DETECTIVE WESTERN
DETECTIVE WESTERN 8 ~ 悪名高き依頼人 ~ 10
ウエスタン小説、第10話。
鉄道犯罪。
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10.
「そうだな、まずは、……不審な鉄道車輌、なんてのは?」
尋ねたアデルに、ロドニーは苦い声を返してくる。
《『何でも』って言ったばっかりで悪いが、それは答えられん。いや、『言えない』ってことじゃなくてな、『言い切れない』んだ。
俺みたいな大鉄道愛好家や各鉄道会社、その他警察とかその関係者だとかにゃ残念でならんが、鉄道を使った犯罪やら不正なんて話は、あっちこっちでうわさされてる。お前さんが今尋ねた『不審な車輌』なんてのは、それこそあっちこっちで目撃されてるし、捕まえようも無い。
ティム・リード鉄道強盗団みたいなのを捕まえられたのは、マジで奇跡ってヤツだろうよ》
「そんなに多いのか? その鉄道強盗団を捕まえた辺りの頃は、そんなに跋扈(ばっこ)してるなんて話は聞いて無かったが……?」
《そうだな、正確に言えばその直後から増えだしたって感じだ。恐らくあの時聞いた、ダリウスって野郎のせいだろう。
俺もあの時、サムとかから話を聞かせてもらってたんだが、盗まれた車輌やその部品を使ってるだろうなって言う不審車輌の情報は、かなり聞く。それに『ゲージ可変機構』が取り付けられてるらしい車輌があるってのも、最近良く耳にしてる。
多分だけども、ダリウスがあっちこっちにバラ撒いてるんだろう。何の目的かは分からんが、パテント料みたいな感じでカネもらってるとしたら、相当稼いでるだろうな》
「ふーむ……」
アデルがロドニーから聞いた情報を書き留めたメモを見て、局長がうなる。
「確証は無いがそのダリウスも、組織の一員なのかも知れないな。
私の記憶しているところでは、ダリウス氏が活動を開始したのは3年か、4年前だったはずだ。そして組織の活動再開は、少なくとも2年以上前から。時期はかなり近い。いや、重複していると見てもいいだろう。
ダリウスが資材と資金を集め、組織の活動に充てていた可能性は、十分に考えられる」
「そうね……」
エミルたちが話しているのを背に受けつつ、アデルは質問を続ける。
「じゃあ、そのダリウスについて、何か知らないか?」
《そっちについては、さっぱりだ。
あの一件以来、鉄道関係に指名手配が回ってるが、ダリウスを見たって奴は出てこない。そのくせ、あいつにつながってるっぽいうわさはポロポロ出て来る。
まるで幽霊かなんかだよ、まったく》
「そうか……」
その後もあれこれと質問を重ねるが、ギルマンにつながりそうな情報は、一向に入手できない。
と、局長がトン、トンとアデルの肩を叩き、代わるよう促してきた。
「あ、はい。……いや、局長が話をしたいって」
受話器が局長に渡され、彼はこう質問した。
「すみません、突然。いや何、私からもちょっと、聞かせていただこうかと思いまして。
リーランドさん、鉄道輸送に関して尋ねたいのですが、お詳しいでしょうか」
《ああ、まあ、そりゃ、それなりには》
「ではここ1年か2年の間に、大量の武器・弾薬が――そうですな、一小隊が十分活動できる程度の量で――頻繁に運ばれたと言う記録はございますか?」
《んー……? ちょっと待ってくれ。思い出す。……あー、と、そうだな、ちょくちょく聞いてる》
「O州やK州、N州近辺ではどうでしょう? 特に多いのではないですか?」
《……局長さん、なんか知ってるのか? いや、確かにこの2年、その辺りで武器が運ばれまくってるって話を聞くからさ》
「やはり、ですか。
もしやと思いますが、その輸送の中でも非正規と思われるものについてですが、それらに最も使用されていた路線は、W&Bのものでは?」
《あ、ああ。確かによく使われてるって話は、……聞いてる》
「なるほど。可能なら、その関係者をピックアップしていただきたいのですが」
《ちょっと時間をくれれば、まとめられると思うぜ。あっちこっち電話して、多分明日か、明後日くらいには返事できる》
「では3日後の同時刻辺り、またこちらからご連絡を差し上げます。よしなに」
電話を切り、局長はふう、と息を吐いた。
「やれやれ、当たってしまったか」
「局長……? 何か、つかんでたんですか?」
尋ねたアデルに、局長はこう答える。
「イクトミが襲撃された、と言っていただろう? そこから推理したんだ。
そもそもイクトミに指名手配がかけられたのは1年ほど前だが、その容疑は何だったか、知っているね?」
「ええ。殺人が契機となった、と」
「そこだ。それが起こる前までは、彼は奇抜な紳士、風変わりな窃盗犯としての評判しか無かった。いわゆる『怪盗』と言うやつだ。
だがN州における強盗殺人――西部方面への投資家として知られていたフランシスコ・メイ氏の殺害が、全米への指名手配の契機となった。
そして指名手配の直後、2件目の殺人が起こる。それがグレッグ・ポートマンSrの件だ。これがイクトミの名を『悪名高き卑劣漢』として、決定的に知らしめることとなったわけだ」
