐伝 1
神様たちの話、第70話。
基地設営。
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1.
東の村が近付いてきたところで、遠征隊は一旦進軍を止めた、
「この辺りに前線基地を造る。
村に入ってから万一、バケモノの攻勢に圧されたとしても、ここまで退却すれば態勢を立て直せるようにな」
ゲートにそう説明され、エリザは素直に感心する。
「やっぱり経験が違いますな。アタシと先生だけやったら、わーっとまっすぐ突っ込んでそのまんま進退極めそうですわ」
「おいおい……」
エリザの言葉に苦笑しつつ、ゲートは説明を続ける。
「基地の設営は4時間くらいで終わる予定だ。
東の村の状況をここから確かめられるようにやぐらを建てたり、バケモノがこっちに来ても追い返せるように壁や柵を並べたり、後は簡単な寝床とかまどとか、くらいかな」
「了解です。ほなアタシ、手伝ってきますね」
そう返したところで、ゲートは「いや」と制する。
「君は俺と一緒に、作戦会議に参加してほしい。
基地を造って、その後『わーっとまっすぐ』ってわけには行かないからな」
「あ、そうですな」
ゲートは遠征隊の各班班長たちを集め、作戦会議を始めた。
「ネール氏の村で集めた情報によれば、バケモノどもは出現から数時間で、100人規模の村を壊滅させたとのことだ。情報から判断するに、数は最小でも六目狼級が20頭程度。戦車馬級からヘラ角兎級と言った中小サイズのバケモノも、その3倍から5倍は付随していることが考えられる。
ただしエリちゃんの証言から、この地においても『巨獅子』が棲息していることが明らかになっている。双月暦2年4月における第4次イーストフィールド戦、あるいは双月暦3年9月の第5次サウスフィールド戦の時のように、既棲のバケモノを討伐した直後に巨獅子級が複数出現すると言うような可能性も高い。
どちらにしても現在確定している情報は少なく、無闇に人員を送り込んでも討伐できる可能性は低い。よって、まずは2~3班を斥候に向かわせ、村の状況やバケモノの数、種類を把握しておこうと思う。
他に提案のある者、あるいは反対の者はいるか?」
ゲートの提案に、班長たちは揃ってうなずく。
「特には」
「問題ないでしょう」
エリザもうなずいたところで、ゲートが話を続ける。
「では、斥候はモア、ワイルド、それからゴアの班に任せる。早速出発してくれ。夕暮れまでに帰投すること」
「了解です」
それを聞いて、エリザが手を挙げる。
「あ、あのっ。アタシも行った方がええですよね?」
ところが、ゲートは首を横に振る。
「いや、君は今回残って欲しい」
「でも村のコト詳しいですし……」
「だからこそだ。君は聡明な子だと言うことは十分に分かっているつもりだが、一方で結構アツくなる子だってことも知っている。
村の惨状を目にした途端、思わずその元凶に向かって駆け出してしまう、……と言うことは絶対無いと、君は断言できるか?」
「う……」
「一人の勝手な行動が大勢に迷惑をかけることは、君の師匠が十分に証明してくれている。
バケモノどもの間近にまで迫ったこの状況で、もしも君に師匠と同じことをされたら、俺たち200人が相当の危険にさらされる。
だから冷静に行動してもらうと言う意味で、君はここに残って欲しいんだ。勿論、本格的に討伐を開始するって時には参加してもらう。それで納得してくれるかな?」
丁寧に諭され、エリザは素直にうなずいた。
「分かりました」
基地の設営中も、エリザはこのゲート・シモンと言う人物に、リーダーとして重要な素質・素養を色々と学ぶことができた。
「ああ、武器はここだけじゃなく、南門と西門にも分けて置いておいてくれ」
「はい、隊長」
基地のあちこちを周って指示を出すゲートの後を追いつつ、エリザは色々と質問する。
「東側とか北側には置かへんのですか?」
「ああ。バケモノが襲撃してきたとしたら、そのどっちかからになるだろうからな。門が破られると同時に武器を蹴散らされちゃ、どうしようも無くなる」
「あ、なるほどー」
そして――相当忙しいにもかかわらず――自分を邪険に扱うことなく、一つ一つ丁寧に答えてくれるゲートを、エリザはすっかり気に入っていた。
(全っ然、先生とちゃうわぁ、この人……)
