「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 第2部
琥珀暁・駆逐伝 2
神様たちの話、第71話。
バケモノ駆逐作戦、開始。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
2.
日が落ちるとほぼ同時に、斥候に向かっていた3班が戻ってきた。
「隊長の予測していた通り、六目狼級のバケモノは20頭ほど確認できました。また、付随している戦車馬級以下のバケモノも、隊長の予測通りの数であったことを確認しています。
村の状況ですが、建物の類はまったく残っていませんでした。村人が残っている可能性は皆無でしょう。
なお、村の周辺にもトカゲ鳥級のバケモノが4~50匹程度徘徊しており、これらは村内にいるバケモノらの援護的役割にあるものではないかと考えられます」
報告を受け、ゲートは腕を組んでうなる。
「ふーむ……、トカゲ鳥に囲まれて挟撃されるおそれがあるし、村へまっすぐ突っ込むわけには行かなさそうだな。
となるとまずは、村周辺をクリアリング(一定の範囲内における敵勢力の排除、掃討)する必要があるか。10班を散開させてやってもらうとしよう。
ある程度クリアリングを進めたら村に入り、一気に残りのバケモノを叩き出す。こっちには30班を投入しよう。
残る10班は基地の保安と退路確保だ。万が一村に攻め入った40班が敗走した場合は、この10班が助けに向かう。また、村周辺以外にバケモノが現れた場合にも、保安班に応戦してもらう。
この作戦で行こうと思うが、他に提案のある者はいるか?」
斥候の際と同様、ゲートが班長らに尋ねる。
同様に班長らがうなずく中、エリザが手を挙げる。
「すみません、アタシはどないしたら……?」
「ああ、そうだった。エリちゃんは俺と一緒に、村に入ってくれ。君の魔術にはすごく期待してるし、存分に腕を奮って欲しい」
「……はい!」
エリザは満面の笑みで、ゲートに応えた。
周辺掃討班が出発して1時間後、彼らから魔術による通信が入る。
《バケモノは粗方片付けました。村周辺に他のバケモノの姿は確認できません》
「分かった。こちらからの指示があるまで、引き続き警戒に当たってくれ。何かあればすぐ教えてくれ」
《了解です》
通信を終え、ゲートは全員に通達する。
「聞いての通りだ! 後は村に残っているバケモノを駆逐するぞ!」
「おうッ!」
ゲートの指示に従い、村へ向かう本隊が続々と北門から出発する。
「エリちゃん、俺たちも行くぞ!」
「はいっ!」
エリザたちが出たところで、門が閉じられる。
「基地を頼む! もしも巨獅子級のバケモノが出現したら、すぐに知らせてくれ!」
「はっ!」
保守班にも指示を出し、ゲートは本隊の最後尾に付いた。
村への短い道のりの途中、ゲートがエリザに語りかける。
「実を言えば、怖いって気持ちはある」
「えっ……」
その言葉に、エリザは不安を覚える。
しかし、ゲートの次の言葉によって、その不安は和らいだ。
「だけどな、だからこそ生きて帰れるってもんだ。『死ぬのも怖くないぜ』なんて言ってる奴は、それこそマジに最前線を突っ切って死んじまう。引き際が分からんからだ。
俺たちの中に、そんなバカはいない。一人もだ。皆、ちゃんと引き際を心得てるし、どの程度まで踏み込めば無事で済むかってことも、十分把握してる。
安心しな、エリちゃん。全員、生きて帰れる。勿論、君もだ」
「あ、は、……はい」
返事を返しながら、エリザは自分が今まで震えていたことと、その震えが収まったことに気付く。
(シモンさん……、アタシが自分でも分からへんうちに怖がってたコト、分かっててくれたんやな)
半ば無意識に、エリザはゲートの手をぎゅっと握っていた。
「……あ、……ごめんなさい、……つい」
手を離そうとしたが、ゲートはニッと笑い、手を握り返す。
「いいよ。握ってな」
「……す、すみま、せん」
エリザはもう一方の手で自分のほおを、ゲートに気付かれぬようそっと触り、熱くなっているのを感じた。
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バケモノ駆逐作戦、開始。
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2.
