DETECTIVE WESTERN
DETECTIVE WESTERN 9 ~ 赤錆びたガンスミス ~ 13
ウエスタン小説、第13話。
子猫と猛火牛の交錯。
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13.
「……う……!?」
アデルは自分の右腕から血煙が上がるのを目にしたものの、それが何を意味するのか、一瞬では理解できなかった。
だが、ボタボタと滝のように流れる血と、そして右腕から発せられる激痛が、アデルにその意味を、無理矢理に理解させた。
「……あっ、が、……ぎゃああああっ!」
こらえ切れず、アデルはその場に倒れ込む。
「あ……、兄貴ッ!?」
ロバートが駆け寄ってくるが、アデルに応じる余裕は全く無い。
「うああ……うあ……いで……え……痛ええ……うあ……ああ……」
口を閉じようとしても、勝手に悲鳴が漏れていく。
「ヤバいっスって、これ、血、あのっ、姉御、そのっ……」
ロバートが顔を真っ青にし、エミルに助けを求めるが、エミルは既にその場にいない。
その時、エミルはトリスタンに向かって駆け出しながら、弾を撃ち続けていた。
「Merde! Un salop! Quelle terrible chose tu lui fais!?(このクソ野郎! なんてことすんのよ!?)」
その間にもトリスタンは、ダンの隣にいたもう一人を撃ち、残った1挺をエミルに向けていた。
「S'il te plaît, pardonne-moi,mademoiselle(お許しを、お嬢)」
そして前回対峙した時と同様、トリスタンは7発目の銃弾を発射する。
しかし――エミルはそれを事も無げにかわし切り、お返しとばかりに2発、反撃した。
「Je ne suis jamais surpris par un tel tour deux fois,un stupide(そんな手品で二度も驚きやしないわよ、おバカ)」
流石のトリスタンもこれはかわせなかったらしく、1発は右肩を貫通し、そしてもう1発は額を削り、そのまま倒れさせた。
「……やった……?」
地面に伏せていたダンが顔を挙げ、恐る恐るトリスタンに近付く。
「……ど、……どうだ?」
拳銃を構えたまま、おっかなびっくりと言った様子でトリスタンの体を蹴り、動かないことを確認し、そのまま二歩、三歩と下がる。
「……やったぞ!」
そう叫び、ダンはその場に座り込んだ。
エミルも一瞬、ほっとした表情を浮かべかけたが――。
「……アデル! あんた、生きてる!?」
エミルが振り向いたところで、ロバートが困り果てた声を上げる。
「あ、姉御、姉御、兄貴が、兄貴が……」
「……まさか」
エミルが慌てて駆け寄り、アデルの側に座り込む。
「バカ! こ、こんなところで、あんな奴のせいで、……そんな……」
「あー、と」
と、真っ青な顔をしていたエミルの肩に、とん、と手が置かれる。
「俺のために感動的に泣いてくれるのはすげー嬉しいが、まだ死んでねーよ」
「……え」
むくりとアデルが上半身を起こし、左腕でロバートを小突く。
「腕を貫通したから心底痛いっちゃ痛いが、指は普通に動かせるし、出血もヤバいってほどじゃない。骨だとか血管だとか、致命傷になりそうなところはそれてくれたらしい。
だからロバート、お前も泣いてないで、さっさと手当てしてくれ。痛すぎて、マジで気ぃ失いそうだ」
「へっ? ……あ、兄貴? 生きてるんスか?」
「死んでてほしいのかよ、てめーは?」
「いやいやいやいやそんなそんな、んなこと無いっスって! あ、えーと、手当てっスね? すんません、すぐ!」
ロバートにたどたどしく止血を施してもらいながら、アデルはニヤニヤとエミルに笑って見せる。
「ほれ、エミル。俺にいつまでも構ってないで、さっさとトリスタンを確保してこいよ。殺したとは言え、奴なら死んでも生き返ってきそうだからな」
「……そう、ね。一応、縛るくらいのことはしておきましょうか」
そう言って振り返ったところで、ダンが既に、トリスタンを縛っているのが確認できた。
「こっちも死んでないみたいだぜ。脈があるのを確認した。気絶はしてるがな」
「あら? 額を撃ったのに?」
「それなんだが、骨がちこっと見えてる程度の銃創だ。どうやらかすめただけらしい」
「……流石に『猛火牛』と言うべきかしら。あたしに反撃されてなお、紙一重でかわしてたのね」
ため息をつくエミルに、止血を終えたアデルが軽口を叩く。
「どっちもどっちだな。お前だってトリスタンの最後の1発、ひらっとかわしてたじゃないか」
「あいつが7発撃てる特殊拳銃を持ってるってことは、前回の時点で分かってたことだもの。今回だって土壇場で使ってくるだろうってことは、予測できてたわ。
ま、自爆覚悟でM1874を使われてたら、どうなってたか分からないけど」
