DETECTIVE WESTERN
DETECTIVE WESTERN 9 ~ 赤錆びたガンスミス ~ 12
ウエスタン小説、第12話。
三方包囲作戦。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
12.
2基のガトリング銃が動き始めたところで、エミルたちも小屋を出る。
「分かってると思うけど、T字に囲まないようにね。囲むならY字によ」
「勿論さ。俺たちとあんたたちで同士討ちになっちまうからな。
じゃ、……気を付けてな」
ダンたちに背を向け、エミルたち3人は路地を駆ける。
「ガトリングのおかげで足音は聞こえちゃいないと思うけれど、気を抜かないようにね。ボールドロイドさんも言ってたけど、あいつならこうやって囲むことも、予想するだろうから」
「了解っス」
路地の端まで進み、アデルが大通りの様子をうかがう。
「いるぜ。ビル跡の真ん前に立ってやがる。……ガトリングは当たってねーのか?」
苦い顔をするアデルの横に立ち、エミルが肩をすくめる。
「あいつなら当たっても跳ね返しそうな気がするわね」
「無茶言うなよ」
「……ま、それは冗談だけど。
実際、ガトリング銃に命中精度なんか求めるもんじゃないわよ。あれは弾幕を張ることはできても、一発一発を全部目標に命中させられるほど、取り回しは良くないもの」
「ま、言われりゃ確かにそうだ。デカいビルには当てられても、人間1人だけ狙って撃ち込みまくってみたところで、そうそう当たりゃしないわな。
その上、周りの瓦礫やら地面やらに着弾しまくってるせいで、肝心のトリスタンが土煙に紛れちまってる。そうでなくでもガトリングから大量に硝煙が上がってるせいで元から視界が悪いだろうし、狙おうにも狙えないってわけか」
実際、トリスタンにはほとんど命中していないらしく――土煙越しでもそれと分かる程度に――行動不能になるようなダメージを受けた様子は見られない。
ロバートも2人に続いて覗き込みつつ、不安げに尋ねてくる。
「で、どうするんスか? このままノコノコ出てきたんじゃ、狙い撃ちされるだけっスよ?」
「だからこその包囲作戦だ」
それに対し、アデルが得意げに説明する。
「左と右、両方から同時に攻め込まれたら、どんな奴だって少なからず戸惑う。その一瞬を突き、3方向から仕掛けられるだけの攻撃を仕掛ける。
ただ、この作戦でも最悪、誰か1人、2人は犠牲になるかも知れん。それでもやらなきゃ、もっと殉職者が出るか、あるいは逃げられるおそれがある。
だから、行くしか無いってことだ。覚悟決めろよ、ロバート」
「……うっす」
ロバートはごくりと固唾を呑み、拳銃を腰のホルスターから抜く。アデルも小銃を肩から下ろし、レバーを引く。
「エミル。お前の合図で行く」
「いいわよ」
そう返しつつ、エミルも拳銃の撃鉄を起こす。ほぼ同時にガトリングのけたたましい射撃音がやみ、トリスタンが拳銃を上方に構えた。
その瞬間、エミルが短く叫ぶ。
「今よ!」
エミルたち3人は、あらん限りの全速力で路地を飛び出し、大通りに躍り出た。
「……!」
トリスタンがエミルたちに気付き、構えた拳銃をエミルたちに向けかける。
だが振り返った直後、今度は反対側からダンたちが飛び出してくる。
「っ……」
わずかながら、トリスタンがうめく声がアデルの耳に入ってくる。
岩のように動かなかった相手からにじみ出た、その明らかな動揺を感じ取り、アデルは勝利を確信した。
(獲った……ッ!)