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鉄道犯罪。
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「そうだな、まずは、……不審な鉄道車輌、なんてのは?」
尋ねたアデルに、ロドニーは苦い声を返してくる。
《『何でも』って言ったばっかりで悪いが、それは答えられん。いや、『言えない』ってことじゃなくてな、『言い切れない』んだ。
俺みたいな大鉄道愛好家や各鉄道会社、その他警察とかその関係者だとかにゃ残念でならんが、鉄道を使った犯罪やら不正なんて話は、あっちこっちでうわさされてる。お前さんが今尋ねた『不審な車輌』なんてのは、それこそあっちこっちで目撃されてるし、捕まえようも無い。
ティム・リード鉄道強盗団みたいなのを捕まえられたのは、マジで奇跡ってヤツだろうよ》
「そんなに多いのか? その鉄道強盗団を捕まえた辺りの頃は、そんなに跋扈(ばっこ)してるなんて話は聞いて無かったが……?」
《そうだな、正確に言えばその直後から増えだしたって感じだ。恐らくあの時聞いた、ダリウスって野郎のせいだろう。
俺もあの時、サムとかから話を聞かせてもらってたんだが、盗まれた車輌やその部品を使ってるだろうなって言う不審車輌の情報は、かなり聞く。それに『ゲージ可変機構』が取り付けられてるらしい車輌があるってのも、最近良く耳にしてる。
多分だけども、ダリウスがあっちこっちにバラ撒いてるんだろう。何の目的かは分からんが、パテント料みたいな感じでカネもらってるとしたら、相当稼いでるだろうな》
「ふーむ……」
アデルがロドニーから聞いた情報を書き留めたメモを見て、局長がうなる。
「確証は無いがそのダリウスも、組織の一員なのかも知れないな。
私の記憶しているところでは、ダリウス氏が活動を開始したのは3年か、4年前だったはずだ。そして組織の活動再開は、少なくとも2年以上前から。時期はかなり近い。いや、重複していると見てもいいだろう。
ダリウスが資材と資金を集め、組織の活動に充てていた可能性は、十分に考えられる」
「そうね……」
エミルたちが話しているのを背に受けつつ、アデルは質問を続ける。
「じゃあ、そのダリウスについて、何か知らないか?」
《そっちについては、さっぱりだ。
あの一件以来、鉄道関係に指名手配が回ってるが、ダリウスを見たって奴は出てこない。そのくせ、あいつにつながってるっぽいうわさはポロポロ出て来る。
まるで幽霊かなんかだよ、まったく》
「そうか……」
その後もあれこれと質問を重ねるが、ギルマンにつながりそうな情報は、一向に入手できない。
と、局長がトン、トンとアデルの肩を叩き、代わるよう促してきた。
「あ、はい。……いや、局長が話をしたいって」
受話器が局長に渡され、彼はこう質問した。
「すみません、突然。いや何、私からもちょっと、聞かせていただこうかと思いまして。
リーランドさん、鉄道輸送に関して尋ねたいのですが、お詳しいでしょうか」
《ああ、まあ、そりゃ、それなりには》
「ではここ1年か2年の間に、大量の武器・弾薬が――そうですな、一小隊が十分活動できる程度の量で――頻繁に運ばれたと言う記録はございますか?」
《んー……? ちょっと待ってくれ。思い出す。……あー、と、そうだな、ちょくちょく聞いてる》
「O州やK州、N州近辺ではどうでしょう? 特に多いのではないですか?」
《……局長さん、なんか知ってるのか? いや、確かにこの2年、その辺りで武器が運ばれまくってるって話を聞くからさ》
「やはり、ですか。
もしやと思いますが、その輸送の中でも非正規と思われるものについてですが、それらに最も使用されていた路線は、W&Bのものでは?」
《あ、ああ。確かによく使われてるって話は、……聞いてる》
「なるほど。可能なら、その関係者をピックアップしていただきたいのですが」
《ちょっと時間をくれれば、まとめられると思うぜ。あっちこっち電話して、多分明日か、明後日くらいには返事できる》
「では3日後の同時刻辺り、またこちらからご連絡を差し上げます。よしなに」
電話を切り、局長はふう、と息を吐いた。
「やれやれ、当たってしまったか」
「局長……? 何か、つかんでたんですか?」
尋ねたアデルに、局長はこう答える。
「イクトミが襲撃された、と言っていただろう? そこから推理したんだ。
そもそもイクトミに指名手配がかけられたのは1年ほど前だが、その容疑は何だったか、知っているね?」
「ええ。殺人が契機となった、と」
「そこだ。それが起こる前までは、彼は奇抜な紳士、風変わりな窃盗犯としての評判しか無かった。いわゆる『怪盗』と言うやつだ。
だがN州における強盗殺人――西部方面への投資家として知られていたフランシスコ・メイ氏の殺害が、全米への指名手配の契機となった。
そして指名手配の直後、2件目の殺人が起こる。それがグレッグ・ポートマンSrの件だ。これがイクトミの名を『悪名高き卑劣漢』として、決定的に知らしめることとなったわけだ」
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