DETECTIVE WESTERN
DETECTIVE WESTERN 9 ~ 赤錆びたガンスミス ~ 14
ウエスタン小説、第14話。
天才ディミトリの傑作拳銃。
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14.
「にしても」
横たわるトリスタンを引き気味に見下ろしつつ、アデルがうなる。
「これじゃまるで、鉄製の繭(まゆ)だな」
「当然の配慮さ」
隣に立っていたダンが、苦々しげに返す。
「エミルの姐さんから再三、忠告されたからな。『こいつはここまでしなきゃならない相手よ』っつってな」
トリスタンが気を失っている間に、どうにか生き残った局員たちが総出で周囲から鋼線や鎖を集め、彼をがんじがらめに縛り上げたのだ。
当然この際に、トリスタンの武装も解除されており――。
「こんなデカい弾で撃ったら、そりゃ頭もブッ飛ぶっスよねー……」
隣の部屋では、エミルたちが彼の所持していた武器を検分していた。
「11ミリって言うと、えーと、何口径くらいなんスかね?」
「44口径相当ね。人どころか、それこそ野牛でも一撃よ」
エミルの言葉に、依然拘束されたままのディミトリが嬉しそうにニヤついている。
「傑作だろ? ウフ、フフ、フフフ」
「ふん。……それよりあたしが気になるのは、こっちの銃の方ね」
そう言いながら、エミルはシリンダーの無い、奇妙な形の拳銃を手に取った。
「そもそも、どこに弾込めるのかから、良く分からないわね。今時、先込め式ってことも無いでしょうし」
「ああ、そいつ?」
半ば一人言にも聞こえるエミルの問いに、ディミトリが喜々として食いつく。
「それはものっすごぉぉぉい発明さ。銃の常識が変わるくらいのね。
左横のボタンを押してみな。弾倉が出て来る。ガトリング銃みたいなアレさ。ただ、あんな落下式の、安っぽい作りじゃない。バネで持ち上げて機関部に弾を押し込めるようになってる。で、弾倉を入れたら上のトグルレバーを引いて……」
「ふーん……?」
説明もそこそこに、エミルはその奇妙な拳銃をかちゃかちゃと操作し、引き金を引く。
次の瞬間、パン、と音を立てて、弾丸がディミトリのすぐ右にある壁に突き刺さり、彼は顔を真っ青にした。
「あ、あ、あわっ、あっ、……あんた、マジで僕を殺す気か!? 死んだらどうすんだよ!?」
「へぇ、次の弾が自動で装填されるのね。空になった薬莢まで勝手に出してくれるみたいだし。なかなか便利ね」
ディミトリの抗議に耳を貸さず、エミルはその拳銃をあれこれといじってみる。
「弾倉にはいくつ弾が入るの? 7発?」
「……ああ、そうだよ」
憮然とした顔で答えたディミトリに、エミルがまた、拳銃を向ける。
「な、や、やめろって、マジで」
「心配しなくても、もう弾、入って無いわよ」
そう言って、エミルはかち、かちと引き金を引いて見せる。
「言うなれば自動装填・自動排莢拳銃? ……言いにくいわね。縮めて自動拳銃(オートマチック)ってところね」
「ああ、僕もそう呼んでたよ。
使い方に慣れりゃ、ガンファイトが劇的に変わること、間違い無しさ。弾倉を複数持ってりゃ、リボルバーとは比べ物にならないくらいの速さで再装填(リロード)できるからね」
「そうみたいね」
エミルは弾の入った弾倉を手にし、自動拳銃に弾を装填する。
「これ、あたしがガメちゃおうかしら」
「ダメだって」
ダンが苦い顔のまま、エミルに振り返る。
「そいつもM1874も、特務局が押収する。トリスタン・アルジャンおよびディミトリ・アルジャン兄弟の、犯罪行為の証拠の一つとしてな」
「残念ね。……っと、そう言えば」
エミルが辺りを見回し、首を傾げる。
「さっきから見てないと思ったけど、やっぱりいないわね」
その一人言じみたつぶやきに、アデルが応じる。
「誰がだ?」
そう言いつつも、アデルも部屋の中を確認し、アーサー老人の姿が無いことに気が付いた。
「ボールドロイドさんか?」
「ええ。ま、元々局長経由で無理言って、こっちに来てもらってたんだもの。イクトミと一緒って言ってたし、これから二人でギルマン確保に向かうんでしょうね」
「イクトミと、か。……しかし、何でボールドロイドさんとイクトミが、一緒にいたんだろうな? って言うか、いつの間に知り合ったんだか」
首を傾げるアデルに、エミルも手をぱたぱたと振って返す。
「あたしにもさっぱり。
でも、思い当たる節は、あると言えばあるわね。こないだ局長とイクトミがカフェで二人っきりで話してたでしょ? あの時に紹介してもらった、とか」
「なるほど、そうかもな。……ま、経緯はどうあれ、もう彼がいなくても大丈夫だろう」
そう言って、アデルは部屋の隅にいるディミトリとローを指差す。
「二人はあの通りだし、トリスタンも鎖でぐるぐる巻きって状態だ。後は移送場所が決まり次第、そこへ送るだけだ」
「そうね」
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天才ディミトリの傑作拳銃。
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「にしても」
