「双月千年世界 4;琥珀暁」
琥珀暁 第2部
琥珀暁・駆逐伝 4
神様たちの話、第73話。
バケモノを駆逐するヒト。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
4.
「……え?」
ゲートが振り返った途端に、魔術の盾にべちゃりと貼り付いた、ほんの数秒前まで自分と応答していた「もの」と目が合う。
「どっ、……あ、あっ、ああ」
ゲートの顔から、ざあっと血の気が引いていく。
「こっち、にも……、出やがった、のかっ」
青ざめた顔で、絞り出すように怒声を吐き、ゲートは腰に佩いていた魔杖を手に取る。
「しっ、シモンさんっ」
エリザもどうにか声を絞り出し、ゲートに声をかける。
「だい、……大丈夫だ。俺は冷静だよ、エリちゃん。
それより、盾を解いてくれ。……いつまでも貼り付けたまんまじゃ、こいつが可哀想だ」
「……は、い」
魔術を解除すると同時に、二人の前方からどす、どすと音を立て、巨大な「ライオン」が姿を現す。
「いきなりやられたってことは、別の奴を倒して気が緩んだとこに、横か後ろから突進してきたって感じか。防御も攻撃も、太刀打ちなんか何にもできなかっただろうな。
さぞや無念だったろう。俺がきっちり、仇を取ってやるからな」
ゲートは巨獅子の前に立ちはだかり、魔杖を構える。
しかしその一方で――自分でも「冷静だ」と言っていた通り――魔術頭巾を使い、増援を呼びかける。
「隊長より本隊全体へ。巨獅子が村南西、入口付近に出現した。ドッジ班が強襲され全滅したことを目視にて確認。手の空いている者は至急、応援に来られたし。以上」
通信の直後、エリザが被っていた頭巾に、戦慄のにじんだざわめきが伝わってくる。
《巨獅子……ですって!?》
《マジでか!?》
《すっ、すぐ行く! 早まるなよ、ゲート!》
「ああ。頼むぜ、皆。……エリちゃん」
ゲートがエリザに背を向けたまま、こう続ける。
「助けて欲しいのは山々だが、君はまだ温存だ。分かるだろ?」
「……基地のヤツを倒すため、ですか」
「そう言うことだ。こいつは俺たちがやる」
程無く、村のあちこちから応援が続々と現れる。
「巨獅子の数は1頭。掃討班からの連絡が無いことから同班との接触は無く、また村への増援はこの1頭のみと思われる。
今までの戦闘経験から言って、巨獅子の出現以降に、更に増援が発生したケースは無い。つまりこいつを倒せば、この村の制圧は完了するってわけだ。
ただし――皆、聞いていたと思うが――基地の東にも巨獅子が出現している。へばるまで攻撃しても、誰も拾ってやれないからな。
そのつもりで、全力出せ」
ゲートの檄に、応援に来た全員が大声を上げて応じる。
「おうッ!」
「やってやんぜ!」
「行くぞ、ゲート!」
この間、エリザは魔杖を抱きしめるばかりで手出しができなかったが――結果的に、確かに彼女の手助けは不要だった。
遠征前から「手慣れている」と言っていた通り、ゲートたちは密に連携を取り、巨獅子にほとんど動く隙を与えなかった。
と言うよりも――。
(後ろで見てたら、シモンさんがやろうとしとるコト、すごい良く分かる。
シモンさんたち、あの巨獅子を『動かさへん』ように戦っとるんや)
エリザの推察通り、巨獅子が少しでも脚や首を動かそうとする度、誰かが魔術を放って牽制し、巨獅子をその場に足止めしている。
(あ、そうか。全員で滅多やたらに『溜め』の利かへん魔術をポンポン撃つより、一人に目一杯『溜め撃ち』してもろて、その間の足止めを他の全員でやっとった方が、よっぽど効率的で確実にダメージ与えられるやんな。
何ちゅうか……、ホンマ、アタシと先生やったらこんな考えせえへんよな。ソレこそ二人で一緒にやいやい突っ込むっちゅうか、力技で無理矢理倒しにかかるっちゅうか)
そうして傍観している間に――巨獅子はまったく身動きできないまま、ゲートが放った高威力の魔術に貫かれ、その場に倒れた。
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4.
