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    DETECTIVE WESTERN

    DETECTIVE WESTERN 9 ~ 赤錆びたガンスミス ~ 7

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    ウエスタン小説、第7話。
    牛狩りの時。

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    7.
     パン、と火薬が弾ける音が響くと同時に、ディミトリの姿はトリスタンの前から消え失せていた。
     だが――。
    「私をなめるなよ、アレーニェ!」
     すかさずトリスタンは、天井に向かってもう一発放つ。
    「うっ……」
     一瞬間を置いて、うめき声と共に白い塊がどさり、とトリスタンの前に落ちてきた。



    「流石はトリス。僕の動きを、見切っていたか」
     力無く笑うイクトミのほおからは、ぼたぼたと血が滴っている。
    「とは言え、どうにかかわしはしたがね」
    「この前のような道化振る舞いはどうした、アレーニェ?」
     トリスタンはイクトミを見下ろし、三度撃鉄を起こす。
    「お嬢に気に入られようとしていたようだが、滑稽はなはだしい。何の効果も無い。惨めなだけだぞ、アレーニェ。
     それとも我々の目を眩(くら)まそうとしていたのか? だがそれも無意味だったな。世間の有象無象共に『怪盗紳士イクトミ』などと己を呼ばせていい気になっていたようだが、我々の目は少しもごまかせない。
     そう、お前のやってきたことなど、何一つ実を結びはしないのだ。我々に楯突こうなど、所詮は愚行に過ぎん」
    「……ご高説を賜り大変痛み入りますが」
     と――イクトミの口調がいつもの、慇懃(いんぎん)なものに変わる。
    「わたくしはいくら無駄だ、無意味だと罵られ、なじられようとも、その歩みを止める気など毛頭ございません。
     それがわたくしの、成すべき宿命でございますればッ!」
     ふたたび、イクトミは姿を消す。
    「くどいぞ、アレーニェ!」
     トリスタンが吼えるように怒鳴り、拳銃を構えた瞬間――周りの棚や机、さらには窓や壁に至るまで、ぼこぼこと穴が空き始めた。
    「ぬう……ッ!?」

    「撃て撃て撃て撃てーッ!」
     外では特務局員がガトリング銃を構え、掃射を始めていた。
     その横にはアデルたちと、縛られた上に猿ぐつわを噛まされ、完全に無力化されたローと、そしてディミトリ、さらにはどう言う経緯か、アーサー老人の姿までもがある。
    「ビルが倒れようと構わん! 中はトリスタン一人だけだ! ビルごと葬ってやれーッ!」
     ダンの号令に応じ、ガトリング銃に加え、他の者たちも次々に銃を構えて、ビルに向かって集中砲火を浴びせる。
    (……なあ)
     と、アデルが小声でエミルに尋ねる。
    (ボールドロイドさんの話じゃ、中にイクトミがいるんだろ?)
    (ええ、協力を取り付けたらしいから。どうやって接触したのか知らないけど)
    (流石と言うか、何と言うか。
     でもあそこまで撃ちまくられたら、イクトミの奴、蜂の巣になってんじゃないか?)
    (心配無用)
     エミルの代わりに、ディミトリの縄をつかんでいたアーサー老人が答える。
    (彼ならもう既に、ビルを出ているはずだ)
     続いて、エミルもうなずいて返す。
    (でしょうね。問題はトリスタンの方よ)
    (問題って……、蜂の巣っスよ?)
     けげんな顔で尋ねてきたロバートに、エミルは首を横に振って返す。
    (あいつがこの程度でくたばってくれるようなヤワな奴なら、苦労なんかするわけ無いわ)
    (へ……? い、いや、あんだけ撃ち込まれてるんスよ? 普通、死ぬっスって)
    (言ったでしょ? あいつは普通じゃないのよ)
     問答している内に、ビルの1階部分がぐしゃりと潰れ、2階・3階も滝のようになだれ落ち、土煙の中に沈んでいく。
    「もが、もが……」
     真っ青な顔で様子を見ていたディミトリが、猿ぐつわ越しに泣きそうな声を漏らす。
    「残念だったな、ディミトリ・アルジャン。お前のお城、消えて無くなっちまったぜ?」
     ディミトリの襟をつかみ、ダンが勝ち誇った顔を見せつける。
    「お前も兄貴も、まとめて絞首台に送ってやるぜ! もっとも兄貴の方は、その前に土の下らしいけどな」
     土煙がアデルたちのいるところにまで及び、自然、局員たちの攻撃の手が止む。
    「いくらなんでも、もう……」
     誰かがそう言いかけたところで、エミルが叫ぶ。
    「まだよ! 止めないで! 撃ち続けて!」
    「え……?」
     局員たちが何を言うのか、と言いたげな顔をエミルに向けた、その瞬間だった。
    「ぐばっ……」
     その中の一人の顔が、まるで壁に投げつけられたトマトのように飛び散った。
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