そこで3人同時にため息をつき――今回の大捕物は、一応の収束を迎えた。
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子猫と猛火牛の交錯。
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「……う……!?」
アデルは自分の右腕から血煙が上がるのを目にしたものの、それが何を意味するのか、一瞬では理解できなかった。
だが、ボタボタと滝のように流れる血と、そして右腕から発せられる激痛が、アデルにその意味を、無理矢理に理解させた。
「……あっ、が、……ぎゃああああっ!」
こらえ切れず、アデルはその場に倒れ込む。
「あ……、兄貴ッ!?」
ロバートが駆け寄ってくるが、アデルに応じる余裕は全く無い。
「うああ……うあ……いで……え……痛ええ……うあ……ああ……」
口を閉じようとしても、勝手に悲鳴が漏れていく。
「ヤバいっスって、これ、血、あのっ、姉御、そのっ……」
ロバートが顔を真っ青にし、エミルに助けを求めるが、エミルは既にその場にいない。
その時、エミルはトリスタンに向かって駆け出しながら、弾を撃ち続けていた。
「Merde! Un salop! Quelle terrible chose tu lui fais!?(このクソ野郎! なんてことすんのよ!?)」
その間にもトリスタンは、ダンの隣にいたもう一人を撃ち、残った1挺をエミルに向けていた。
「S'il te plaît, pardonne-moi,mademoiselle(お許しを、お嬢)」
そして前回対峙した時と同様、トリスタンは7発目の銃弾を発射する。
しかし――エミルはそれを事も無げにかわし切り、お返しとばかりに2発、反撃した。
「Je ne suis jamais surpris par un tel tour deux fois,un stupide(そんな手品で二度も驚きやしないわよ、おバカ)」
流石のトリスタンもこれはかわせなかったらしく、1発は右肩を貫通し、そしてもう1発は額を削り、そのまま倒れさせた。
「……やった……?」
地面に伏せていたダンが顔を挙げ、恐る恐るトリスタンに近付く。
「……ど、……どうだ?」
拳銃を構えたまま、おっかなびっくりと言った様子でトリスタンの体を蹴り、動かないことを確認し、そのまま二歩、三歩と下がる。
「……やったぞ!」
そう叫び、ダンはその場に座り込んだ。
エミルも一瞬、ほっとした表情を浮かべかけたが――。
「……アデル! あんた、生きてる!?」
エミルが振り向いたところで、ロバートが困り果てた声を上げる。
「あ、姉御、姉御、兄貴が、兄貴が……」
「……まさか」
エミルが慌てて駆け寄り、アデルの側に座り込む。
「バカ! こ、こんなところで、あんな奴のせいで、……そんな……」
「あー、と」
と、真っ青な顔をしていたエミルの肩に、とん、と手が置かれる。
「俺のために感動的に泣いてくれるのはすげー嬉しいが、まだ死んでねーよ」
「……え」
むくりとアデルが上半身を起こし、左腕でロバートを小突く。
「腕を貫通したから心底痛いっちゃ痛いが、指は普通に動かせるし、出血もヤバいってほどじゃない。骨だとか血管だとか、致命傷になりそうなところはそれてくれたらしい。
だからロバート、お前も泣いてないで、さっさと手当てしてくれ。痛すぎて、マジで気ぃ失いそうだ」
「へっ? ……あ、兄貴? 生きてるんスか?」
「死んでてほしいのかよ、てめーは?」
「いやいやいやいやそんなそんな、んなこと無いっスって! あ、えーと、手当てっスね? すんません、すぐ!」
ロバートにたどたどしく止血を施してもらいながら、アデルはニヤニヤとエミルに笑って見せる。
「ほれ、エミル。俺にいつまでも構ってないで、さっさとトリスタンを確保してこいよ。殺したとは言え、奴なら死んでも生き返ってきそうだからな」
「……そう、ね。一応、縛るくらいのことはしておきましょうか」
そう言って振り返ったところで、ダンが既に、トリスタンを縛っているのが確認できた。
「こっちも死んでないみたいだぜ。脈があるのを確認した。気絶はしてるがな」
「あら? 額を撃ったのに?」
「それなんだが、骨がちこっと見えてる程度の銃創だ。どうやらかすめただけらしい」
「……流石に『猛火牛』と言うべきかしら。あたしに反撃されてなお、紙一重でかわしてたのね」
ため息をつくエミルに、止血を終えたアデルが軽口を叩く。
「どっちもどっちだな。お前だってトリスタンの最後の1発、ひらっとかわしてたじゃないか」
「あいつが7発撃てる特殊拳銃を持ってるってことは、前回の時点で分かってたことだもの。今回だって土壇場で使ってくるだろうってことは、予測できてたわ。
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