横たわるトリスタンを引き気味に見下ろしつつ、アデルがうなる。
「これじゃまるで、鉄製の繭(まゆ)だな」
「当然の配慮さ」
隣に立っていたダンが、苦々しげに返す。
「エミルの姐さんから再三、忠告されたからな。『こいつはここまでしなきゃならない相手よ』っつってな」
トリスタンが気を失っている間に、どうにか生き残った局員たちが総出で周囲から鋼線や鎖を集め、彼をがんじがらめに縛り上げたのだ。
当然この際に、トリスタンの武装も解除されており――。
「こんなデカい弾で撃ったら、そりゃ頭もブッ飛ぶっスよねー……」
隣の部屋では、エミルたちが彼の所持していた武器を検分していた。
「11ミリって言うと、えーと、何口径くらいなんスかね?」
「44口径相当ね。人どころか、それこそ野牛でも一撃よ」
エミルの言葉に、依然拘束されたままのディミトリが嬉しそうにニヤついている。
「傑作だろ? ウフ、フフ、フフフ」
「ふん。……それよりあたしが気になるのは、こっちの銃の方ね」
そう言いながら、エミルはシリンダーの無い、奇妙な形の拳銃を手に取った。
「そもそも、どこに弾込めるのかから、良く分からないわね。今時、先込め式ってことも無いでしょうし」
「ああ、そいつ?」
半ば一人言にも聞こえるエミルの問いに、ディミトリが喜々として食いつく。
「それはものっすごぉぉぉい発明さ。銃の常識が変わるくらいのね。
左横のボタンを押してみな。弾倉が出て来る。ガトリング銃みたいなアレさ。ただ、あんな落下式の、安っぽい作りじゃない。バネで持ち上げて機関部に弾を押し込めるようになってる。で、弾倉を入れたら上のトグルレバーを引いて……」
「ふーん……?」
説明もそこそこに、エミルはその奇妙な拳銃をかちゃかちゃと操作し、引き金を引く。
次の瞬間、パン、と音を立てて、弾丸がディミトリのすぐ右にある壁に突き刺さり、彼は顔を真っ青にした。
「あ、あ、あわっ、あっ、……あんた、マジで僕を殺す気か!? 死んだらどうすんだよ!?」
「へぇ、次の弾が自動で装填されるのね。空になった薬莢まで勝手に出してくれるみたいだし。なかなか便利ね」
ディミトリの抗議に耳を貸さず、エミルはその拳銃をあれこれといじってみる。
「弾倉にはいくつ弾が入るの? 7発?」
「……ああ、そうだよ」
憮然とした顔で答えたディミトリに、エミルがまた、拳銃を向ける。
「な、や、やめろって、マジで」
「心配しなくても、もう弾、入って無いわよ」
そう言って、エミルはかち、かちと引き金を引いて見せる。
「言うなれば自動装填・自動排莢拳銃? ……言いにくいわね。縮めて自動拳銃(オートマチック)ってところね」
「ああ、僕もそう呼んでたよ。
使い方に慣れりゃ、ガンファイトが劇的に変わること、間違い無しさ。弾倉を複数持ってりゃ、リボルバーとは比べ物にならないくらいの速さで再装填(リロード)できるからね」
「そうみたいね」
エミルは弾の入った弾倉を手にし、自動拳銃に弾を装填する。
「これ、あたしがガメちゃおうかしら」
「ダメだって」
ダンが苦い顔のまま、エミルに振り返る。
「そいつもM1874も、特務局が押収する。トリスタン・アルジャンおよびディミトリ・アルジャン兄弟の、犯罪行為の証拠の一つとしてな」
「残念ね。……っと、そう言えば」
エミルが辺りを見回し、首を傾げる。
「さっきから見てないと思ったけど、やっぱりいないわね」
その一人言じみたつぶやきに、アデルが応じる。
「誰がだ?」
そう言いつつも、アデルも部屋の中を確認し、アーサー老人の姿が無いことに気が付いた。
「ボールドロイドさんか?」
「ええ。ま、元々局長経由で無理言って、こっちに来てもらってたんだもの。イクトミと一緒って言ってたし、これから二人でギルマン確保に向かうんでしょうね」
「イクトミと、か。……しかし、何でボールドロイドさんとイクトミが、一緒にいたんだろうな? って言うか、いつの間に知り合ったんだか」
首を傾げるアデルに、エミルも手をぱたぱたと振って返す。
「あたしにもさっぱり。
でも、思い当たる節は、あると言えばあるわね。こないだ局長とイクトミがカフェで二人っきりで話してたでしょ? あの時に紹介してもらった、とか」
「なるほど、そうかもな。……ま、経緯はどうあれ、もう彼がいなくても大丈夫だろう」
そう言って、アデルは部屋の隅にいるディミトリとローを指差す。
「二人はあの通りだし、トリスタンも鎖でぐるぐる巻きって状態だ。後は移送場所が決まり次第、そこへ送るだけだ」
「そうね」
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史実では、世界初の自動拳銃は1893年に製造されたボーチャードピストルとされています。
ただ、軍事的優位を維持するため、新技術や新発見を秘匿するのは昔からの常。
もしかしたらどこかの好戦的な秘密結社が、これより前に作っていた、……かも知れません。
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