「……え?」
ゲートが振り返った途端に、魔術の盾にべちゃりと貼り付いた、ほんの数秒前まで自分と応答していた「もの」と目が合う。
「どっ、……あ、あっ、ああ」
ゲートの顔から、ざあっと血の気が引いていく。
「こっち、にも……、出やがった、のかっ」
青ざめた顔で、絞り出すように怒声を吐き、ゲートは腰に佩いていた魔杖を手に取る。
「しっ、シモンさんっ」
エリザもどうにか声を絞り出し、ゲートに声をかける。
「だい、……大丈夫だ。俺は冷静だよ、エリちゃん。
それより、盾を解いてくれ。……いつまでも貼り付けたまんまじゃ、こいつが可哀想だ」
「……は、い」
魔術を解除すると同時に、二人の前方からどす、どすと音を立て、巨大な「ライオン」が姿を現す。
「いきなりやられたってことは、別の奴を倒して気が緩んだとこに、横か後ろから突進してきたって感じか。防御も攻撃も、太刀打ちなんか何にもできなかっただろうな。
さぞや無念だったろう。俺がきっちり、仇を取ってやるからな」
ゲートは巨獅子の前に立ちはだかり、魔杖を構える。
しかしその一方で――自分でも「冷静だ」と言っていた通り――魔術頭巾を使い、増援を呼びかける。
「隊長より本隊全体へ。巨獅子が村南西、入口付近に出現した。ドッジ班が強襲され全滅したことを目視にて確認。手の空いている者は至急、応援に来られたし。以上」
通信の直後、エリザが被っていた頭巾に、戦慄のにじんだざわめきが伝わってくる。
《巨獅子……ですって!?》
《マジでか!?》
《すっ、すぐ行く! 早まるなよ、ゲート!》
「ああ。頼むぜ、皆。……エリちゃん」
ゲートがエリザに背を向けたまま、こう続ける。
「助けて欲しいのは山々だが、君はまだ温存だ。分かるだろ?」
「……基地のヤツを倒すため、ですか」
「そう言うことだ。こいつは俺たちがやる」
程無く、村のあちこちから応援が続々と現れる。
「巨獅子の数は1頭。掃討班からの連絡が無いことから同班との接触は無く、また村への増援はこの1頭のみと思われる。
今までの戦闘経験から言って、巨獅子の出現以降に、更に増援が発生したケースは無い。つまりこいつを倒せば、この村の制圧は完了するってわけだ。
ただし――皆、聞いていたと思うが――基地の東にも巨獅子が出現している。へばるまで攻撃しても、誰も拾ってやれないからな。
そのつもりで、全力出せ」
ゲートの檄に、応援に来た全員が大声を上げて応じる。
「おうッ!」
「やってやんぜ!」
「行くぞ、ゲート!」
この間、エリザは魔杖を抱きしめるばかりで手出しができなかったが――結果的に、確かに彼女の手助けは不要だった。
遠征前から「手慣れている」と言っていた通り、ゲートたちは密に連携を取り、巨獅子にほとんど動く隙を与えなかった。
と言うよりも――。
(後ろで見てたら、シモンさんがやろうとしとるコト、すごい良く分かる。
シモンさんたち、あの巨獅子を『動かさへん』ように戦っとるんや)
エリザの推察通り、巨獅子が少しでも脚や首を動かそうとする度、誰かが魔術を放って牽制し、巨獅子をその場に足止めしている。
(あ、そうか。全員で滅多やたらに『溜め』の利かへん魔術をポンポン撃つより、一人に目一杯『溜め撃ち』してもろて、その間の足止めを他の全員でやっとった方が、よっぽど効率的で確実にダメージ与えられるやんな。
何ちゅうか……、ホンマ、アタシと先生やったらこんな考えせえへんよな。ソレこそ二人で一緒にやいやい突っ込むっちゅうか、力技で無理矢理倒しにかかるっちゅうか)
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