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基地設営。
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東の村が近付いてきたところで、遠征隊は一旦進軍を止めた、
「この辺りに前線基地を造る。
村に入ってから万一、バケモノの攻勢に圧されたとしても、ここまで退却すれば態勢を立て直せるようにな」
ゲートにそう説明され、エリザは素直に感心する。
「やっぱり経験が違いますな。アタシと先生だけやったら、わーっとまっすぐ突っ込んでそのまんま進退極めそうですわ」
「おいおい……」
エリザの言葉に苦笑しつつ、ゲートは説明を続ける。
「基地の設営は4時間くらいで終わる予定だ。
東の村の状況をここから確かめられるようにやぐらを建てたり、バケモノがこっちに来ても追い返せるように壁や柵を並べたり、後は簡単な寝床とかまどとか、くらいかな」
「了解です。ほなアタシ、手伝ってきますね」
そう返したところで、ゲートは「いや」と制する。
「君は俺と一緒に、作戦会議に参加してほしい。
基地を造って、その後『わーっとまっすぐ』ってわけには行かないからな」
「あ、そうですな」
ゲートは遠征隊の各班班長たちを集め、作戦会議を始めた。
「ネール氏の村で集めた情報によれば、バケモノどもは出現から数時間で、100人規模の村を壊滅させたとのことだ。情報から判断するに、数は最小でも六目狼級が20頭程度。戦車馬級からヘラ角兎級と言った中小サイズのバケモノも、その3倍から5倍は付随していることが考えられる。
ただしエリちゃんの証言から、この地においても『巨獅子』が棲息していることが明らかになっている。双月暦2年4月における第4次イーストフィールド戦、あるいは双月暦3年9月の第5次サウスフィールド戦の時のように、既棲のバケモノを討伐した直後に巨獅子級が複数出現すると言うような可能性も高い。
どちらにしても現在確定している情報は少なく、無闇に人員を送り込んでも討伐できる可能性は低い。よって、まずは2~3班を斥候に向かわせ、村の状況やバケモノの数、種類を把握しておこうと思う。
他に提案のある者、あるいは反対の者はいるか?」
ゲートの提案に、班長たちは揃ってうなずく。
「特には」
「問題ないでしょう」
エリザもうなずいたところで、ゲートが話を続ける。
「では、斥候はモア、ワイルド、それからゴアの班に任せる。早速出発してくれ。夕暮れまでに帰投すること」
「了解です」
それを聞いて、エリザが手を挙げる。
「あ、あのっ。アタシも行った方がええですよね?」
ところが、ゲートは首を横に振る。
「いや、君は今回残って欲しい」
「でも村のコト詳しいですし……」
「だからこそだ。君は聡明な子だと言うことは十分に分かっているつもりだが、一方で結構アツくなる子だってことも知っている。
村の惨状を目にした途端、思わずその元凶に向かって駆け出してしまう、……と言うことは絶対無いと、君は断言できるか?」
「う……」
「一人の勝手な行動が大勢に迷惑をかけることは、君の師匠が十分に証明してくれている。
バケモノどもの間近にまで迫ったこの状況で、もしも君に師匠と同じことをされたら、俺たち200人が相当の危険にさらされる。
だから冷静に行動してもらうと言う意味で、君はここに残って欲しいんだ。勿論、本格的に討伐を開始するって時には参加してもらう。それで納得してくれるかな?」
丁寧に諭され、エリザは素直にうなずいた。
「分かりました」
基地の設営中も、エリザはこのゲート・シモンと言う人物に、リーダーとして重要な素質・素養を色々と学ぶことができた。
「ああ、武器はここだけじゃなく、南門と西門にも分けて置いておいてくれ」
「はい、隊長」
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「東側とか北側には置かへんのですか?」
「ああ。バケモノが襲撃してきたとしたら、そのどっちかからになるだろうからな。門が破られると同時に武器を蹴散らされちゃ、どうしようも無くなる」
「あ、なるほどー」
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