日が落ちるとほぼ同時に、斥候に向かっていた3班が戻ってきた。
「隊長の予測していた通り、六目狼級のバケモノは20頭ほど確認できました。また、付随している戦車馬級以下のバケモノも、隊長の予測通りの数であったことを確認しています。
村の状況ですが、建物の類はまったく残っていませんでした。村人が残っている可能性は皆無でしょう。
なお、村の周辺にもトカゲ鳥級のバケモノが4~50匹程度徘徊しており、これらは村内にいるバケモノらの援護的役割にあるものではないかと考えられます」
報告を受け、ゲートは腕を組んでうなる。
「ふーむ……、トカゲ鳥に囲まれて挟撃されるおそれがあるし、村へまっすぐ突っ込むわけには行かなさそうだな。
となるとまずは、村周辺をクリアリング(一定の範囲内における敵勢力の排除、掃討)する必要があるか。10班を散開させてやってもらうとしよう。
ある程度クリアリングを進めたら村に入り、一気に残りのバケモノを叩き出す。こっちには30班を投入しよう。
残る10班は基地の保安と退路確保だ。万が一村に攻め入った40班が敗走した場合は、この10班が助けに向かう。また、村周辺以外にバケモノが現れた場合にも、保安班に応戦してもらう。
この作戦で行こうと思うが、他に提案のある者はいるか?」
斥候の際と同様、ゲートが班長らに尋ねる。
同様に班長らがうなずく中、エリザが手を挙げる。
「すみません、アタシはどないしたら……?」
「ああ、そうだった。エリちゃんは俺と一緒に、村に入ってくれ。君の魔術にはすごく期待してるし、存分に腕を奮って欲しい」
「……はい!」
エリザは満面の笑みで、ゲートに応えた。
周辺掃討班が出発して1時間後、彼らから魔術による通信が入る。
《バケモノは粗方片付けました。村周辺に他のバケモノの姿は確認できません》
「分かった。こちらからの指示があるまで、引き続き警戒に当たってくれ。何かあればすぐ教えてくれ」
《了解です》
通信を終え、ゲートは全員に通達する。
「聞いての通りだ! 後は村に残っているバケモノを駆逐するぞ!」
「おうッ!」
ゲートの指示に従い、村へ向かう本隊が続々と北門から出発する。
「エリちゃん、俺たちも行くぞ!」
「はいっ!」
エリザたちが出たところで、門が閉じられる。
「基地を頼む! もしも巨獅子級のバケモノが出現したら、すぐに知らせてくれ!」
「はっ!」
保守班にも指示を出し、ゲートは本隊の最後尾に付いた。
村への短い道のりの途中、ゲートがエリザに語りかける。
「実を言えば、怖いって気持ちはある」
「えっ……」
その言葉に、エリザは不安を覚える。
しかし、ゲートの次の言葉によって、その不安は和らいだ。
「だけどな、だからこそ生きて帰れるってもんだ。『死ぬのも怖くないぜ』なんて言ってる奴は、それこそマジに最前線を突っ切って死んじまう。引き際が分からんからだ。
俺たちの中に、そんなバカはいない。一人もだ。皆、ちゃんと引き際を心得てるし、どの程度まで踏み込めば無事で済むかってことも、十分把握してる。
安心しな、エリちゃん。全員、生きて帰れる。勿論、君もだ」
「あ、は、……はい」
返事を返しながら、エリザは自分が今まで震えていたことと、その震えが収まったことに気付く。
(シモンさん……、アタシが自分でも分からへんうちに怖がってたコト、分かっててくれたんやな)
半ば無意識に、エリザはゲートの手をぎゅっと握っていた。
「……あ、……ごめんなさい、……つい」
手を離そうとしたが、ゲートはニッと笑い、手を握り返す。
「いいよ。握ってな」
「……す、すみま、せん」
エリザはもう一方の手で自分のほおを、ゲートに気付かれぬようそっと触り、熱くなっているのを感じた。
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