中途半端な位置で拳銃を掲げたまま、トリスタンの動きが止まる。
6人は一斉に引き金を絞り、トリスタンに集中砲火を浴びせた。

だが、その直後――エミルが終始懸念し、警戒し、そして恐れていたことは、決して彼女の杞憂ではなかったのだと言うことを、アデルはその身を以て知ることとなった。
「……なめるなあああああッ!」
トリスタンは拳銃を掲げていた右手を、そのまま左側に倒す。
それと同時に、懐からもう一挺の拳銃を抜き取り、そのまま右側に向ける。
瞬時に3発、4発と連射し、ダン側の1名と――そしてアデルの体から、血しぶきが上がった。
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三方包囲作戦。
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2基のガトリング銃が動き始めたところで、エミルたちも小屋を出る。
「分かってると思うけど、T字に囲まないようにね。囲むならY字によ」
「勿論さ。俺たちとあんたたちで同士討ちになっちまうからな。
じゃ、……気を付けてな」
ダンたちに背を向け、エミルたち3人は路地を駆ける。
「ガトリングのおかげで足音は聞こえちゃいないと思うけれど、気を抜かないようにね。ボールドロイドさんも言ってたけど、あいつならこうやって囲むことも、予想するだろうから」
「了解っス」
路地の端まで進み、アデルが大通りの様子をうかがう。
「いるぜ。ビル跡の真ん前に立ってやがる。……ガトリングは当たってねーのか?」
苦い顔をするアデルの横に立ち、エミルが肩をすくめる。
「あいつなら当たっても跳ね返しそうな気がするわね」
「無茶言うなよ」
「……ま、それは冗談だけど。
実際、ガトリング銃に命中精度なんか求めるもんじゃないわよ。あれは弾幕を張ることはできても、一発一発を全部目標に命中させられるほど、取り回しは良くないもの」
「ま、言われりゃ確かにそうだ。デカいビルには当てられても、人間1人だけ狙って撃ち込みまくってみたところで、そうそう当たりゃしないわな。
その上、周りの瓦礫やら地面やらに着弾しまくってるせいで、肝心のトリスタンが土煙に紛れちまってる。そうでなくでもガトリングから大量に硝煙が上がってるせいで元から視界が悪いだろうし、狙おうにも狙えないってわけか」
実際、トリスタンにはほとんど命中していないらしく――土煙越しでもそれと分かる程度に――行動不能になるようなダメージを受けた様子は見られない。
ロバートも2人に続いて覗き込みつつ、不安げに尋ねてくる。
「で、どうするんスか? このままノコノコ出てきたんじゃ、狙い撃ちされるだけっスよ?」
「だからこその包囲作戦だ」
それに対し、アデルが得意げに説明する。
「左と右、両方から同時に攻め込まれたら、どんな奴だって少なからず戸惑う。その一瞬を突き、3方向から仕掛けられるだけの攻撃を仕掛ける。
ただ、この作戦でも最悪、誰か1人、2人は犠牲になるかも知れん。それでもやらなきゃ、もっと殉職者が出るか、あるいは逃げられるおそれがある。
だから、行くしか無いってことだ。覚悟決めろよ、ロバート」
「……うっす」
ロバートはごくりと固唾を呑み、拳銃を腰のホルスターから抜く。アデルも小銃を肩から下ろし、レバーを引く。
「エミル。お前の合図で行く」
「いいわよ」
そう返しつつ、エミルも拳銃の撃鉄を起こす。ほぼ同時にガトリングのけたたましい射撃音がやみ、トリスタンが拳銃を上方に構えた。
その瞬間、エミルが短く叫ぶ。
「今よ!」
エミルたち3人は、あらん限りの全速力で路地を飛び出し、大通りに躍り出た。
「……!」
トリスタンがエミルたちに気付き、構えた拳銃をエミルたちに向けかける。
だが振り返った直後、今度は反対側からダンたちが飛び出してくる。
「っ……」
わずかながら、トリスタンがうめく声がアデルの耳に入ってくる。
岩のように動かなかった相手からにじみ出た、その明らかな動揺を感じ取り、アデルは勝利を確信した。
(獲った……ッ!)
中途半端な位置で拳銃を掲げたまま、トリスタンの動きが止まる。
6人は一斉に引き金を絞り、トリスタンに集中砲火を浴びせた。

だが、その直後――エミルが終始懸念し、警戒し、そして恐れていたことは、決して彼女の杞憂ではなかったのだと言うことを、アデルはその身を以て知ることとなった。
「……なめるなあああああッ!」
トリスタンは拳銃を掲げていた右手を、そのまま左側に倒す。
それと同時に、懐からもう一挺の拳銃を抜き取り、そのまま右側に向ける。
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