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    DETECTIVE WESTERN

    DETECTIVE WESTERN 9 ~ 赤錆びたガンスミス ~ 3

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    ウエスタン小説、第3話。
    サムのうわさ。

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    3.
     と、ロバートが中腰気味に立ち上がり、客車をきょろきょろと眺める。
    「どうした?」
     尋ねたアデルに、ロバートはこう返す。
    「いや、そう言やサムのヤツ、いないなーって。あいつ、探偵局との連絡役でしょ?」
    「そう言や見てないな。……つっても、今回のヤマにゃ不向きだろ。もろにインテリ系だし、銃も持ってないって言ってたし。
     案外、今回は『急に熱が出ました』とか何とか言い訳して、逃げたんじゃないか?」
     アデルがそんな冗談を言ったところで、彼の背後から声が飛んでくる。
    「サムって、サミュエル・クインシーの坊やのことか?」
    「ん? ああ、そうだ」
     アデルが振り返り、返事したところで、声の主が立ち上がり、帽子を取って会釈する。



    「いきなり声かけて済まんな。俺はダニエル・スタンハート。ダンって呼んでくれ」
    「ああ、よろしくな、ダン。俺はアデルバート・ネイサン。アデルでいい」
     アデルも立ち上がって会釈を返し、軽く握手する。
    「それでダン、サムのことを知ってるのか?」
    「ああ。あいつなら今頃、N州に向かってるぜ。
     俺たちが出発する前日くらいだったか、うちの局長から直々に命令があったらしくてさ、大急ぎでオフィスを飛び出すのを見た。ま、何を命令されたかまでは知らないが」
    「妙なタイミングだな」
     アデルは首を傾げ、そう返す。
    「まるでこの遠征に行かせまいとしたみたいじゃないか」
    「俺たちの中でも、そう思ってる奴は結構いる。
     口の悪い奴なんか、『サムの坊やはミラー局長の恋人なんじゃないか』なんてほざく始末さ」
    「そりゃまたひでえうわさだなぁ、ははは……」
     アデルは笑い飛ばしたが、ダンは神妙な顔をしつつ席を離れ、アデルの横に座り直した。
    「笑い事じゃない、……かも知れないんだよな、これが」
    「……って言うと?」
     尋ねたアデルに、ダンはぐっと顔を近付け、こそこそと話し始めた。
    「サムが特務局に入ったこと自体、局長が工作したんじゃないかって言われてるんだ」
    「何だって?」
    「ここにいる奴らを見てりゃ察しも付くだろうが、どいつもこいつも実務主義、現場主義ってタイプばっかりだ。
     だがサムはそれと真逆って言うか、対極って言うか、言うなれば理論派って感じだろ?」
    「ああ、確かにな」
    「そりゃ、そう言うタイプが職場に多くいた方が効率的になるのかも分からんし、何かといい感じのアイデアが出て来るってこともあるだろう。そう言う考えで、局長は積極的に採用しようと思ってるのかも知れん。
     だがそう言うインテリ派は、今まで『外注』って言うか、大学の教授だとか研究所のお偉いさんに話を聞きに行くだけで十分、事足りてたんだ。わざわざ局員として雇うほどの必要性は無い。なのになんで、わざわざ銃もろくに握ったことの無い、なよっちくてひょろひょろのメガネくんを雇ったのか?
     そのおかげで、特務局のあっちこっちで『まさかマジでインテリかき集めるつもりなのか?』『それともサムの坊や、局長のお気にいりなのか?』なんて話がささやかれてる有様さ」
    「言っちゃなんだけど、下衆ばっかりね」
     と、アデルたちの会話にエミルも加わる。
    「あの子は確かに銃もろくに撃てないし、気弱で吃(ども)りもあるけど、アタマの良さは本物よ。あの子の判断と知識のおかげであたしたちの捜査が進展したことは何度もあるし、探偵や捜査官向きのいい人材だと、あたしは思ってる。
     そんな子を侮辱したり、陰口叩いたりする奴らの方がろくでなしよ」
    「ん、ん、……まあ、そう言ってやらないでくれ」
     ダンが苦い顔をし、エミルに応える。
    「確かに俺にしても、今――ちょこっとだぜ、ちょこっと――あいつを悪く言ったのは反省してる。
     特務局の奴らだって、サムに後ろ暗いところがあるなんて、本心からは思っちゃいないさ。根は良い奴ばっかりだ。それは俺が保証する」
    「そうね。あなたも謝罪してくれたし、あたしも言い過ぎたかもね」
    「分かってくれて嬉しいよ」
     にこっと笑ったダンに、エミルもニッと口の端を上げて返した。
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