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    DETECTIVE WESTERN

    DETECTIVE WESTERN 9 ~ 赤錆びたガンスミス ~ 10

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    ウエスタン小説、第10話。
    カスタム・リボルバー。

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    10.
    「ディミトリ君」
     と、アーサー老人がディミトリの襟をぐい、と引き、無理矢理に顔を向けさせる。
    「……何だよ」
     憮然とした顔で応じたディミトリに、アーサー老人が小銃を向ける。
    「君の兄について知っていることを、可能な限り詳細に聞かせたまえ。特に装備についてだ。
     誰かがショットガンだと叫んでいたが、あのビルからここまでは、優に50ヤードは離れている。到底、ショットガンの弾が届くような距離では無い。だが威力に関しては、確かにショットガン並みだ。人の頭が粉々になった程だからな。
     一体どんな武器を使えば、ショットガンの威力とライフルの有効射程が両立できるのだ? それを把握せねば、我々に勝利は無い」
    「ヘッ」
     だが、ディミトリは悪態をつくばかりで、質問に応じようとはしない。
     それを受けて、ダンも拳銃をディミトリに向ける。
    「言えよ。言わなきゃ俺も、マジで撃つぜ」
    「そんなこと言っちまったら、兄貴にとって不利になる。それじゃ僕が助からない。
     じゃあ言わない方が、僕にとって得だろ?」
     ディミトリがふてぶてしく、そう答えた瞬間――パン、と火薬の弾ける音が、ダンからではなく、エミルの拳銃から放たれた。
    「ぎあっ……」
     続いてディミトリの短い悲鳴が部屋に響き、その場の全員が彼に注目する。
    「ひっ、ひいっ、はっ、……な、……に、……するんだ」
     ディミトリが左耳の辺りを押さえているが、指の隙間からボタボタと、血がこぼれている。
    「聞く耳持ってないみたいだから、千切ってあげたのよ。右耳も行っとく?」
     かちり、と拳銃の撃鉄を起こし、エミルがこう続ける。
    「このまま放っておいたら、確かにあたしたちは全滅するでしょうね。でもそれまで10分はあるでしょ? あんたを拷問にかけるだけの時間は十分にあるわ。
     ま、あと10分辛抱できるって言うなら、強情張って黙ってればいいだけだけどね」
    「ひ……」
     まだ硝煙をくゆらせるスコフィールドの銃口を右手の甲に当てられ、ディミトリの顔面は蒼白になる。
    「今すぐ素直に言うなら、手は勘弁してあげるわよ。職人だもの、利き手は命より大事よね……?」
    「あ、あっ、う、……い、言う、言うっ。言うよっ」
     ディミトリは泣きそうな顔で、トリスタンの情報を話し始めた。
    「兄貴は基本的に、銃身の長い銃は使わない。ピストルに比べて携行しにくく、接近戦では不利になるからだ。だからライフルとかショットガンは持ってない。
     今、兄貴が使ったのは、店に置いてたM1874シャメロー・デルビン式リボルバーだろう。ただしカスタムしてある」
    「どんな改造を?」
     尋ねたアーサー老人に、ディミトリは一転――耳を撃たれた直後にも関わらず――どこか恍惚(こうこつ)とした表情で語る。
    「一番の特徴はホットロード(強装弾)化さ。シリンダー部分を18ミリ伸長し、通常使用される11ミリ×17ミリ弾より9ミリも薬莢長を伸ばした僕特製の11ミリ×26ミリ弾を使用できる。当然、火薬量も増やしてあるから、至近距離で撃てば機関車の車輪をブチ抜くくらいの威力は出せる。まるで大口径ライフルみたいだろ?
     ただし、そんなものを考え無しにブチかましてたら、そこらの人間じゃ肩を外すだけじゃ済まないし――まあ、兄貴ならそんなマヌケなことは起きないだろうけど――そうでなくとも、銃本体に相当のダメージが返って来る。
     だから兄貴には、『こないだのAカスタムみたく、調子に乗って連射したりするなよ』とは何度か伝えてある。今撃ってこないのは、多分そのせい」
    「ふむ」
     アーサー老人は深くうなずき、窓越しに様子を見ている局員に声をかける。
    「窓から離れていた方がいい。ディミトリ君の話からすれば、こんな1インチにも満たぬ漆喰の壁くらいは、容易に貫通しうる代物のようだ。
     彼奴からすれば、窓際に潜んでいるくらいのことは見越すだろう。そこにいては、撃ってくれと言っているようなものだ」
    「は、はいっ」
     外部の人間であるはずのアーサー老人に、局員たちは素直に従う。
     直後、確かにアーサー老人の予見した通り、窓付近がぼご、ぼごっと鈍い音を立てて砕けた。
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