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    DETECTIVE WESTERN

    DETECTIVE WESTERN 8 ~ 悪名高き依頼人 ~ 14

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    ウエスタン小説、第14話。
    組織を討つために。

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    14.
     わたくしは本懐を隠すため、そしてわたくしが組織に「アレーニェ」だと悟られぬために、怪盗「イクトミ」を演じることにいたしました。
     まったく何の価値も無い、盗んだとしても何の被害も出ないようなモノを、さも価値があるかのように仰々しく盗み出すと言う、滑稽な道化を演じたのです。
     その裏で、わたくしは組織がどれだけの人員を有し、どこに本拠や基地を構え、何を計画しているのか探り、明らかになったものから逐次、潰しておりました。
     はじめのうちは、それは少しずつながらも成果を上げておりました。わずかながらも組織の力を削ぐことに成功し、地道に続けていればいつかは呪いを振り払い、ふたたび幸せで穏やかな生活を獲得できるのではと、淡い期待も抱いておりました。
     ですが現幹部の一人、フランシスコ・メイを倒した辺りから、組織もわたくしがかつての「アレーニェ」だと気付いたようでした。それを境に、組織はあちこちに兵隊を撒き、わたくしを襲わせ始めたのです。
     それに加え、組織はわたくしがガラクタのためにメイを殺害したと言ううわさを広め、かつてわたくしを投獄した時のように、警察や司法権力の力を借りてわたくしを捕らえようとしたのです。
     わたくしは改めて、組織の執拗さと陰湿さを認識しましたが、最早、後には引けません。その汚名をあえて否定せず、むしろ汚名を借りる形で、2人目の幹部を殺害しました。そう、黄金銃のポートマン老人です。
     しかしこれは、結果的に言えばかなり悪い事態を引き起こしてしまいました。あなた方パディントン探偵局を敵に回した挙句、わたくしの部下、相棒となっていた男を失うことになりましたからね。

     とは言え、あのマドモアゼル・エミルと再会できたことは、わたくしにとってこの上ない喜びでした。あの女(ひと)もわたくしと共に組織を憎み、共に戦ったことがあるのですから。
     旧組織陥落の折に生き別れとなり、二度と逢えぬものと諦めておりましたが、こうしてふたたび巡り逢えたのは、まさしく運命なのだと、組織を今度こそ潰すために神がお遣わしになったのだと、そう確信したのです。

     あの女(ひと)と共に戦うことができれば、わたくしは今度こそ、組織を完膚無きまでに潰し、人並みの生活と、ささやかな幸せを獲得できると――そう信じているのです。



    「つまり組織が崩壊し、君が殺害した2名がその幹部であると言う証拠が出れば、強盗殺人の容疑は帳消しになる。
     窃盗行為にしても、価値の無いガラクタ品ばかりだ。被害を訴え出る者などいるはずも無い。
     組織を潰すことができれば、君にかけられている数々の嫌疑・賞金は消える。我々と手を組んでいたことが分かったとしても、潰れた後であれば何の問題も無くなる、と言うわけだ」
     空になったバーボンの瓶を床に置き、アーサー老人はうんうんとうなずく。
    「しかし安直に『協力してくれ』『よかろう』などと話を進めるのには、無理がある。
     将来的に組織が無くなれば万々歳だが、その前に組織が手を打ち、我々と君との関係が明るみに出れば、組織を追うどころではなくなるだろうからな。
     とは言え手はある。少し待っていたまえ」
     アーサー老人はニヤ、と笑い、電話に向かった。



    「まさか君がAと接触していたなどとは、夢にも思わなかった」
     ブルース・ジョーンズ・カフェの奥で、パディントン局長はクスクスと笑いながら、イクトミと卓を囲んでいた。
    「流石のパディントン局長も、面食らったと言うわけですな。ボールドロイド氏も、一矢報いたと言う気分でしょうな」
    「勝率はトントンだよ。私が勝つこともあれば、Aが一杯食わすことも、往々にしてある。
     ま、そんなことよりも、だ。君と連携することとして、今後について策を講じていかねばなるまい。相手は『組織』、1人や2人じゃあないんだからな。
     初手は3人で話した通り、我々がアルジャン兄弟を捕らえ、君がギルマンを討つ。それによって組織は強い駒を失うと共に、兵站活動も滞ることとなる。言わば『腕』と『脚』を失うことになるのだ。
     仮にこれが狩りだとしたなら、腕と脚を失った獣を、次はどう攻略する?」
    「ふむ……。トリスタンさえいなくなれば、わたくしに恐れるものはございません。首尾よくギルマンを討てていれば、組織は兵隊を動かすこともできなくなるはずです。相手からの攻撃は、まず無くなると見ていいでしょう。
     となれば後は、『頭』を撃ち抜くばかりでしょう」
    「よかろう。その時は私の方でも全力を挙げ、君を援護する。いや、援護だけじゃあない。エミル嬢も説得し、前線に向かわせよう。
     君とエミル嬢がいれば、確実とは言えないまでも、かなり高い勝率を得られるはずだ」
    「はい、善処いたします」
     局長とイクトミは同時に立ち上がり、固い握手を結んだ。
    「では、ギルマンの手がかりが分かり次第、連絡するよ」
    「よろしくお願いいたします」
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