「双月千年世界 1;蒼天剣」
蒼天剣 第5部
蒼天剣・回顧録 2
晴奈の話、第214話。
女神伝説の始まり。
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2.
「実際、ユキノが闘技場に出てみると、恐ろしく強かった。今日のコウさんみたいに、一瞬で敵を倒した。
初めて見せられた時は、……うん、やっぱり今日みたいな感じで驚いてたな」
「は、はやっ」「ウソ? 一瞬で?」
ピースとボーダはポップコーンに手を突っ込んだまま、硬直していた。
素人参加自由のロイドリーグとは言え、線が細く、華奢に見える雪乃がこんなに圧倒的な勝ち方をしてしまうとは、二人ともまったく予想していなかったのだ。
「何秒だった?」「え、と。……5秒くらい、かしら」
二人は顔を見合わせ、やや間を置いてニヤリと笑った。
「これは、金の卵かも知れない」「そうね。ようやく、あたしの商売も軌道に乗るかも」
が、次の瞬間同時に無表情になり、次第に睨み合う。
「『君の』商売? 僕の、だろ?」
「何言ってんのよ。あたしの、商売よ」
「まだ言うか、そんなふざけたこと」
「ふざけてんのはアンタでしょ? 誰が何と言おうと、これはあたしのアイデアよ」
「それはこっちのセリフだ! ヒイラギさんは絶対、渡さないぞ!」
「その言葉、そっくり返してあげるわ! ヒイラギさんはあたしのものよ!」
またも言い争いが始まり、二人の間で険悪な空気が流れたところで、雪乃が戻ってきた。
「ちょ、ちょっと二人とも」
「あ、ヒイラギさん」
「あの、変なこと言わないでほしいんだけど」
雪乃は顔を真っ赤にして、二人の仲裁に入る。
「わたし誰のものでもないし、まだどちらにお願いするとも……、あ、そうだ」
雪乃は二人と距離を置き、人差し指を立てる。
「お願いがあるの。いいかな?」
「ん、何かな?」「どんなお願い?」
「あの、契約はピースさんかボーダさんのどちらかじゃ無くって、二人一緒でお願いしたいの」
「えっ」「それは、うーん」
二人は顔を見合わせ、困った表情を向け合う。
「だって、もしどっちか一方だけと契約しちゃったら、きっともう一方がより良い条件で引き抜こうと、後々声をかけてくるでしょ?」
「う」「ま、まあ」
「そんなことされたらわたし、落ち着いて試合に参加できなくなってしまうもの」
目論見を看破され、二人は同時に罰の悪そうな顔をした。
「だから、二人同時に公平に契約したいの。ダメかしら?」
「……うーん」「……えーと」
今度は二人が雪乃から離れ、ボソボソと交渉しあう。
「正直、君と組むのは勘弁したい」「あたしだってイヤよ」
「でも、ヒイラギさんを逃してしまうのは」「痛いわね。いま、かなり不振だし」
「だからここは、一時休戦だ。甚だ癪だが、協力しよう」「勝手に話進めないでよ、ピース。……ま、でも。ここでいがみ合うよりは、手を組んだ方がマシね」
「よし。じゃあ、しばらくケンカは無しだ」「いいわ。この際、アイデアがどっちのものか、って言うのもやめにしましょ。あんまりガタガタ言ってると、ヒイラギさんが逃げるわ」
「いいだろう」「よし決定!」
二人は雪乃のところに戻り、にこやかな笑顔を作って承諾した。
「分かりました、ヒイラギさん」「その条件で、契約しましょう」
「良かった……! じゃ、じゃあ。もう一つ、お願いしてもいい?」
雪乃は両手を差し出し、小さい声で願いを述べた。
「わたし本当にこの街、初めてだから。友達になってくれる?」
それを聞いた二人は一瞬きょとんとし、また顔を見合わせてから――苦笑しつつ、雪乃の手を握った。
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「実際、ユキノが闘技場に出てみると、恐ろしく強かった。今日のコウさんみたいに、一瞬で敵を倒した。
初めて見せられた時は、……うん、やっぱり今日みたいな感じで驚いてたな」
「は、はやっ」「ウソ? 一瞬で?」
ピースとボーダはポップコーンに手を突っ込んだまま、硬直していた。
素人参加自由のロイドリーグとは言え、線が細く、華奢に見える雪乃がこんなに圧倒的な勝ち方をしてしまうとは、二人ともまったく予想していなかったのだ。
「何秒だった?」「え、と。……5秒くらい、かしら」
二人は顔を見合わせ、やや間を置いてニヤリと笑った。
「これは、金の卵かも知れない」「そうね。ようやく、あたしの商売も軌道に乗るかも」
が、次の瞬間同時に無表情になり、次第に睨み合う。
「『君の』商売? 僕の、だろ?」
「何言ってんのよ。あたしの、商売よ」
「まだ言うか、そんなふざけたこと」
「ふざけてんのはアンタでしょ? 誰が何と言おうと、これはあたしのアイデアよ」
「それはこっちのセリフだ! ヒイラギさんは絶対、渡さないぞ!」
「その言葉、そっくり返してあげるわ! ヒイラギさんはあたしのものよ!」
またも言い争いが始まり、二人の間で険悪な空気が流れたところで、雪乃が戻ってきた。
「ちょ、ちょっと二人とも」
「あ、ヒイラギさん」
「あの、変なこと言わないでほしいんだけど」
雪乃は顔を真っ赤にして、二人の仲裁に入る。
「わたし誰のものでもないし、まだどちらにお願いするとも……、あ、そうだ」
雪乃は二人と距離を置き、人差し指を立てる。
「お願いがあるの。いいかな?」
「ん、何かな?」「どんなお願い?」
「あの、契約はピースさんかボーダさんのどちらかじゃ無くって、二人一緒でお願いしたいの」
「えっ」「それは、うーん」
二人は顔を見合わせ、困った表情を向け合う。
「だって、もしどっちか一方だけと契約しちゃったら、きっともう一方がより良い条件で引き抜こうと、後々声をかけてくるでしょ?」
「う」「ま、まあ」
「そんなことされたらわたし、落ち着いて試合に参加できなくなってしまうもの」
目論見を看破され、二人は同時に罰の悪そうな顔をした。
「だから、二人同時に公平に契約したいの。ダメかしら?」
「……うーん」「……えーと」
今度は二人が雪乃から離れ、ボソボソと交渉しあう。
「正直、君と組むのは勘弁したい」「あたしだってイヤよ」
「でも、ヒイラギさんを逃してしまうのは」「痛いわね。いま、かなり不振だし」
「だからここは、一時休戦だ。甚だ癪だが、協力しよう」「勝手に話進めないでよ、ピース。……ま、でも。ここでいがみ合うよりは、手を組んだ方がマシね」
「よし。じゃあ、しばらくケンカは無しだ」「いいわ。この際、アイデアがどっちのものか、って言うのもやめにしましょ。あんまりガタガタ言ってると、ヒイラギさんが逃げるわ」
「いいだろう」「よし決定!」
二人は雪乃のところに戻り、にこやかな笑顔を作って承諾した。
「分かりました、ヒイラギさん」「その条件で、契約しましょう」
「良かった……! じゃ、じゃあ。もう一つ、お願いしてもいい?」
雪乃は両手を差し出し、小さい声で願いを述べた。
「わたし本当にこの街、初めてだから。友達になってくれる?」
それを聞いた二人は一瞬きょとんとし、また顔を見合わせてから――苦笑しつつ、雪乃の手を握った。



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